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完璧なショートと、最高レベルに近づいたフリーで金メダルの宇野昌磨「もっと成長をしていきたい。そう願っています」 | ISU世界フィギュアスケート選手権2022 男子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部男子シングルのメダリスト
順位や得点のためでなく、自分のためでもなく、ここまで自分を支えてきてくれたすべての人のために滑りたい。シーズン最後の試合で、最高のプログラムを披露したい。こう誓った宇野昌磨が、一番高い場所へと上り詰めた。完璧なショートと、最高レベルに近づいたフリーとで、世界選手権の金メダルをつかみとった。
「たとえどんな順位であっても、それぞれに価値のあるものだと思っています。でも、こうして優勝できたことは、素直に嬉しいです。なにより、僕に期待してくれた人々が、この優勝を喜んでくれていることが嬉しいんです」
練習でやってきたことを、世界一決定戦の大舞台で再現した。すべてのジャンプは極めて高い完成度で着氷し、あらゆるステップやスピンは、SP「オーボエ協奏曲」の厳かな調べと共に、氷の上に長く余韻を残した。
「自分をいつもよりよく見せようとはせずに、いつも通りを見せようとした結果、あの余裕のある演技ができました」
冬季五輪で2度更新したパーソナルベストを、再度塗り替えた。歴代3番目の高得点109.63点を記録し、宇野は首位でFSへと折り返した。
2つの使命を掲げて、宇野はシーズン最後のFSへと臨んだ。1つ目は「4回転5本」という難構成へのチャレンジを成功させること。……結果的には5本目の4回転トーループで着地ミスと回転不足があり、パーフェクトではなかった。しかし間違いなく、5本すべてを飛んだ。しかもうち3本(ループ、サルコウ、フリップ)は、それぞれ宇野のキャリアで最も高い加点を勝ち取ったほどの、つまり宇野昌磨史上最高のジャンプだった。
2つ目はプログラムの締めくくり。FS「ボレロ」は、ジャンプの難しさに加えて、アレンジも振り付けも複雑かつ濃密で、「体力をとても消耗するプログラム」だと宇野は繰り返す。そのせいで北京では、ステップシークエンスを、コーチのステファン・ランビエールが振り付けた通りにこなせなかった。
「この『ボレロ』を作ってくれたコーチのためにFSを滑りたい、コーチが納得の行くようなFSを滑りたい、ただその想いだけでした」
クライマックスへと向けて、宇野の動きは熱を帯びていく。そしてドラマチックで、すべてのエネルギーを解放するような、ステップシークエンスへ。国際ジャッジたちは高得点でその技を讃えた。レベル4はもちろん、5段階中4.714という、ほぼ満点のGOEを得た。
もちろんランビエールコーチからも、「ファンタスティックなエンディングだった!」と、最上級の褒め言葉をもらうことになる。FSの得点が初めて200点を超えたことより(202.85点、歴代4位)、トータル300点超えを達成したことよりも(312.48点、歴代3位)、きっと宇野にとっては嬉しい評価だったにちがいない。
五輪で2大会連続メダルに輝き、世界選手権でも過去2回2位を経験してきた宇野昌磨が、ついに初めて頂点に上り詰めた。日本男子としては高橋大輔、羽生結弦に次ぐ3人目の世界チャンピオンであり、2010・2014年大会に次ぐ史上3度目の日本男女シングル同時戴冠だった。
「この優勝を、あまり背負いすぎずにいきます。もしかしたら成績が落ちてしまうかもしれない……それくらい新たな挑戦をしながら、来シーズン以降ももっともっと成長をしていきたい。そう願っています」
日本男子の快挙は、宇野の初優勝だけに留まらなかった。鍵山優真が2大会連続銀メダルを持ち帰り、友野一希はSPで3位のスモールメダルを手に入れたのだ!
