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チャ・ジュンファンが韓国史上初の快挙!友野一希と三浦佳生も堂々のメダル獲得「存在感を見せられた」(三浦) | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2022 男子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部メダルを獲得した友野一希(写真左)と三浦佳生(写真右)
「ファンや観客のみなさんのために、あらゆるエネルギーと愛を全力で注ぎました」
すべてを惜しみなく尽くし、そして栄光を手に入れた。チャ・ジュンファンが2022年四大陸選手権で表彰台のてっぺんに立ち、韓国人男子シングル選手として、史上初めてISUチャンピオンシップを制した。2009年同大会でキム・ヨナが韓国に史上初めての選手権優勝をもたらしてから、13年後の快挙だった。
金メダルを引き寄せた鍵は、質の高いエレメンツと、濃密なプログラム。ショートプログラム(SP)では、3つのジャンプをすべて綺麗に着地した。ステップシークエンスだけはレベル3に留まったものの、3つのスピン要素はレベル4で揃えた。
ただ4回転1本だった チャ よりも、2度飛んだ友野一希のほうが、当然ながら基礎点では3点近く上回っている。その差を埋めたものこそが、素晴らしく高い出来栄え点(GOE)だった。合計で12.07点。今シーズンの主要国際大会でこれ以上の加点を得たのは、男子ではカナダ杯のネイサン・チェンと、NHK杯の宇野昌磨しかいない。
なにより演技構成点だけで、チャは友野を2.62点も突き放した。弦楽器の音色に見事に共鳴するスケーティングや、難解で、時に予定調和を乱すような大胆なムーブメント。「構成」や「音楽解釈」では、10点満点中9点の評価を下された。
こうしてパーソナルベストを3点以上も更新し、98.96点でSP首位に立った。4回転1本のみの得点としては、2019年欧州選手権のミハイル・コリヤダ100.49点に次ぐ、高いスコアだった。
1.86点リードで迎えたフリースケーティング(FS)でも、やはり チャは自らの強みを最大限に発揮した。冒頭の4回転トーループでは回転不足+転倒があり、中盤でも3回転アクセルで回転不足が取られたものの、ステップやスピンは常に高いレベルを保ち続けた。
最終盤に楽曲が「誰も寝てはならぬ」ーー荒川静香がトリノ五輪で金メダルを獲得したことでもおなじみの、いわゆるフィギュアスケートの王道とも言える曲だーーに変わると、チャの動きはよりいっそう熱を帯びた。全身を柔らかく使ったコレオシークエンスは、壮大さと優雅さを同時に表現し、見る者にまばたきさえ許さなかった。
またしてもGOEと演技構成点でライバルを圧倒したチャは、FSでも首位の得点を叩き出す。総合273.22点もまた、自己ベストを7.79点上回った。
「プログラムの終わりまで、全力で戦い抜きました。メダルのことは考えず、ただ自分のすべてを、これまで練習してきたことのすべてを尽くそうと考えました。でも、やっぱり、金メダルが取れて本当に嬉しい。タリンに感謝ですね。こうして四大陸を開催してくれたおかげで、僕は金メダリストになれたんですから」
3度目の出場でついにつかみとった、四大陸選手権の金メダル。しかし王者にはのんびり感慨に浸っている暇などない。16歳で、母国・韓国で開催された五輪を戦ったチャ・ジュンファンは、20歳で、人生2度目の五輪に乗り込む。
「今日のパフォーマンスは、僕にとって、五輪に向かうための大きなステップです。たくさんの学びがありました。自分に対して自信も得ました。この経験がきっと、この先の僕を、大いに助けてくれるでしょう」
友野一希もまた、3度目の四大陸で、初めての選手権メダルに手が届いた。SP、FS共にパーソナルベストを記録し、堂々たる銀メダリストとなった。
「僕の出来ることを全部出せたと思っています。もちろんミスはありましたが、ミスがあるなかであれだけ演技をまとめられたことに、すごく成長を感じています」
どこか切なく、郷愁あふれるテーマを見事に体現するSP「ニュー・シネマ・パラダイス」は、序盤のジャンプでわずかに乱れた。しかし何事もなかったように、次のエレメンツへと滑らかにつないでみせた。
FSも冒頭のコンビネーションでミスが出た。4回転トーループ+3回転トーループの予定が、1本目で大きくぐらついた。しかし氷に手をつきながらも、体制を立て直し、巧みに転倒を避けると、2回転トーループをねじ込んだ。後の4回転トーループでは転倒もあったが、すぐに流れを取り戻す。
そして「ラ・ラ・ランド」のクライマックスへ。2つのスピンで、興奮はぐんぐん上昇していく。ついには喜びの感情が爆発。躍動感にあふれ、ポジティブなエネルギーが辺り一面に飛び散るような、そんな絶品コレオシークエンスは、タリンでも観客を熱狂の渦に巻き込んだ。
「これほど大きな国際試合で銅より上のメダルを取ることは、多分初めての経験です。自信にもつながりますし、もっともっと上に行きたいという気持ちが、自分の中にあります。この試合の経験を、だからこそ、次のシーズンに活かしていきたい。もっともっと成長したい」
日本男子は4大会ぶりに、2人を表彰台に送り込んだ。初メダルを手にますます奮起する23歳友野に続いて、3位に飛び込んだのは、ISUチャンピオンシップ初出場の三浦佳生だった。
今季の全日本ジュニア王者にして、全日本シニア4位の16歳は、難構成で堂々と戦い抜いた。SPはハイスピードで駆け抜け、4回転を2本きっちり飛んだ。参加全17選手中、同様の構成で挑んだのはわずか3人で、2本ともに成功させたのは友野と三浦だけだ。
FSでは前日に脚の肉離れがあったため、予定していた4回転ループを回避し、本数も4本から3本に減らした。それでも痛みと不安の中で、「本番集中して4回転3本締めれた」ことに、本人は満足している。一方で共に戦った先輩たちがスピンやステップで「当たり前にレベルを取る」のを目の当たりにし、「自分にはまだそれがない。それを許せるのは今回だけ」と、今後の課題も見つけた。
ただ海外での試合は2年4カ月ぶりで、シニアの国際公式戦は今季のNHK杯に続き2度目の三浦にとって、「存在感を見せられた」ことは大きい。3月にブルガリアで開催される世界ジュニア選手権に向けて、確かな一歩となったはずだ。
同じく初出場の19歳三宅星南は4位に食い込んだ。ジャンプは時に苦しみながらも、必ず着氷し、膝や体幹の強さを証明した。もちろん美しく飾る伸びのあるスケーティングも、耽美的で熱情たっぷりのプログラムも、……さらにはSP・FS共に正統派ど真ん中の王子様衣装も、世界を魅了したに違いない。
元・氷上の王子アレクセイ・ウルマノフの教え子、17歳のミハイル・シャイドロフは5位入賞。回転軸が細く美しい4回転ジャンプで高得点をマークすると共に、SPはとてつもなくキュートな、FSはなにやら独創的なプログラムでも目を引いた。
また大会後に3度目の五輪出場を決めたブレンダン・ケリーと、チャ・ジュンファンと共に韓国代表として五輪に向かうイ・シヒョンが、6位と7位に続いた。アメリカ代表は3人揃ってジャンプで苦労し、5大会ぶりに表彰台を逃した。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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