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新女王誕生!15歳イザボー・レヴィト「やるべきプログラムをしっかりこなした自分を誇りに思う」 | 全米フィギュアスケート選手権2023 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部イザボー・レヴィト(前列左)
まばゆいばかりの新女王がアメリカに誕生した。15歳イザボー・レヴィトがノーミス・オールレベル4の素晴らしい演技を2本揃えて、2023年全米選手権を勝ち取った。
「今の気持ちを表す言葉が見つけられません。ただ、ついにやり遂げたのだ、と嬉しさでいっぱいになりました」(レヴィト)
上位2選手が0.02点差。SPを終えた時点で、金メダルを巡る争いはすさまじい僅差だった。
レヴィトが73.78点で首位に立ち、73.76点で、ブレイディ・テネルが2位につけた。すでに過去2度全米チャンピオンに君臨した経験を持つ24歳は、「気分が高揚しすぎたせいで」最終2つのスピンにレベルの取りこぼしがありながらも、それ以外は素晴らしい完成度を誇った。多くのエレメンツで高いGOE加点を得た上に、気品あるスケーティングと成熟した深みのある表現力を武器に、PCS演技構成点では後輩を上回った。
1年前の全米で表彰台へと駆け上がり、世界ジュニア選手権制覇、さらには今季グランプリファイナル銀メダルと、一気に時代の寵児となったレヴィトに対して、テネルは苦しい1年を過ごしてきた。足首の故障で五輪シーズンを完全に棒に振った。今シーズンの前半戦さえ、いまだ暗いトンネルから抜け出してはいなかった。
だからこそ5年前に全米初優勝に輝いた思い出のサンノゼで、納得のSPを滑り終えた直後に、テネルは喜びを噛み締めた。瞳には涙さえ光った。
「国内選手権のリンクに、特にこの会場に戻ってくることができたなんて、最高の気分です。私にとっては、まるで完全なる輪が描かれたような瞬間でした」(テネル)
パフォーマンスに関しては、テネルは心から満足できたわけではない。FS「四季」もジャンプで2つのミスが出た。ただSPで失敗したスピンは、決して気を抜かなかった。それどころか高速で次々とポジションを変化した最後のコンビネーションスピンは、ほぼ満点に近いGOE評価。緊迫感あふれる4分間の終わりには、ISU非公認記録ではあるものの、今季最高の139.36点を獲得した。
「ミスにはもちろん少しがっかりしています。ただ、今シーズンのここまでと、復帰までの道のりを考えると、むしろ誇りに思っても良いことがたくさんあります」(テネル)
数々の好演ですっかりボルテージの上がったアリーナで、SPと同じくFSでも最終滑走の重役を担ったレヴィトは、すべてをパーフェクトにやりこなした。冒頭の3Lz+3Loを丁寧に飛んで波に乗ると、後半の武器3Lz+1Eu+3Sも成功。持ち前の可憐さや、瑞々しさはそのままに、どこか老練な安定感さえ漂わせた。もちろんFS「Dulcea Si Tandra Mea Fiara(私の甘く優しい野獣)」を力強く滑り終えた瞬間に、無邪気な15歳の笑顔が弾けたのだけれど。
「落ち着いて、やるべきプログラムをしっかりこなした自分を、とても誇りに思います。私の目標は、緊張をできる限り抑えて、小さな、些細な、愚かなミスを絶対に犯さぬことでした」(レヴィト)
技術点で2位以下を大きく突き放しただけでなく、演技構成点でもレヴィトは堂々たる首位。FSで149.55点を叩き出し、トータルでは233.33点に達した。SP後のテネルとの0.02点差は、FS終了後には10.21点に広がっていた。
2度目のシニア全米挑戦で、レヴィトが金メダルの栄光に輝いた。トップレベルに返り咲いたテネルは、自身にとって5度目の表彰台乗り。また両者は2月上旬にアメリカで開催される四大陸選手権と、3月末さいたま開催の世界選手権への派遣が決定された。
2人の新旧女王に続いて表彰台に上がり、やはり2つの選手権代表に選ばれたのがアンバー・グレンだ。SP後に3位と4位が0.01差という、金メダル争い以上のすさまじい僅差を抜け出して、銅をつかみ取った。
一昨年の全米を銀で終えながら、昨大会はコロナ陽性でFS棄権に追い込まれた。五輪行きへのチャレンジさえ許さえなかった悔しさを、グレンは結果で晴らした。
SP4位で迎えたFSでは、冒頭で勇敢に3Aを飛んだ。オーバーターンでGOEは減点されたものの、グレンはこれで勢いに乗った。次々とパワフルなジャンプを決めた。ジャンプシークエンスで予定通りの回転が組み込めなかったことを除けば、すべてを予定通りにこなした。持ち前のスピードと切れ味で、ダイナミックにリンクを駆け巡った。
「正直に言うと、今大会に戻ってくるのが怖かったんです。精神的なハードルがありました。でも、再び戦いを楽しむことが出来て、すごく嬉しく思っています」(グレン)
トータル207.44点で逆転3位を確定させ、人生2度目の全米メダルにグレンが歓喜した一方で、ノーミスのSP3位から最終的にひとつ順位を落としたスター・アンドリューズもまた、初めての4位ピューターメダルに心から興奮した。
「メダルが取れて本当に嬉しいです。ジャンプが2回すっぽ抜けてしまったので、もうダメだと思ってました。でもスコアが発表された時に、自分が表彰台に上がれることを理解したんです」(アンドリューズ)
23年ぶりにアフリカ系アメリカ人女子選手が2人出場した記念すべき大会で、35年ぶりのアフリカ系アメリカ人女性メダリストが誕生した。その35年前の全米女王デビ・トーマス……世界選手権金メダリスト&五輪銅メダリストの偉大なるチャンピオンが切り開いてきた道を、この先もアンドリューズは進んできたいと願っている。
また5位には、大会前に「大穴」と称されていた14歳ジョゼフィン・リーが飛び込んだ。SPを11位と大きく出遅れながらも、FSで難度の高いコンビネーションジャンプを次々と決めて、一気に巻き返した。評判通りのポテンシャルの高さを証明した。
17歳リンゼイ・ソーングレンは6位入賞。SP、FSともにジャンプの回転不足に悩まされたが、柔らかいスピンやステップはいずれも大きくGOE加点がついた。昨大会4位のガブリエラ・イッゾは、SPでジャンプ2本がノーバリューの15位という絶望的なスタートを切ったが、FSは渾身の演技で6位。トータル11位ながら、笑顔で大会を締めくくることができた。
かつて2度の全米選手権優勝を果たしたグレイシー・ゴールドにとって、SP5位の成績は、2017年大会以来6年ぶりの快挙であり、間違いなく希望となった。残念ながらFSではルッツに苦しめられ、最終的には8位終了。本当は世界選メンバーに入りたかったそうだが、それでも第3補欠ながら四大陸選手権代表メンバーリストには名前が入った。昨季末で引退も考えていたという27歳の物語は、きっとまだ終わりではない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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