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マライア・ベルが25歳の初戴冠「願い続ければ、夢は叶えられるもの」 | 全米フィギュアスケート選手権2022 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部マライア・ベル
音楽の聖地ナッシュビルに「ハレルヤ」が鳴り響き、アリーナ全体を陶酔させた。伸びやかで、晴れやかで、喜びに満ちた……そんな自らの魅力を最大限に引き出し、そして、マライア・ベルは一番高い場所へとたどり着いた。25歳の初戴冠。9回連続9回目の挑戦にして、念願の全米選手権優勝を果たした。
「ついにナショナルチャンピオンになれて本当に興奮しています。決して完璧ではありませんでしたが、最後まで戦い抜きました。1点1点を獲りにいきました。なにより観客のみなさんの素晴らしい後押しに助けられました」(ベル)
ショートプログラム(SP)は、文字通りクリーンな演技を実現させた。すべてのジャンプで出来栄え点を積み重ね、スピンやステップはことごとくレベル4の評価。2位カレン・チェンをほんの1点差で上回り、生まれて初めてSP全米首位に立った。
本人も語るように、FSは必ずしも思い通りの演技ができたわけではない。冒頭のジャンプコンビネーションは3-3の予定が3-2となった。後半のコンビネーションは予定より2本目の難度を上げて臨んだものの、上手く繋げられず、シークエンス(+SEQ)扱いで減点された。
トータル216.25点は、たしかに優勝者の得点としては、2017年全米以来の低い得点かもしれない。それでも緊張しすぎて、レベルや演技構成点を大きく落とした4年前の失敗を、ベルは2度と繰り返さなかった。自らの長所である瑞々しくポジティヴな感情あふれる表現力も、アメリカ女子の伝統とも言える伸びやかなスパイラルも、美しく「ハレルヤ」を彩った。
最後のジャンプでは着氷と同時に小さなガッツポーズを握りしめ、キス&クライでは喜びの涙が瞳にあふれた。
「年齢なんて関係ありません。それは単なる数字に過ぎませんから。願い続ければ、夢は叶えられるもの」(ベル)
1927年大会に次ぐ史上2番目に年長の全米女子となったベルは、約1ヶ月後には、1928年以来最年長のアメリカ五輪代表女子スケーターとして北京のリンクに上がる。
カレン・チェン
17歳で全米女王の座に上り詰め、18歳で初五輪を体験しているカレン・チェンは、今大会に向け大きな決断を下した。15歳のジュニア時代にも使用した楽曲「レクイエム・フォー・ア・ドリーム」に、SPを作り変えたのだ。急な変更にも関わらず、冒頭のコンビネーションジャンプで少々出来栄え点が減点された以外は、ノーミスでまとめあげた。もちろん7年前とは比べもにならぬほど複雑なつなぎを散りばめ、なにより成熟したドラマチックな表現力を披露。演技構成点では全参加選手中で最高得点を叩き出した。
一方のFSは昨季から持ち越しの「梁山伯と祝英台」を、まさに蝶のように優雅に舞い踊った。回転不足を含むジャンプの出来栄え点減点は複数あったが、「フリーの出来には最高に満足してます!」と語る。金、銅、ピューターとこれまで3色のメダルを持ち帰ってきた22歳にとっては、初めての銀色の名誉。同時に2度目の五輪参戦も手に入れた。
回転不足+転倒に終わった冒頭の3回転アクセル以外は、すべての要素をしっかりまとめてSP3位で折り返したアリサ・リウは、残念ながらコロナウイルス陽性でFS棄権に追い込まれた。ただ幸いなことに、五輪代表に関しては「救済措置」が発動された。過去2度ナショナル制覇を達成した16歳は、チャレンジャー大会2勝とチャレンジャーシリーズ総合優勝の実績を考慮され、見事に五輪3枠目に滑り込んだ。
代わって表彰台3番目の段に駆け上がったのはイザボー・レヴィトだった。昨ジュニア全米覇者は、初めてのシニア全米挑戦で高いポテンシャルを証明した。イタリアの血を引き、ロシアコーチの教えを受ける14歳は、繊細で優雅にして、チャーミングかつノーブルな雰囲気で観客を魅了した。ジャンプは着地姿勢が美しく、丁寧なスピン&ステップはSP・FSともすべてレベル4を揃えた。
また3年前に全米ジュニアを制した20歳ガブリエラ・イッゾがSP7位からトータル4位にジャンプアップ。やはり2年前の全米ジュニアチャンプの16歳リンジー・トルグレンは、FSでは全参加選手中唯一3回転アクセルに挑み(ダウングレード+転倒)、5位で大会を締めくくった。SP時すでに体調不良を覚え、最終的にコロナウイルス陽性でFS棄権に泣いたアンバー・グレンも含め、3選手は五輪・世界選手権補欠に指名された(第1補欠トルグレン、第2グレン、第3イッゾ)。またイッゾとトルグレンは、9位スター・アンドリューズと共に四大陸選手権に参戦する。
今大会に挑んだ全16選手中、26歳最年長のグレイシー・ゴールドは、かつての美しい輝きを放った。2度アメリカの頂点に君臨した女王にとって、摂食障害からのカムバック3季目。予選を勝ち抜き、たどり着いた人生8度目の全米本戦で、希望と感動を世界中のファンに届けた。ただしSP6位で折り返したものの、FSはジャンプに苦しんだ。それでも復帰後自己最高位の10位で大会を去った。「最後のシーズンには『エデンの東』を緑のドレスで踊りたい」と常々語っていたそうだけれど、もしかしたらゴールドにとって、この2022年全米選手権がキャリア最後の大舞台だったのかもしれない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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