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フィギュア スケート コラム 2023年1月31日

フランス男子12年ぶりの歓喜。欧州王者シャオイムファ「世界選手権に向けてすぐに練習に戻ります!」| ISU欧州フィギュアスケート選手権2023 男子シングル レビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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アダム・シャオイムファ

アダム・シャオイムファ

質の高いエレメンツと魅力的な表現力とで、好プログラムを2本揃えたアダム・シャオイムファが、初めてヨーロッパチャンピオンの座を射止めた。表彰台の両脇も、笑顔が踊った。マッテオ・リッツォ(イタリア)は復活の喜びを噛み締め、ルーカス・ブリッツギ(スイス)は、逆転で銅メダルをさらい取った。

ボルドー色の過去は、ノーミスで駆け抜けた。記憶のスイッチを押すような、独特な動作から始まるSP「Rain, In Your Black Eyes」で、シャオイムファは冒頭の4T+3Tのコンビネーションジャンプをきっちり成功させた。そのまま3A、4Sも次々に決めた。全身のバネをダイナミックに使い、荒れ狂う嵐のように感情がクレシェンドしていくステップやスピンは、すべてレベル4の高評価。

叩き出したのは、自己ベストを6点半以上も上回る96.53点。今季世界2位の高得点であり、2位以下に10.07点もの大差をつけて、SP首位に立った。

「パフォーマンスに満足してます。国際試合のSPで初めてクリーンな演技が出来ました。すべてが上手く行きました」(シャオイムファ)

記憶のスイッチを押して……悲しい過去をやり直すFS「Horizons」は、決して完璧だったわけではない。中盤の4Sで着地が乱れ、続く4Tは両手を氷についた。

「ひたすら自分の『バブル』の中にすっぽり入って、集中を心がけました。ミスはありましたが、最後まで戦い抜きました。気持ちを一切緩めませんでした」(シャオイムファ)

ミスは2つで食い止めた。それどころかプログラムの物語が、ハッピーエンドへと導いていくように、シャオイムファの演技もポジティブな表情を帯びていく。海の碧が、活き活きとリンクに広がっていく。スピンはレベル4で完璧にまとめた。ステップシークエンスもコレオシークエンスも、いずれも参加選手中トップのGOE加点を得た。

「開幕前から金メダルの可能性があることは分かっていましたし、自らの手でつかみに行ったんです。自分を誇らしく思っています」(シャオイムファ)

自己ベストには10点近く及ばなかったし、FSだけなら2.22差の2位。しかしシャオイムファのプログラムが、2つで1つの物語を描くように、勝利の女神も2つのプログラムを美しく揃えた者に微笑むのだ。トータル266.77点を記録し、シャオイムファが2023年欧州選手権男子シングルの戦いを制した。フランス男子にとっては、2011年フローラン・アモディオ以来となる12年ぶり(11大会ぶり)の金メダルであり、やはり2013年アモディオ以来の表彰台だった。

「まだまだ改善すべき部分はたくさんあります。ジャンプに入る前の動作やスピードや、スピンの回転速度。スケーティングや表現力も。世界選手権に向けてすぐに練習に戻ります!」(シャオイムファ)

リッツォも2本のプログラムを成功させた。2019年に欧州選3位に飛び込んだ時は、SP10位と大きく出遅れてからの、逆転銅メダルだった。逆に年末のイタリア選手権では、SP・FSともに2位でまとめ、トータルで優勝を飾った。2本揃えることの難しさも、大切さも、十分に理解していた。

イタリアンロックバンド、モーネスキンの楽曲で踊ったSP終了直後は、雄叫びと共に、両手でガッツポーズを突き上げた。4Loに回転不足がついたが、4T+2Tはきっちりまとめた。得点86.46点で、上から2番目の位置につけた。

「僕にとって、SPは、いつだって難しいんです。まるで破壊すべき巨大な壁のようなもの。でも好位置につけたおかげで、FSは戦いに行きます。自分のベストを尽くすだけです」(リッツォ)

アメリカンシンガー、ブルーノ・マーズを選んだFS終了直後は、さらに大きな雄叫びと共に、氷の上に突っ伏して泣いた。冒頭の4Tが着地で乱れた以外は、あらゆるジャンプをクリーンに飛んだ。ただ歌うように、滑らかに、晴れやかに、フィニッシュまで演じ切った。

