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美しく光り輝いた三原舞依が2度目の四大陸選手権制覇「一番嬉しい金メダルです」 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2022 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部三原舞依
あらゆる悲しみ、苦しみ、恐れ……を味わい、夢やぶれた後にも、強く崇高な意志は残るのだ。2022年四大陸選手権で、氷の上に三原舞依が描きあげたのは、まるで彼女の人生そのものだった。独特の柔らかな雰囲気の中に、凄みさえ潜んだ。解き放たれ、喜びの涙を流した三原は、美しく金色に光り輝いた。
「2017年大会の金メダルとは、全く違うものです。5年前はただ、わくわく楽しくて、思い切って滑っただけでした。でも今回は本気で金を目指し、自分にプレッシャーをかけて臨みました。だからこそ、一番嬉しい金メダルです」
極度の緊張に負けなかった。「滑り終えて、お客様が拍手する音が聞こえるまで、緊張がとけなかった」と振り返ったほど、ショートプログラム(SP)の三原は緊張し、同時に集中していた。ジャンプはすべて綺麗に降りた。丁寧で、緩急のあるスケーティングと、指先にまで意味をもたせたムーブメントで、すべての要素でレベル4+出来栄え点(GOE)による加点を得た。自己ベスト72.62点の高得点と共に、大会を首位で折り返す。
「もちろん金メダルを目指しています。その結果を得るために必要なのは、完璧なフリーをすること。自分の演技にしっかり集中し、やるべきことをやり……全日本での悔しさを振り切れるよう、力強く滑り切りたいと思っています」
フリースケーティング(FS)では、緊張は解けるどころか、さらに強まったという。「始まる前から涙をこらえていた」ほどに。絶好調で乗り込んだはずの全日本選手権で、ミスを繰り返し、4位に沈んだ記憶が、三原を不安にさせた。
それでも自分に打ち勝った。プログラム冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループは落ち着いて決めた。続く2回転アクセルは、今シーズン何度かミスを犯していたが、飛び出しを意識的に行うことで難なく成功させた。こうして勢いに乗った後も、三原はまるで命がけで演技を続けた。
あまりに全身全霊だったせいかもしれない。そこまでノーミスで来ていながら、締めくくりのコンビネーションスピンでミスを犯した。ブレードを持ちそこね、ビールマンスピンの態勢に入れなかった。もはやふらふらで、立っていることすら辛い状態のようにも見えた。それでも三原は執念で耐えた。片足で回転を保ち続け、大きな失点を避けた。
すべてを出し切った結果は、145.41点という高いパーソナルベストに反映された。合計でもやはり自己最高の218.03点をマーク。日本女子選手としては今シーズン2番目に高い得点で、堂々1位を守り切った。
「最後のスピンのせいで、順位が下がったり、得点が出なかったらどうしよう……と、得点待ちの時はただただ祈ってました。でも、今までより上の点数をいただけて、すごく嬉しくって……もう、本当に、嬉しくって、嬉しくって。気づいたら泣いてました」
三原にとっては2017年初出場初優勝に次ぐ、2度目の四大陸選手権制覇。全4度の出場をすべて表彰台の上で終えたことになる。また日本女子が6大会連続で四大陸金メダルを持ち帰り、日本フィギュア界の層の厚さを改めて見せつけた。
韓国のイ・ヘインにとっても、この四大陸はちょっとしたリベンジの機会だった。2週間前の韓国選手権では3位に終わり……韓国の五輪代表2枠から外れた。しかも2年前に同じタリンで開催された世界ジュニア選手権で、SPを2位で折り返しながらも……FSでのミスで5位に沈んだ、そんな嫌な記憶を払拭したかった。
