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「今後のビジョン」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部町田樹のスポーツアカデミア
今回お迎えしたのは、第18回ショパン国際ピアノコンクールで51年振りに第2位となった音楽家の反田恭平さんです。みずからオーケストラの株式会社Japan National Orchestraを創設し、ピアニストとしてのキャリアから、指揮者や経営者など活動の幅を広げ、今最も注目されている音楽家です。
前回のお話し
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「ライバルの存在」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
町田(以下M):パフォーマーとして活動されていますが、後進を育てる立場にも移行されています。音楽の演奏技術だけではなく、緊張をいかにコントロールするか、あるいは身体を作るかというところまで教えないと、反田さんのように世界で活躍できる演奏家を育成することは難しいのだろうと感じました。そういう意味でもスポーツ科学とか、アスリートの精神性や身体性を巡って蓄積してきた研究の成果なども活用していただけるのではないかと希望を感じました。反田さんは将来、音楽学校を作りたいというビジョンをお持ちですが、理想の教育のあり方はどんなものでしょうか。
反田(以下S):ショパンコンクールで2位だったことに責任感も覚えていますし、1位になるために作戦を考えてやりましたが、それでも2位でした。生きているうちに1位を取る後輩たちを見てみたいと非常に思います。そのためには、最初からメディアのカメラに慣れていることも大事。舞台裏でギリギリまで密着されていて、相当精神的にも参っている中でカメラが入っている。そういうことにも慣れなきゃいけないし、言語についてもそうだと思います。実技以外でサポートできるような授業が必要だとも思います。
僕が今考えていることは100%ではありませんが、日本では五輪もありましたし、富士山や京都が大好きだと外国人に言われたりしますが、クラシック音楽界では全然見向きもされていないのが現状です。顕著に表れているのが、音楽学校のどこに海外からの留学生がいるんですか?ということです。ほぼ皆無です。なぜそうなっているかと言うと、世界の第一戦で演奏しているプレーヤーの先生がいないから。僕らがなぜ留学したいのかと言えば、あのプロの技術を盗みたいからとか、あのコーチの思考を知りたいとか、人生観だったり、それがメインでいくわけです。
ショパンコンクールで一緒に入賞したメンバーを僕の学校にも招きたいと思います。今回ショパンコンクールで受賞した他のピアニストに将来どうするかと聞いたら、みんな学校を作りたいと言っていました。お互いの学校にそれぞれ先生として行けたら良いねって言って終わりました。ソリストとして生きていくうえではそれ相応の覚悟が必要だし、甘い世界ではありません。ここの学校を卒業すればすぐに誰かの代役で呼ばれたりするようなトッププレーヤーたちを育てたい。オーケストラと共演する人は限られています。オーケストラと共演することで何がわかるかと言うと、指揮者の行動であったり、オーケストラのメンバーの相関図であったりします。それも技術であり、それを教えられる人は日本にはそうそういない。そういったソリストになるための学校を作りたいと考えています。
M:反田先生の人生観を学びに、あるいはアーティストとしての美学であったり技術を知りたいと思って世界から人が来る。あるいは演奏技術だけじゃなくて、色々な映画や経験を通じて、作品への解釈を深めていくことで技術も深まっていくと。
S:僕はピアニストという枠だけにおさまりたくなくて、全てを把握できるアーティストになりたいと思うからこそ、僕は音楽家になりたいという言葉を使っていたりします。そういう同じ志を持った子達にはぜひ僕も全力で指導をしていきたい。音楽家が増えることを望んでいます。
M:幾ら演奏が上手くても、その演奏をマネタイズして自分をプロデュースして、ある程度のお金を稼いでいかないといけないという問題もありますよね。マネジメントの仕方やプロモーションの仕方も大事ですよね。
S:コンサートをやっても人が入らないと言う人がいますが「入れる気がないから入らないんじゃない」って思います。やり方なんて色々あると思います。僕らもチームで動いて、ここまで来るのに色々と試行錯誤してきました。その過程を見ないで結果を見る日本人が多いから、考える癖を教えられるような人間になりたいですけね。
M:これからの時代は自分のことは自分でプロモーションしたりマネジメントする能力がアスリートにも必要だと思います。
S:音楽界は非常に時代遅れな業界でもあるので、20年前くらいのことを我々はやっていたりします。僕は確かに異端児とか言われることがありますが、違う業界の方がやっていることをスライドして持ってきているだけです。クラシック音楽業界は伸び代しかないので、逆に言えば楽しみです。業界を引っ張っていけるような人間にはなりたいなと思います。
まとめ
今回は音楽家の反田恭平さんにお越しいただき、トップアーティストがどのようなパフォーマンスを繰り出しているのか、そのパフォーマンスを繰り出すときの身体感覚やメンタルコントロール力、さまざまに聞くことができました。反田さんはこれから教育者にもなられるお方ですが、次世代の音楽家を育てるための教育のあり方についてもお話をいただきました。芸術とスポーツで違うジャンルに住んでいる人たちですが、自分が鍛錬してきたパフォーマンスを1回限りの舞台でアウトプットする一連のプロセスは変わりません。アーティストの経験値や実践値はアスリートにも応用できますし、その逆もあると思います。
いま学術界ではトップアスリートの身体運動やメンタルがどうなっているのかを研究する学問分野があります。芸術学の領域においてもトップアーティストがどういう風にパフォーマンスをしているのか、そのノウハウを科学する学問分野があります。それらは今までコラボレーションすることなく、独立していましたが、今日の対談を通じて、スポーツ科学と芸術学は手を取り合って研究の成果を応用し合うことが可能だと思いました。私も今回の対談で色々なヒントを得られましたので、今日の経験を糧に研究者としても頑張っていきたいと思います。
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フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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