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令和4年1月31日~2月1日の日程で、長野県長野市、ビッグハットにて全国中学校スケート大会、フィギュアスケート競技が開催された。昨年は新型コロナ禍のために中止。2年ぶりの開催となった。無観客開催となったことは残念だったが、無事に開催でき、中学生スケーターの活躍の場がなくならずに済んだことは何よりだった。今回は女子選手、上位8名をご紹介したい。島田麻央を筆頭に、将来を嘱望される有望選手が揃った大会となった。
1位 島田麻央
1位 島田麻央
中学1年生、全中初出場で優勝を果たした島田麻央。4回転トウループを武器に持ち、ノービス世代ながら飛び級で全日本ジュニアを制した逸材だ。今回もショート、フリー共に他を寄せ付けない演技だった。もっとも意外なことに、本人は大きな緊張を抱えて試合に臨んでいたようだ。
「ショートではこれまでにないぐらい緊張して足が震えていました。初めての全中で、18人しかフリーに進めないことが分かっていたことが緊張につながったと思います」
フリーの枠が少なく、トップ選手でも大きなミスをすればショート落ちしてしまうのが全中の特徴だ。島田麻央ほどの逸材でもこの呪縛を解きはらうのは大変だったようだ。ただ、演技が始まってしまえば“ライオンキング”の世界を明るく、楽しく表現し、63.99と自己ベストを2点ほど更新するスコアを叩き出した。そして迎えたフリー、島田麻央はこの試合でも4回転トウループを成功させたのだ。
「今まで4回転が跳べた大会でも6分間練習では悪かったことが多かったので、気持ちを切り替えていきました。最終滑走で滑らせてもらうのが初めてだったので、緊張しました」
珍しくループジャンプをパンクしたことを悔しがっていたが、それ以外は大きなミスなく、堂々たる演技だった。次なる大技の習得も間近のようだ。
「トリプルアクセルがあともう少しです。4回転ルッツも4回転サルコウも練習しているんですけど、一番行けそうなのがトリプルアクセルです」
来季はまずは4回転トウループ、トリプルアクセルをフリーに組み込むことを目指すとのこと。とはいえまだ中学1年生。くれぐれも無理のないように練習を積んでもらいたいものだ。
2位 柴山歩
2位 柴山歩
今季、安定した演技を続けてきた柴山歩が全中でも2位となった。
「去年は新型コロナ禍で中止になってしまって、楽しみにしていたので残念だったんですけど、今年は無事に開催されて、良い成績が出せて良かったです」
しかし、演技終了直後には悔しそうな表情を見せたことが印象的だった。この点について聞いてみると、
「試合とか普段の曲かけでも一番していけないのがパンクで、それをやってしまったのが残念で悔しかったです」
普段ならばミスしない、ループジャンプのパンクがことのほか悔しかったのだそうだ。また、練習中のトリプルアクセルを回避し、安全策でノーミスを狙う構成だったにもかかわらず、そのノーミスを達成できなかった悔しさもあったようだ。
「毎回いつも、3A(トリプルアクセル)を抜いているのにどこか別のところで失敗してしまいます。3Aはこちらの会場で初日に練習した時にいい感じで跳べたので、次ぐらいからは入れたいと思っています。オランダのチャレンジカップに出るので、その時には入れたいです」
全日本でも公式練習でトリプルアクセルに挑んでいたが、いよいよ試合での投入が近づいているようだ。
「今季は想像もしてなかったぐらい、いい演技を沢山できましたし、全日本の舞台、あんなに沢山のお客さんが入っている中で自分の演技ができるようになったってことは、今シーズンで一番成長できたところだと思います。自分でしっかり、何をやるという目的を決めて、自分から練習できるようになったことも成長したと感じています」
加えて、コロナ禍でスケートに取り組む心境についても話してくれた。
