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イリヤ・マリニンが全米王座を獲りに行く!ジェイソン・ブラウンの新しい競技プログラムにも注目 | 全米フィギュアスケート選手権2023 男子シングル プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部イリヤ・マリニン
クワッドキングから、クワッドゴッドへ。1年前にヴィンセント・ジョウに「将来のアメリカチャンピオン」と絶賛され、ジェイソン・ブラウンから「アメリカの輝かしい未来」に例えられたイリヤ・マリニンが、ネイサン・チェンが6年間守り続けてきた全米王座を獲りに行く。トーチを引き継ぐ覚悟は出来ている。
2023年9月14日、フィギュアスケート界に衝撃が起こった。人類史上初めて、公式戦で、マリニンが4回転アクセルをパーフェクトに着氷したのだ。その後も計4試合で組み込み、うち2回を成功させている。もちろん2023年全米選手権のFSでも、冒頭に、大きな一発を組み込むはずだ。
両親ともにオリンピアンで、特に母はGPファイナル優勝経験者……という血統書付きマリニンの武器は、4Aだけではない。15歳で4回転サルコウとトーループを飛んだ。昨季はルッツを加え、今季からはフリップも仲間入り。つまり4回転で残すはループだけで、すでに練習では降りているという。4回転ルッツからのコンビネーションは、まだ完璧ではない。しかし4回転トーからのコンビネーションジャンプは、すでにマリニンにとって大きな得点源。GPアメリカ杯はFSで4回転5本中4本をGPフィンランド杯はFSで5本中3本を完璧に決めて、いずれも優勝をさらいとった。
昨年末に18歳になったばかりのマリニンが、現在最も熱心に取り組んでいる課題は、実は「クリーンで安定した演技」なのだとか。プログラム冒頭に凄まじく体力を使うせいか、その後の出来がおろそかになることが多々あるからだ。昨年末初めて進出したGPファイナルFSでは、4A、4F、4T、4Sを次々と成功させ、4Tからのコンビも入れたが、スピンはすべてレベル3止まり。銅メダルで満足するしかなかった。「その他すべてのエレメントに集中していかなければならない」と、全米選手権を前に、気を引き締める。
トータルで強い選手になるために、今季は振り付けをシェイリー・ボーンにも依頼した。模範はネイサン・チェン。生来の身体の柔らかさを活かして、この先はスケーティングや表現力をも磨き上げていくつもりだという。
マリニンが改良したい分野で……つまりアーティスティックな面で、世界を魅了し続けてきたのがジェイソン・ブラウンだ。4回転は1度もパーフェクトに成功させたことはない。しかし極上のスケーティングと流麗なスピン、創造性あふれるステップとで、FSでは世界10位の、トータルでは世界8位のパーソナルベストを叩き出した。2015年にはナショナルチャンピオンにも上り詰め、四大陸選手権では2度のメダルにも輝いた。
人生2度目の五輪を、6位で見事に締めくくった後、ジェイソンは「これでもう終わりかな」とも考えたという。ただ勢力的にアイスショーを転戦していくうちに、フィギュアスケートへの愛と、もっともっと成長したいという意欲が、自然に湧いてきた。復帰のタイミングは、全米選手権と決めた。
フィギュアスケートを、スポーツから優れた芸術へと昇華させてきたジェイソンの、新しい競技プログラムが楽しみでしょうがない。今や2026年五輪まで続ける可能性さえ否定しない。28歳の新しいスタートを、じっくりと見届けたい。
カムデン・プルキネンにとって、間違いなく機は熟した。5年前の全米ジュニアチャンピオンは、シニア大会では12位、7位、8位、5位、と確実に順位を上げてきた。国際的評価も高まりつつある。昨春、急遽代理招集された初めての世界選手権では、SP・FSともにパーソナルベストを更新しただけでなく、FSで3位スモールメダルの嬉しいサプライズもついてきた!
今季はチャレンジャー大会のUSクラシックで、シニア国際大会で初の3位表彰台に乗った。さらに同じくCS大会ゴールデンスピンでは、初優勝さえ持ち帰った。プルキネンが次に獲るべきは、初めての全米選手権シニアメダル。そして世界選手権へ。今回は正式な代表メンバーとして、出場権を得てほしい。
18歳リアム・カペイキスにとっては、成長の披露の場となるはずだ。1年前のシニア全米初挑戦は7位と健闘した。今回はトップ5入り、さらにはメダルも射程圏内。なにしろ今季のチャレンジャー大会アイスチャレンジで、シニアの国際大会初タイトルをつかみ取った。気品あるスケーティングや、丁寧なムーブメントは、ジュニア時代から定評が高い。しかも今季からは、4回転も、積極的にプログラムに組み込んでいる。
パワフルな演技で、ファンたちをたっぷり楽しませてくれるジミー・マは、全米自己最高6位を超えられるか。今季ついに、アメリカ杯の開催国枠「以外」の、グランプリ大会2戦にアサインを許された。27歳の今こそが、キャリア全盛期なのだ。またウクライナ生まれのヤロスラフ・パニオットは、仕切り直しの大会になる。2021年に念願の米国市民権を得たが、五輪出場権のかかった昨季は、スケート靴の問題でほぼまるまる棒に振った。2つの祖国のためにも、きっと最高の演技を見せてくれるはずだ。
昨大会はコロナウイルス陽性で棄権を余儀なくされた樋渡知樹は、3年ぶりの全米表彰台に返り咲きたい。たしかに今季はジャンプに苦しんでいる。しかし男子ながら驚異的なほどにしなやかなビールマンスピンや、大きな連続バレエジャンプは、ファンの胸にいつだって素敵な印象を残す。
ちなみに今大会は、同じくアメリカ生まれの日系人、遠藤悟空も出場予定。2018年全米ノービスチャンピオンが、いよいよシニア全米に初挑戦!
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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