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北京表彰台を占う2年ぶりの欧州選手権。ロシア勢の牙城は守られるか、それとも・・・ | ISU欧州フィギュアスケート選手権2022 プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部欧州フィギュアスケート 女子シングル 前回大会表彰台
北京表彰台を占う2年ぶりの欧州選手権。ロシア勢の牙城は守られるか、それとも・・・ | ISU欧州フィギュアスケート選手権2022 プレビュー
4年に1度の特別なシーズンの、2年ぶりの欧州選手権。ある選手にとっては五輪前の最後の大切な仕上げであり、またある選手にとっては、その先へと続く新たな第一歩となる。130年以上の歴史を誇る伝統ある大会は、ファンにとっても北京表彰台を占う上で絶対に見逃せない大会だ。
なにしろフィギュアスケート超大国ロシアが、ほぼ正代表をエストニアに送り込む。そのロシアは2年前の前回大会で、4種目完全制覇を成し遂げ、全部で12の表彰枠のうち10を独占した。2022年大会もまた、感染問題や怪我さえなければ、おそらく3種目はロシアの手に落ちる。女子とペアは表彰台独占さえ現実的だ。男子の出来次第では、再びすべてを手に入れることだって可能かもしれない。
女子シングル
ロシアが無敵の7連覇中。しかも過去7年間で、ロシア「以外」で表彰台に割り込めたのはたったの2人。カロリーナ・コストナーとヴィヴェカ・リンドフォース2人だけ。
その7連覇は、6人の異なる選手でつないできた。偉大なる先輩イリヤ・スルツカヤが、たった1人で欧州7勝した15年ほど前とは、完全に時代が変わったのだ。現代ロシアでは若い才能が次から次へと開花し、先人を軽々と乗り越えていく。今大会もやはり、ロシア3人の誰が勝とうとも、新たな欧州女王が君臨することに変わりはない。
中でも圧倒的な優勝大本命は、カミラ・ワリエワだろう。3回転アクセルと4回転2種類を完璧に飛ぶ上に、しなやかな肢体でスピンやステップも優雅にこなす。演技構成点でも10点満点が並ぶほど、プログラムの完成度も高い。今シーズンすでに歴代最高得点を3度塗り替え、当然ながら1試合たりとも落としていない。恐るべき15歳の、記録更新の旅はあとしばらくは続きそうだ。
昨春すでに世界の頂点に上り詰めた優雅なアンナ・シェルバコワと、時にFSに4回転5本を組み込む勇敢なアレクサンドラ・トゥルソワも、2大会連続の表彰台乗りはほぼ間違いなし。ただロシア選手権で少々不調だったシェルバコワには、大会後に発表される五輪チーム入りを確実にするためにも……順位以上に、内容の伴う質の高い演技が求められる。
今季イタリア杯SPではそのシェルバコワを下して首位に立ち、トータルでも3位に食い込んだルナ・ヘンドリックス(ベルギー)は、再び衝撃を巻き起こせるか。2年前の欧州選では、ロシアを除く選手の中で最上位=4位につけたアレクシア・パガニーニ(スイス)にも、新たな好成績が期される。
またジュニア時代には輝かしい成績を残しながら、層の厚いロシアで上手く頭角を表せずにいた19歳アナスタアシヤ・グバノワは、今季ジョージアに国籍を変え生まれて初めての欧州選に挑む。アメリカからキプロスに所属を移して2季目のマリレナ・キトロミリスは、今季オータム・クラシックで並み居る実力者を抑えて、キプロス人として史上初めてISU国際大会を制した17歳。小さな国の、新しい魅力の開花も、見逃したくはない。
男子シングル
欧州フィギュアスケート 男子シングル 前回大会表彰台
ロシアの完全支配を食い止められるか。グランプリ大会・ロシア杯を制したモリス・クヴィテラシヴィリ(ジョージア)や、イタリア杯2位のダニエル・グラッスル(イタリア)は、その高いジャンプ能力で表彰台のてっぺんへと駆け上がる可能性を有している。
2年前にダントツの優勝候補と目されながらも、SPで3本すべてのジャンプを失敗し、FSにすら進めなかったケヴィン・エイモズ(フランス)は、あの日の悪夢を拭い去らねばならない。5度の欧州選参戦で最高位4位、今季は4試合出場しすべて4位で終えたデニス・ヴァシリエフス(ラトビア)は、あと一方上へと踏み出せるか。31歳ミハル・ブレジナ(チェコ)は自身14度目の欧州選へ。
