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フィギュア スケート コラム 2022年3月31日

「アスリートと音楽家の共通点」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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町田樹と音楽家の反田恭平さん

町田樹と音楽家の反田恭平さん

今回お迎えしたのは、第18回ショパン国際ピアノコンクールで51年振りに第2位となった音楽家の反田恭平さんです。みずからオーケストラの株式会社Japan National Orchestraを創設し、ピアニストとしてのキャリアから、指揮者や経営者など活動の幅を広げ、今最も注目されている音楽家です。

町田(以下M):本日はよろしくお願いします。そして、ショパン国際ピアノコンクールでの快挙、誠におめでとうございます。1970年に内田光子さんが2位を受賞されて以来、約半世紀振りの日本人最高順位ということで。

反田(以下S):感慨深いのが、そのときの第3位というのが、僕の先生なんです。エントリー番号が64番という数字だったんですけど、先生も「半世紀前に僕も64番で3位になったんだよ」と仰っていて、同じ番号だったので何かあるのかなと冗談で言っていたらこういう結果になったので嬉しかったですね。

M:予選から本戦に至るまで長丁場でしたが、Chopin InstituteがYoutubeでLIVE中継してくれていて、それを通してずっと拝見させていただきました。本当に正確無比な技巧はもちろんのこと、深い情感だったり思想が感じられる演奏で虜になりました。私は元フィギュアスケーターで、今はバレエやダンスをやっています。音楽を身体で表現する仕事をしていますが、踊りは音楽をビジュアライズするものだと思っています。音楽家が紡いだ音楽を、視覚化する。でも、反田さんをはじめ少数の音楽家は、音楽家が舞踊家ではないかと思う瞬間が時々あって、反田さんの演奏ももちろん音を紡いでいますが、特に腕の動きが鍵盤の上を踊っているように感じます。これだけ豊かに指先が踊れていたら、それはこれだけ素敵な音になるよなと思って、ずっと惚れ惚れして拝聴させていただきました。

KYOHEI SORITA - final round (18th Chopin Competition, Warsaw)

S:僕は最初にロシアへ留学していました。その頃は、時間があればよくボリショイ劇場にバレエを見に行っていたましたが、うしろで待機されている人たちの動きの無さというか、舞台の一つのモノというか、ステージに同化しているところを見たときにすごい感激しました。その後パッとみんなで一緒に動いたりする。僕はあれが本当に音符ではないですが、指先に見えて、88鍵で同じことをしようと考えていた時期もありましたね。指でムーンウォークをやるじゃないけど、踊りのように弾けば、軽々しさも出るのではないかと考えていました。

プロフィール | 音楽家 反田恭平さん

プロフィール | 音楽家 反田恭平さん

M:やはり舞踊家と音楽家は通ずるところがあるのかもしれませんね。もう一つ印象深いシーンが、ショパンコンクールでありました。今回の映像は、ピアニストが緊張しながら手をウォームアップしながら待っていて、名前を呼ばれて舞台に出て、必死に汗だくになりながら弾いて、安堵して控室に戻られる一連の過程が全て映っていました。それを見た瞬間にアスリートと同じだと思いました。例えばフィギュアスケーターもリンクサイドで名前を呼び込まれるまで緊張しながらウォームアップをして、コールされたら舞台に出てパフォーマンスをして、帰ってきたら緊張から解き放たれる。その一連の過程が、アーティストとアスリートで別なんですけど、共通するところがたくさんあるなと感じました。そういうシーンを見ていると、実はアスリートとアーティストの実践経験であったり、実践で得られた知識やノウハウは共有可能なのではないかと思い、この対談に至っています。

私は元フィギュアスケーターで20年以上競技者をやっていましたが、引退後はバレエやヒップホップのダンス分野で活動しています。プロとしてではなく、ライフワークとして踊っています。つまり、私はアスリートを経験してからアーティストっぽい活動をしている。逆に反田さんは、実は小さい頃にサッカー選手を目指されていて、今は音楽家になられたと。アスリートを経験されて、今はプロのアーティストになられていて、そういう意味では2人とも両方を経験しています。

S:音楽家には意外とスポーツを好きな人が多いです。でも実際にやっていた人は少ない。ピアノって座っているだけだと思われるかもしれないですけど、意外と速度感とか動体視力が結構重要になってきたりします。

次回「音楽家を目指したきっかけ」

文:J SPORTS編集部

J SPORTS編集部

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