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「ピアニストの身体運動」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部逆に僕も聞きたかったんですけど、例えばスポーツ選手って本番に向かっていく過程で音楽を聞いたりしているじゃないですか。あれは何を聞いてるのでしょうか。今から踊る曲を聞くのは分かるんですけど、我々はそれがなかなかできない。ポップスを聞いてベートーベンを弾いても変なことになりかねない。だからこそフィギュアの選手は音楽を聴きながらスポーツをされるのですごい気になっていたんですよね。
M:人それぞれだと思いますが、音楽の力を借りてテンションを上げていくこともあります。行くぞ!というときはアップテンポのダンスミュージックなどを聞いて士気を高めていく。終わったときはボルテージを下げなければいけないのでクラシックとかを聞いて精神を安らげていく。音楽を通じて心理面をコントロールしていくことをしていました。あるいは、外的な情報を遮断するという役割も大きいかもしれません。耳が開いていると「何番滑走の人が何点」みたいな情報がずっと聞こえてくるので、耳栓がてらという人もいるかもしれません。
S:フィギュアスケートでも予定していた演技ができなかったときに臨機応変に内容を変えたりすると思いますが、僕らにもやっぱりそれがあります。現在は進行していて、気づいたときにはそれは過去であって、現在は流れていて音楽も流れている。ここの辻褄を合わせるためにどうやって演奏しようかということを考えています。過去・現在・未来はいつも同時に進行しています。
M:確かに私たちも競技しているときは主観で情報処理をしていますが、(頭のうしろ辺りに)第三者の自分がいて、その第三者と自分とで「いま動きすぎているから落ち着け」みたいな対話をしたりします。ごくまれに無の境地でパフォーマンスすることができるときがあります。スポーツ界では《ゾーン》とか《フロー》と呼ばれますが、音楽家でもそういう現象はありますか。
S:ありますし、ゾーンに入っている演奏はお客さんも分かると思います。例えば虫が止まっても分からないこともありましたし、(会場で鳴った携帯の)着信音に気づかなかったこともあります。なんなら下を向いて演奏するのでヨダレが垂れたりもします。唾を飲み込むことすら忘れてしまう。ゾーンに入るときは、全ての音が可視化できるような気がします。
それは完全に集中力の問題だと思います。ただただ耳で弾いている瞬間はゾーンになりやすいかもしれない。脱力しているとき、耳に力が入っていないときはその傾向があるかなと思います。それはお客さんの環境が良い・悪いは関係がないので、自分のその日のコンディションによります。あとはお腹が空いていることと、ある程度追い込まれている環境のときはそれ(ゾーン)が結構出たりしますね。
次回「身体と心情」
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「音楽に惹かれた理由」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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