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ヨーロッパで巻き起こる新たな覇権争い!根底からヒエラルキーが築き上げられる | ISU欧州フィギュアスケート選手権2023 ペア プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部サラ・コンティ&ニッコロ・マッチ組
私たちが目撃するのは、真新しい欧州チャンピオンペアの誕生であり、初々しい顔ぶれが並ぶ表彰式。2023年欧州選手権ペアでは、根底からヒエラルキーが築き上げられる。
現在の世界情勢に、最も大きく影響を受けている分野のひとつがフィギュアスケートであり、欧州選手権ペアの出場リストを眺めると、否が応でもロシア勢の不在を感じる。なにしろ過去2大会は、表彰台の3つの場所を、ロシアペアが独占してきた。そもそも21世紀に入ってから、欧州チャンピオンの座に上り詰めたロシア以外のペアは2組しかない。
また今季エスポー杯3位組が解散、さらに昨季世界選4位カリーナ・サフィナ&ルカ・ベルラワ組は故障による欠場と、欧州屈指のペア強豪国ジョージアが選手を送り込めないのも極めて残念だ。
そんなヨーロッパで巻き起こる新たな覇権争いは、間違いなく、イタリアとドイツとの間で繰り広げられる。特に3年後にミラノ・コルティーナ冬季五輪を控えるイタリアは、史上初の欧州ペア王座獲得に意欲を燃やす。
イタリアは今季のGPシリーズに、アメリカと並ぶ最多4ペアを送り込んだ。ファイナルにも2組が進出。しかもトリノでは「りくりゅう」、「シメフレ」に続いて、サラ・コンティ&ニッコロ・マッチ組が銅メダルを勝ち取った!
氷の上だけでなく、私生活でも「24時間一緒のカップル」だからこそ、コンティ&マッチ組のユニゾンの質は高い。SP「オブリビオン」にFS「ニューシネマパラダイス」と、今季はいずれもしっとりと歌い上げるようなプログラムを2本選んだ。特にFSは、本場イタリア人カップルとして、情感たっぷりに演じあげる。まだまだツイストは向上の必要があると感じているそうだけれど、「ゆっくりと歩み、遠くまでたどり着く」という人生哲学を持つ2人は、一歩ずつ成長していくのだろう。
自信を深め、勢いに乗る2人は、結成4年目にして初めてイタリア選手権も制覇。いまやヨーロッパでの金メダルは、「現実的な目標」だと確信している。
コンティ&マッチ組がイタリアに史上初のGPファイナルペアメダルをもたらしたのだとしたら、レベッカ・ギラルディ&フィリッポ・アンブロジーニ組は、今季のエスポー杯で、GT大会を制した史上2番目の伊ペアとなった。昨欧州選では5位に食い込み、念願の五輪出場も果たしている。
残念だったのは地元開催のファイナルで、上手くやろうとしすぎて、緊張してしまったこと。細かいミスを連発し、5位で満足するしかなかった。それでも演技構成点は軒並み高評価を得た。SP「クイーン・メドレー」とFS「セビリアの理髪師」で、アンブロジーニのヒゲあり・なしと、2つの顔が見られるのも楽しい。
そのイタリアで7年間頂点を守り続け、五輪に3度も出場し、欧州では「ロシア以外で1位=4位」につけていたニコル・デッラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組は、昨季限りでペアを解消。デッラ・モニカは現役から退き……対するグアリーゼは、なんと新しいパートナーと共に欧州選に帰ってくる!
ほんの昨季までシングル選手だった19歳ルクレツィア・ベッカーリと、大ベテラン34歳グアリーゼは、結成わずか数ヶ月でイタリア選手権表彰台の上から3段目に飛び乗った。もちろん、まだまだ、発展途上。ただ男性側の丁寧なサポートと、息のあった滑りに、さらなる進化の可能性を感じさせる。
ドイツにはサフチェンコ&ゾルコーヴィ組とで欧州選4回、世界選5回の優勝を果たし、同じサフチェンコとマッソとで2018年五輪&世界選金メダルを成し遂げた実績と誇りがある。今大会では、エスポー杯で2位を勝ち取ったアリサ・エフィモワ&ルーベン・ブロマールト組と、フランス杯3位のアニカ・ホッケ&ロベルト・クンケルとで、6年ぶり(5大会ぶり)の台乗りを目指す。
フィンランド生まれで、5年間ロシアペアとして活動してきたエフィモワと、ベルギー生まれで、ペアとして過去11季ドイツ人として戦ってきたブロマールト。結成3季目にして、ようやく今季から国際大会への転戦が可能となった。もちろん経験豊富な2人だけに、すぐさま手応えある成績を重ねている。
しかもフィンランディア杯2位、エスポー杯2位と、エフィモワの母国フィンランド……つまりエスポー会場での好成績が目を引く。つまり同会場で開催される欧州選は、エフィモワ&ブロマールトにとって縁起の良い大会に違いない。しっとりと美しいSP「ムーンライトソナタ」で、ファンを魅了することだろう。
そのブロマールトと共に平昌五輪に出場したホッケと、ノービス時代からドイツのトップペアスケーターだったクンケルは、実は今季から練習拠点をイタリアに移している。元欧州メダリストのアンドレイ・ホタレックに師事し、振り付けは元アイスダンス世界チャンピオン「カペラノ」カペッリーニ&ラノッテ!
大きな躍進のシーズンとなった。初めてのチャレンジャー大会優勝、初めてのGPメダル、さらに昨年末には初めてのシニアナショナルタイトルを手にいれた。だから欧州選手権が「待ちきれない」。「大好きでハッピーな」2年越しのプログラム、SP「アバ・メドレー」では思いっきり楽しむつもりなんだとか。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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