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ロシアの18歳マルク・コンドラチュクがプレッシャーとライバルに打ち勝つ「誰もがっかりさせたくなかった」 | ISU欧州フィギュアスケート選手権2022 男子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部欧州王者に輝いたマルク・コンドラチュク
開幕前にはロシア女子の表彰台独占が大いに期待されたが、大会初日、真っ先にトップ3に並んだのはロシア男子の方だった。
全出場選手33人のうち、ショートプログラム(SP)を4回転2本の構成で挑んだのは7人。その中で、全てのジャンプを成功させたのは、2003年生まれのロシア18歳トリオだけ。100点の壁こそぎりぎりで破ることはできなかったが……アンドレイ・モザリョフが99.76点という高得点で首位に立ち、マルク・コンドラチュクが99.06点、エフゲニー・セメネンコが99.04点で続いた。
稀に見るほどの僅差でロシア勢が睨み合い、4位以下には6点以上の差を押し付けた。4回転は2本とも成功させたものの、今季ロシア杯覇者のモリシ・クヴィテラシヴィリは3回転アクセルの回転不足が点数に響いた。ダニエル・グラッスルは、高難度の4回転ルッツで攻めたが、やはり4回転1本分の遅れをまるまる喰らった。スピンとステップでは最高レベル4と高い出来栄え点を着実に積み重ね、演技構成点では誰よりも高い得点を得たデニス・ヴァシリエフスは、トップ3人とは約9点差の6位でSPを折り返した。
最終的に金銀銅を勝ち取ったロシア女子に対して、ロシア男子は2人が大きく崩れた。表彰台を守りきったのは、コンドラチュクただ1人だけだった。
五輪代表の最終選考を兼ねる極めて重要な大会だった。北京行きを確実視されていたのは、怪我で急遽欠場を決めたミハイル・コリヤダのみ。おかげで国内選手権2位ながら補欠に回されていたモザリョフが、急遽招集され、残す2枠を3人が直接対決で奪い合う羽目になった。若い選手たちの両肩には、メダルと枠争いという、2つの重圧がのしかかった。
ロシア選手権はSP1位スタートながら、FS5位で表彰台から転がり落ちた時のように……セメネンコはあまりにもミスを多発しすぎた。7回のジャンプ要素のうち、予定通りにこなせたのはたったの3回。もちろん「五輪のことを少し考えた」という。「でも、できる限り、余計なことを考えないよう、自分のスケートだけに集中するよう」努力もした。最後まで集中力を切らさず、全力を尽くす姿勢は勇ましかった。しかしFSでは9位に沈み、総合は5位で終えた。
2年前に同じタリンで、逆転でジュニア世界一に輝いたモザリョフは、今回は逆転五輪行きの可能性に神経質になりすぎた。「選考されるためにはすべてをクリーンにこなさなければならなかった。考えないようにしていたけれど、不安だった」と演技後に打ち明けたが、残念ながらクリーンには程遠かった。4回転サルコウを飛ぶはずだった2本目のジャンプは、3回転になった上にダウングレード判定を受け、予定より10点近くも失った。2本の3回転アクセルでもエラーを取られた。初めての欧州選手権で、初優勝のチャンスはモノにできなかった。FS6位で、総合は4位。
ただ新生ロシアチャンピオンのコンドラチュクだけが、プレッシャーとライバルに打ち勝った。4回転3本はすべて成功させた。なによりプログラム後半に詰め込んだ難度の高いジャンプ要素3連続を、いくつか取りこぼしがあったロシア選手権とは異なり、すべて完璧に飛んだ。厳粛さと雄々しさがあふれる「ジーザス・クライスト・スーパースター」は、観客の熱気を煽り、演技構成点ではずば抜けて高い評価を得た。
「自分の身に起こったあらゆることを、いまだに信じることができません。少しショック状態に陥ってます。だって緊張感があまりにも強すぎましたから。でも僕は、誰もがっかりさせたくなかったんです。コーチも、自分自身も、連盟も。僕はここでよいスケートを披露しなければなりませんでした」
ISU欧州フィギュアスケート選手権2022 男子シングル 表彰台3選手
初めての欧州選手権で、パーソナルベストを一気に36点以上も更新し、コンドラチュクは栄冠をつかみ取った。2年連続で母国ロシアに男子シングルの金メダルをもたらし、自身の北京五輪ロシア代表入りの権利も、ほぼ確定させた。
すでに欧州選4位と世界選12位の経験を持ち、北京五輪行きをもとっくに内定していたグラッスルは、SP5位から表彰台2番目の位置へと駆け上がった。
FS「アルマゲドン」では誰よりも難しい構成で挑んだ。SPではたった1本に留まった4回転を、FSでは冒頭から基礎点の高いルッツ、フリップ、ループを次々と成功させた。終盤の3回転ルッツで着氷後に手をついた以外は、大きなミスもなく、技術点は全参加中唯一(過去3シーズン全体を通してもヨーロッパ選手としては唯一)の100点の大台に乗った。
ただ演技構成点だけでコンドラチュクから8点近く引き離され、上位6人の中では最も評価が低かった。「1度に1歩ずつ。すべては少しずつ磨き上げられていくもの」と本人も語るように、19歳グラッスルは、この先はトータルパッケージ目指して進化していく。
師匠ステファン・ランビエール仕込みの華麗なスピンや緩急あるステップを操り、演技構成点でも常々高い評価を得てきたヴァシリエフスは、今大会では、逆に技術点での成長を証明した。(4分の1回転不足を取られたとはいえ)冒頭で苦戦してきた4回転を見事に降りると、すべてのジャンプをきれいに着地。まさしく本人が振り返るように、「自分にできる最大限のパフォーマンスを成し遂げた」。
SP6位から順位を3つ上げた。ヴァシリエフスにとっても、祖国ラトビアにとっても、記念すべき初めての欧州選手権表彰台だった。「喜びと、ポジティブさと、自信を感じる」と、22歳は誇らしく語る。
クヴィテラシヴィリはFSでもジャンプを安定させられず、総合6位で終えた。2年前のSP落ちの悪夢を拭い去り、ケヴィン・エイモズはFS4位で晴れやかに大会を終えた(総合7位)。31歳ミハル・ブレジナも、SP15位と大きく出遅れながら、FS5位と巻き返し総合10位。自身14度目にして、「人生最後」の欧州選手権を、笑顔で立ち去った。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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