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ルナ・ヘンドリックスがベルギー女子史上初の金メダルに挑戦。美しき氷上の戦いが幕を開ける | ISU欧州フィギュアスケート選手権2023 女子シングル プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部ルナ・ヘンドリックス
たとえロシア勢が出場していたとしても、ルナ・ヘンドリックスは、2023年欧州選手権表彰台候補として名を挙げられていたはずだ。ベルギーの23歳は、正真正銘、メダルにふさわしい実力者。昨季グランプリ大会イタリア杯SPでは、後の五輪金メダリストを抑えて首位に立った(トータル3位)。1年前の欧州選は、惜しくも表彰台の足元で終えたが、SPだけならロシア3人娘の独占を許さず2位に食い込んだ。
つまり過去8大会連続でヨーロッパの頂点に君臨し、うち半分は表彰台を占拠してきたロシア女子たちが不在の今大会は、自ずとヘンドリックスこそが優勝大本命に挙げられる!
正直に言えば、少し重圧も感じているそうだ。昨季の世界選手権で、ベルギー選手として史上初の表彰台乗りを成し遂げた後、果たして自分には銀メダリストにふさわしい演技が出来るのだろうか……と悩んだという。幸いにも今季初戦ネーベルホルン杯で優勝を飾り、不安は消えた。
今季フランス杯では初めてのGP大会制覇。GPファイナルでは、またしてもベルギー史上初のメダリスト(銅)になった。そして今年の欧州では、ベルギー女子としては史上初の、ベルギー選手としては1947年ペア以来76年ぶりのゴールドメダル獲得が期待される。
いつもの演技さえすれば、きっと大丈夫。伸びのある力強いスケーティングに、柔軟な肢体が織りなす優雅なスピン。ゴージャスなタノジャンプと、長い手足を活かしたダイナミックなステップ。あらゆるエレメンツを上質にこなせるからこそ、技術点・演技構成点ともに高評価を導き出す。これぞヘンドリックスの最大の強みなのだ。
今季のSP「Si, Mama/Mi Gente」は、健康的でコケティッシュな魅力をアリーナいっぱいに振りまく。FSはシーズン序盤から少しずつ改良を重ねてきた。GP1戦目と2戦目の間に、プログラム前半の使用楽曲さえ入れ替えた。「天国」、そして「堕ちた天使」という、ドラマチックで壮大なストーリーへと進化した。変更3戦目の今欧州選手権では、より完成度の増した演技を披露してくれるに違いない。
また兄ヨリックの引退後、しばらく国際大会には寂しい単騎参戦だったけれど、今年はニナ・ピンザローネがベルギー代表に加わった。目標は「フリー進出」という16歳の後輩と共に、母国に大きな成果を持ち帰りたい。
ヘンドリックが初のメダルを狙うように、すべての選手にとって、初めての欧州選メダルとなる。中でも表彰台の残る2席を巡る戦いは、素晴らしく白熱したものになるだろう。
ポーランドのエカテリーナ・クラコワは、実績と実力の両面を揃えている。昨大会では、ヘンドリックスに次ぐ5位に食い込み、現時点での世界ランキングは10位。11月のチャレンジャー大会ワルシャワ杯では3年ぶり2度目の優勝を果たし、ほんの2週間前に開催された冬季ユニバーシアードでは、我らが日本女子3選手+韓国選手に次ぐ5位という好成績で終えている。
笑顔が眩しい20歳。今季のSP「プレスリー・メドレー」では、ノリノリのロックナンバーに乗って、キュートな小悪魔ぶりをたっぷり披露してくれる。FS「カールじいさんの空飛ぶ家」では、クラコワ定評の高い演技力が、見ものなのだ。
ジュニア時代には歴代最高スコアを塗り替え、JGPファイナルで銀メダルを獲ったアナスタシア・グバノワ(ジョージア)は、シニアでは今季生まれて初めてGP大会表彰台に上がった。昨世界選手権では、SP14位と出遅れながら、FSをノーミス&全レベル4で見事に滑りきり、一気にトータル6位までジャンプアップしたほどの地力の持ち主だ。
20歳グバノワのキャリアは、これからがきっと開花の時。滑らかで美しいスケーティングに、気品漂うムーブメントは、まさに眼福。シリアスで繊細なSPはもちろん、ユーモラスな動作が組み込まれたオリエンタル風のFSさえも、グバノワの手にかかればすべてがエレガントになる。
ウクライナで生まれ育ち、オーストリア代表として出場するオルガ・ミクティナは、昨季苦しめられた故障からの完全復活が期される。2年前の世界選FSで披露したような滑りを取り戻しさえすればーー軽やかなスピードでほぼノーミス、技術点だけなら5位の高得点を得たーー表彰台も夢ではない。もちろん成績がどうであれ、昨季からさらに進化した不可思議なSP「My Nocturnal Serenade」も、しっとりと美しいFS「The Curse」も、あちこちに工夫が散りばめられた見ごたえあるプログラムであることに変わりはない。
26歳大ベテランのニコーレ・ショットは、昨冬2度目の冬季五輪へ出場し、この年末には7度目のドイツ国内チャンピオンとなった。昨世界選SPでは、6位の好演技も見せた。フィンランドでも完璧なプログラムを2本揃えれば、初のトップ5は射程圏内。昨季は自国エストニアで開催された欧州選で8位、世界ジュニアで9位に食い込んだ18歳のニーナ・ペトロキナは、2度目のユーロでさらなる上位を目指す。
イタリアのララ・ナキ・ガットマンやフランスのリア・セルナも、フィギュア古豪国の代表としてベストを尽くす。16歳のスイスのキミー・レポンドは、昨世界ジュニア7位、シニア転向1年目。モデルも兼業しているとあって、スラリと長い手足が印象的。地元フィンランドからは15歳ヤンナ・ユルキネンが、人生初のISUチャンピオンシップに挑戦する。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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