1年前の鍵山は、爽やかな衝撃を巻き起こした。2月の北京では、高いポテンシャルを再証明した。そしてこの3月、もはや揺るぎない表彰台候補として、モンペリエに乗り込んできた。
SP冒頭の4回転サルコウは、大きく、ふわりと、鮮やかに飛んだ。しかもジャッジ9人中6人がGOE満点をつけた大ジャンプの直後に、鍵山はコンビネーションジャンプも完璧に決める。ただ序盤2本が上手く行ったからこそ、「3回転アクセルもちゃんと降りなきゃ」と、慎重になりすぎたという。軽い着地ミス。「許容範囲」と本人も語るように、ほんのわずかに減点された。
むしろ五輪ではレベル3止まりだったステップシークエンスで、きっちりレベル4を取れた。演技構成点もいつも通り9点台が並んだ。結果は105.69点と高得点。
「メダルの色のことなど考えず、シーズン最後の試合を、ただ全力で締めたい。本当にやりきったと思えるフリーを滑りたいんです」
しかしFSを終えた鍵山の口から、真っ先に飛び出した言葉は、「不完全燃焼」だった。今シーズン取り組んできた4回転ループが両足着地でダウングレード。さらに後半の3+3コンビネーションが3+2となり、続く最後のアクセルは、3回転の予定が1回転になってしまった。
「最後の最後で緊張してしまって、それが身体に出てしまいました。ノーミスしたい、その思いが強すぎたんです。自分の100%を出しきれなかったことがすごく悔しい」
ただ2つのミスを除いたジャンプと、あらゆるステップやスピンは、すべて高い加点を勝ち取った。FS191.91点・合計297.60点。苦い思いと同時に、それでも鍵山は達成感を抱く。むしろ感傷に浸っている暇などない。18歳は、早くもその先へと、目を向けている。
「遠い将来のことよりも、目の前のこと、次にやるべきことに集中して行くつもりです。今は早く新しいプログラムの振り付けをしたい。次のシーズンに向けて準備していきたいです!」
友野にとって、この人生5度目の「代打」出場は最も嬉しく、最も悔しく、そして最も収穫の多い大会となったに違いない。
ほんの4日前にプランタン杯で国際初タイトルを手にしたばかりの友野は、SPではノーミスの演技で会場をわかせた。しかも今季ロシア杯で人生初の90点超えを達成した時に、「次は101点」と願っていた……その101点に届いた!
しかし最後から3番目に登場したFSは、思い通りにはいかなかった。どこかセンチメンタルで、優しい希望と人間愛にあふれるそのプログラムは、間違いなくファンの心をつかんだ。しかし7つのジャンプ要素のうち、4つで着氷にミスが出た。「集中しきれず、歯車が噛み合わなかった」と友野は後に振り返る。得点は伸びずFS8位に終わり、総合では6位に陥落した。
「悔しいという気持ちもありますが、まだまだお前の実力じゃダメだ、とも思い知らされました。でも飛躍につながった試合でもあります。今後はもっともっと上を目指す覚悟でやっていきます」
銅メダルはヴィンセント・ジョウがつかみ取った。新型コロナウイルス陽性で、五輪個人戦出場が果たせなかった絶望から、見事に這い上がった。
開幕1週間前まで、出場できるような心理状態でさえなかったと告白する。しかしトライしなかったことを後悔したくない、と乗り込んだフランスで、「心の檻」が開いた。
「ただ自分のためだけに戦ったんです。今大会の僕は、奇妙なほど、自由な気分でした。どんなプレッシャーからも解放されていました。あらゆる瞬間を楽しめましたし、笑顔で良い時間を過ごせました」
回転不足をいくつかとられたせいでSPは6位で甘んじたものの、FSでは難度の高い構成で勇敢に戦った。「質の高いジャンプ」と「2本の素晴らしいプログラム」を揃えたことが誇らしい、と語るジョウにとっては、3年ぶり2度目の世界選銅メダルだった。
アメリカの2人の初出場選手も、それぞれに素晴らしい成果を持ち帰った。SPで4人が100点超えというハイレベルな戦いで、その4人目に飛び込んだのがイリア・マリニンだった。世界選のミニマム取得のため2月末にチャレンジカップに出場したことなど、まるで笑い話のように。
17歳の新星は、残念ながらFSで大きく崩れた。3本目のジャンプまでは、とてつもなく完璧だった。しかし「ナーバスになりすぎていた」というマリニンは、4本目の4回転サルコウで大きく転倒。その後も2つのジャンプで失敗し、FS11位・トータル9位と大きく順位を下げた。わずか3週間後に控える世界ジュニアでは、今回の教訓を活かし、「大胆なことに挑まず、まずはできる限りクリーンな演技を心がけるつもりです」とのこと。
一方でSPは12位と出遅れたカムデン・プルキネンが、FSでは3位スモールメダルを獲得した。なんとパーソナルベストを28点近くも一気に塗り替える会心の滑りで、代打による初出場ながら、総合でも5位に躍り出た。
ロシアの拠点で練習できず、イタリアで調整を積んできたモリス・クヴィテラシヴィリは、自己最高の総合4位に食い込んだ。
またウクライナから出場したイヴァン・シュムラトコは、SP・FS共に渾身の演技を見せた。「明るい笑いに満ちた愛ある暮らし。ただ1つの道は、僕らの地獄を切り裂きながら、夜の向こうへと伸びていく」……そんな歌詞に乗せて、氷上から平和の尊さを訴えた。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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