「最近は、コロナ禍の影響があったりして、滑れるだけでありがたいと思いますし、こうして試合に出られることがありがたいと感じます。最近は単純にスケートが好きだ、上手になりたいから頑張ろう、って思います」
オフにはスケーティング、ステップのブラッシュアップに加え、4回転ジャンプの練習も進める予定だという。木下アカデミー陣営では島田麻央への注目度が特に高いが、この柴山歩も実に楽しみな一人だ。来季のジュニアの台風の目になりそうだ。
3位 中井亜美
3位 中井亜美
新潟から南船橋のMFアカデミーに移籍し、着実に上達している選手だ。以前からトリプルアクセルに挑んでいるのだが、今季はアクセルの失敗の後、立て直せずに崩れてしまう印象が強かった。それが今回、アクセル直後のルッツこそミスをしたものの、そこからの立て直しには見事に成功。3位入賞を果たした。
「初めての全中で、緊張があって心の整理がつけられずフリーに臨んでしまって、それがアクセルの失敗につながったと思います。表彰台に乗れると思っていなかったので、嬉しい気持ちと、悔しい気持ちとがあります。こちらに来てから公式練習でアクセルを降りる回数が増えたんですが、本番は不安な気持ちが残ったまま跳んでしまい失敗につながってしまいました。ただアクセルの確率は上がってきています。全日本ジュニアで7位に入って、繰り上げで全日本に行くことができたり、東日本では悔しい気持ちが残ったり、いいことも悪いこともあったシーズンでした」
以前、新潟にいた頃は元気に跳ね回っているような演技が印象的だった。ところが今はしっとりとした曲を演じ、表現にも気を遣い、ずいぶんと印象が変わった。
「激しい曲からゆっくりな曲に慣れるのには時間がかかったんですけど、毎日音楽を流して練習して、今は慣れてきました。かっこいい曲も好きなので、今後はショートプログラムでアップテンポな曲もやってみたいと思っています」
3月、ルクセンブルクで開催されるクープドプランタンへの派遣が決まったそうで、「そこでいい結果を出したいです」と意気込む。国際大会でトリプルアクセルを決めて、大いにアピールをしてきてもらいたいものだ。
4位 大門桜子
4位 大門桜子
ノービス時代から豊かな表現力で高い評価を得ている選手だ。ただ今季はジャンプの仕上がりに苦労した印象がある。
「今シーズンは失敗の演技が多くて、とても悔しいシーズンでした。来季はジャンプの安定を目指したいです」
フリーでは前半は素晴らしく、今季一番の演技ではないかと思われたほど。しかし後半に2回予定していた2アクセル+3トウを両方とも失敗してしまい、悔いが残る演技となった。演技後に質問したところ、前半に3+3を入れるか、後半に2アクセル+3トウを2回入れるかを検討したのだというが、その選択がはまらなかったということだ。持ち前の表現力を生かすためにも、来季はジャンプの安定に期待したい。
5位 高木謡
5位 高木謡
MFアカデミーに移籍し、大きく進歩した一人だ。昨年6月のアクアカップで演技を観た時と、今日の演技とで全くの別人のように進化していることに驚かされた。短期間にこれほど上達する選手はなかなかいない。
「セカンドトウループが跳べるようになったことと、中庭先生の指導でスケーティングを一からやり直して、スケーティングに気を付けて滑るようになりました。以前の明治神宮では、混んでいることもあってなかなかスケーティングの練習ができませんでした」
いつもニコニコ、笑顔が印象的な選手だが、今季は以前にも増して笑顔が多かったように感じる。
「すごく楽しいシーズンで、笑顔で滑り切れた試合が多かったと思います。次の試合まで時間があるので、それまでにトリプルアクセルや4回転を練習して、来季は試合に入れられるようにしたいです。トリプルアクセルは渡辺倫果さんに言われて、1日1回は締めて跳ぶようにしています」
同じMFアカデミーで練習する渡辺倫果のアドバイスを受けているようだ。来季はシニアの全日本に出ることが目標だというが、もっと大きな活躍を見せてくれるかもしれない。