韓国ナショナルと比べて、SPではジャンプ構成を入れ替えることで、イは勢力的に点を取りに行った。FSは完全に同じ構成ながら、エレメンツひとつひとつの質を上げた。悠々と大きなジャンプに、長い手足を存分に活かした滑らかなステップやスピンは、どれも丁寧に心をこめてこなした。おかげで韓国選でのGOE加点がトータル9.67点だったのに対し、四大陸では13.27点と大きく伸びた。
三原と同じように、FS演技終了の瞬間には、涙がこぼれた。キス&クライで自己ベストを10点以上も更新する総合得点が発表されると、興奮と喜びは隠せなかった。
「ジュニア世界選の嫌な記憶が残る場所で、素晴らしいパフォーマンスを成し遂げました。だからこそすごく嬉しいんです。あの時は悲しみの涙を流しましたが、今回は喜びの涙です」
五輪シーズンに加えて、新型コロナウイルス禍による様々な制約で、2022年四大陸に五輪代表を送り込んだのは韓国とオーストラリアだけ(オーストラリアは大会終了後に正式発表)。そんな北京行きを控える数少ない選手の中で、韓国五輪代表のキム・イェリムが3位に食い込んだ。
SPでは冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループに「エッジ不明瞭」記号が付いた。しかしFSではきっちりミスを修正。まったく同じコンビネーションを完璧に成功させた上に、同エレメンツではSP・FS通して、全女子で最も高いGOEも稼ぎ出している。
イとキムがISU国際選手権で人生初のメダルを手に入れた一方で、もう1人の韓国五輪代表、ユ・ヨンは前回大会に続く表彰台乗りは果たせなかった。SPは表彰台まで僅差の4位で折り返しながらも、FSは7位と苦しみ、総合では6位に後退さえした。
最大の敗因は、韓国選SPで成功させた3回転アクセルを、今大会では決められなかったこと。SPでは2回転になった上にダウングレードと判定され、FSでは転倒とダウングレード。プログラム後半の2回転アクセルさえ、感覚が崩れてしまったのか、1回転と失敗に終わった。ユの勇敢なる挑戦が、北京の大舞台で実を結ぶよう期待したい。
逆に日本の松生理乃と横井ゆは菜は、SPは苦しみながらも、FSでは目の覚めるような演技を見せた。宮原知子の代打で急遽出場が決まった横井は、SPではジャンプに苦心し、まさかの12位に沈んだ。
しかしFSでは、フラストレーションをすべてぶつけるような、ダイナミックな演技を実現させた。冒頭の大きな2回転アクセルは、誰よりも高いGOEを叩き出した。なにより構成を少し組み換えた。3つのコンビネーションジャンプを基礎点が1.1倍に上がる演技後半にすべて移動し、得点増を大胆に狙った。フレディ・マーキュリーにならって最後に突き上げられる拳は、横井自身の真のガッツポーズのようだった。自己ベストを5点近くも上回り、総合7位まで駆け上がった。
松生はSPを8位で終えた。昨季の全日本ジュニアチャンピオンは、ジャンプでミスが重なり、ベストの出来にはまるで程遠かった。
気持ちを切り替えて望んだFSで、凄まじい底力を発揮した。序盤のジャンプは「エッジ不明瞭」と判定されたが、いつも通り3つまとめて演技後半に組み込んだコンビネーションジャンプは、すべてパワフルに飛びこなした。かと思えばSPで見せたチャーミングな魅力とは対照的に、FSではしっとりとした美しさも披露した。ピアノの音色に乗って軽やかに舞うステップシークエンスも、ボーカルに合わせた伸びやかなコレオシークエンスも、当然のように高いGOE評価に跳ね返ってきた。
FS142.05点という、本人もコーチも驚くほどの高いパーソナルベストは、FSだけなら3位の得点。銅色のスモールメダルを授与され、総合では5位。ISU国際選手権デビューを笑顔で締めくくった。
また松生と同い年、17歳のオードリー・シンは、SP・FSともにクリーンにまとめた。パーソナルベストを2本並べ、やはり初めてのISU国際選手権を4位で終えた。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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