表彰台の経験を持つマッテオ・リッツォ(イタリア)は「技術的な問題」で欠場を発表。また本来ならロシアエース格のミハイル・コリヤダは、右足の故障で棄権を余儀なくされた。つまり国内選手権覇者マルク・コンドラチュクに、カナダ杯3位エフゲニー・セメネンコと、急遽代替出場が決まったアンドレイ・モザリョフという欧州選手権初出場3人組が、ロシアの名誉をかけて戦う。
ペア
いずれ劣らぬ優れた技術力と、きらめく個性を誇るロシア3組の表彰台独占が極めて濃厚。世界チャンピオンのアナスタシア・ミーシナ&アレクサンドル・ガリャモフ組、欧州ディフェンディングチャンピオンのアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組、そして優勝2回を含み6大会連続表彰台に乗り続けているエフゲーニヤ・タラソワ&ウラジーミル・モロゾフ組に、肩を並べられるペアなどこの大陸には存在しない。
2大会連続4位で、今季も実力的に見て4番手争い最有力候補のはずだったニコーレ・デッラモニカ&マッテオ・グアリーゼ組は、五輪準備に集中するため欧州選手権の欠場を選んだ。
するとロシアの次の座を射止めるのは、ロシア杯銅メダルの経験を持つドイツのミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ&ノーラン・ジーゲルト組か。昨五輪覇者ブリューノ・マッソに師事するミリアム・ツィーグラー&セヴェリン・キーファー組(オーストラリア)は、キャリア最後のシーズンに初の欧州トップ5入りを実現したい。
ジュニア時代にミーシナ(&ウラジスラフ・ミルゾエフ組)と競い合い世界チャンピオンに君臨したマルティン・ビダジュは、パートナーとなって3季目のイェリザヴェタ・ズコヴァと共に、5年ぶりの欧州選手権を迎える。
最年長現役ペアスケーターの41歳ゾーイ・ジョーンズとパートナーのクリストファー・ボヤジ(イギリス)は、無念にも、コロナ陽性でユーロ棄権を余儀なくされた。
アイスダンス
カナダで練習を積むガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(フランス)が、無用な感染機会を減らすために欧州遠征を取りやめた。つまり現役世界王者のヴィクトリヤ・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組(ロシア)との、2020年欧州選以来となる直接対決は、北京五輪までお預けだ。
おかげでロシア選手権ではRD1位で折り返しながら、カツァラポフが背中の痛みを訴え途中棄権を選んだロシア組にとっては、余計なストレスなく、マイペースで最終調整に臨める好機会となるかもしれない。
逆に2番手以下の争いは、全4種目中で最も熾烈。ロシア2番手のアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組は、過去5度の欧州表彰台経験を持つ者として、欧州2番手の座も譲りたくないはずだ。
一歩ずつ地道に経験と名声とを積み上げてきたシャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ組(イタリア)は、今季グランプリシリーズで2位2回と、高く安定した実力はもはや揺るぎがない。シーズンごとにぐんぐん実力と順位を上げているライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組(イギリス)は、もはや表彰台に相応しいレベルに達している。
また国籍問題で五輪出場は叶わなかったアリソン・リード&サウリウス・アンブルレヴィチウス組(リトアニア)にとっては、きっとこの欧州選手権こそが「本番」なのだ。
なによりアイスダンスで最も注目すべきは、サラ・ウルタド&キリル・ハリャヴィン組vsオリヴィア・スマート&アドリア・ディアス。そう、スペインの五輪1枠を巡る、2組のハイレベルな激突だ。今季のフィンランディア杯、国内選、欧州選で獲得した得点のトータルが高い組だけが、北京行きの切符を手にすることができる。現時点での集計はスマート&ディアス組の8.37点リード。運命の女神はどちらに微笑むか。フリーダンスの結果が出るまで、目が離せない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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