「最後は感情が爆発しました。だって僕はこの大会のために、たくさんの準備を積んできたんですから。あらゆる緊張を解放する必要がありました。だから大声で叫んだんです」(リッツォ)

SP・FS・トータルすべてでシーズンベストを更新した。特にFSに関しては、技術点も演技構成点でも、トップスコアを出した。生まれて初めての欧州選手権(スモール)金メダル。またリッツォが銀メダルを獲得したことで、ペア(1位、2位)、アイスダンス(1位)とあわせてイタリアは今大会最多の4つのメダルを持ち帰った。

スイスは男女いずれも銅メダルに輝いた。男子は2010年ステファン・ランビエール以来の、女子は2008年サラ・マイヤー以来の快挙。24歳のブリッツギにとっては、素敵なサプライズだった。

「メダルが取れるなんて想像さえしていませんでした。目標はトップ10入り。だから自分でも驚いています」(ブリッツギ)

欧州選手権には過去3度出場し、自己最高は昨季の11位。たしかに今季、目に見えて、実績を伸ばしてきた。ブダペスト杯では初めてチャレンジャーシリーズ台乗りを果たし、さらにワルシャワ杯でもメダルを得た。SPでは1回、FSでは3回、パーソナルベストも更新した。ただ、そのワルシャワ杯の数日後の11月末に、鎖骨を骨折してしまう。ブリッツギが練習を再開できたのは、「クリスマスの後」、つまり欧州選わずか4週間前のことだった。

SPでは冒頭の4Tで転倒したが、残りをスピードとリズムに乗ってミスなくまとめ、5位と好位置につけた。表彰台まではいまだ5.55点の距離があった。

FSまでの48時間を、両親と過ごしたり、リッツォと夕食を摂ったり……とリラックスして過ごしたというブリッツギは、FS「ゴースト・オブ・ツシマ」で会場を興奮の渦に巻き込んだ。サムライがテーマの東洋風の楽曲を、独特な振り付けで、力強く熱演した。細かいミスをはねのけ、今季4度目のFSパーソナルベスト更新を果たした。

「プログラムの終わりにはもうヘトヘトで、とにかく最後まで生き残れたことに満足していたんです。自分がなにを成し遂げたのか、まるで理解していませんでした」(ブリッツギ)

全力を使い果たし氷上に突っ伏したブリッツギは、逆転でメダルをつかみとった。一方でSP6位と、初の欧州選でやはりとてつもない衝撃を起こしたウラジーミル・サモイロフ(ポーランド)は、最終グループの緊迫感に飲み込まれてしまったか。FSでは大きく崩れてトータル17位に沈んだ。

また今季2戦目で故障して以来、長らく封印していた4Tを復活させた一方で、ケヴィン・エイモズ(フランス)は3Aに苦しんだ。SPは1回転となりノーバリュー。それでも演技構成点で他を大きく圧倒したおかげで、SP4位で切り抜けた。しかしFSでは冒頭の4回転でお手つきがあった上に、続く3Aからのコンビネーションでミスが出た。調子を立て直せぬまま、本来得意のはずのピンでもレベルが思うように取れなかった。逆転のメダルはならず。自己最高タイのトータル4位に終わり……悔し涙でフィンランドを後にした。

1年前の銅メダリスト、デニス・ヴァシリエフス(ラトヴィア)にとっても、悔いの残る大会となった。SPはコンビネーションジャンプで回転不足を取られた以外は、すべてを小気味好く、颯爽と演じた。堂々3位につけ、2年連続のメダルも現実的に可能だった。ただ1年前はFS冒頭の4Sを、4分の1回転不足で切り抜けたが、今回はダウングレードが取られた。その後のジャンプでも苦戦は続いた。ただ氷上の表現者にとって、なにより痛手だったのは、コレオシークエンスが「ノーバリュー」判定だったこと。基礎点3点+GOEを失い、表彰台の場所を守るどころか、5位へと陥落してしまった。

開幕前にはシャオイムファと並ぶ優勝候補に上げられていたダニエル・グラッスル(イタリア)は、最終的に6位で大会を締めくくった。イタリア選手権で失意を味わった後、ロシアで急遽トレーニングを積んだが、ジャンプの感覚を取り戻すことは出来なかった。それでも最後まで戦い抜き、笑顔でFSを滑り終えた。

文:J SPORTS編集部

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