6位 奥野友莉菜
6位 奥野友莉菜
今季から明治神宮外苑の岡島コーチの指導を仰ぐようになり、急成長を果たした選手だ。
「フリー前半は良かったんですけど、後半で少しミスが続いてしまって、そこだけ少し悔しいです。ただ全日本ジュニアほど崩れていなかったので良かったと思います。移籍してからジャンプが確実に成長したと思うので、そこは手応えを感じますし、スピンも今まで以上に指導してもらっているので、質が上がったと感じています」
今はまだ3+3をプログラムに組み込めていないが、これからのオフに仕上げて、回転不足判定を受けないようにして来季を迎えたい、と話す。ところで岡島チームといえば、樋口新葉が北京オリンピックに出場している。
「いつも近くで樋口さんの練習を見てて、特にフリーの冒頭、手で“おにぎり”を作るところが楽しみです。あれ、きっと太陽だと思うんですけど、それが楽しみです(笑)」
なかなか細かな注目ポイントを教えてくれた。あれはチーム内では“おにぎり”ということになっているようだ。今回、上位陣が木下アカデミー、MFアカデミーばかりで、しかも皆、中1、中2の後輩達。その中で上級生として戦うことに怖さもあったという。
「来季は後輩の有力選手達に負けずに、全ての試合で入賞を果たしたい」
そう力強く宣言してくれた。3+3を武器に仕上げて、更なる活躍を見せてほしい。
7位 櫛田育良
7位 櫛田育良
ペア競技に取り組む予定で名古屋から木下アカデミーへと移籍したのだが、シングル競技での成績が飛躍的に伸び、現在はシングルに専念している。元よりノービス時代からシングルの選手として期待されていた選手だ。今季も良い演技が多かったのだが、全中ではショートでの出遅れが響き、総合6位に留まった。
「フリーはルッツがはまらなくて、3ルッツ+3トウの予定が3ルッツ+2トウになってしまったこと、2本目のルッツがステップアウトしてしまったことが悔しいです。最初のルッツは6分練習の時からはまっていなかったので、他のジャンプは意識を変えてやりました」
この日も美しい演技が印象的で、本人も「段々と感情を込めて演じられるようになった」という。オフにはトリプルアクセルの練習を頑張る、とのこと。来季、試合で挑戦する姿が楽しみだ。
8位 村上遥奈
8位 村上遥奈
オーストラリア出身で、現在は木下アカデミーで練習をしている選手だ。当初、「濱田チームに1ヶ月お試しで入れる」との話を母から聞き、そのつもりで行ってみたところ、1ヶ月ではなくずっとチームにいることになったのだという。
「全中は楽しむことができて、団体行動などいい経験になったし、もう1回来たいな、って思いました。自分はスケーティングとスピンが苦手で、全日本ジュニアからそれを改善しようと頑張ったんですけど、まだまだ追いつかないのでもっと頑張って上達したいです」
全日本ノービス、全日本ジュニアと比較しても、今回の方が良い演技だったと感じたのだが、本人としては、
「スケーティングの面が少し良くなったと思うんですけど、後半のミスが悔しいです。後半最初の2アクセル+3トウでミスをしてしまって、焦ってしまって次のサルコウもタイミングの合わないジャンプになりました」
と反省点が多かったようだ。
「来季はジュニアデビューなので、ジュニアの選手にちょっとでも追いつけるように頑張りたいです。全日本ジュニアでフリーを通過して、フリーでいい成績を残したいです」
今季、推薦出場した全日本ジュニアでは、フリー進出が叶わなかった。その悔しさを晴らし、全日本ジュニアでも上位に入る活躍を見せてもらいたいものだ。
文:中村 康一 / Image Works
中村康一(Image Works)
フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。
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