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栄光の歴史を現在進行系で紡ぎ続けるロシアの国内ナンバーワンを決める争い | ロシアフィギュアスケート選手権2022プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部アンナ・シェルバコワ / ミハイル・コリヤダ
綺羅星のごとく。女子、ペア、アイスダンスと3種目の現役世界チャンピオン、さらに男子を加えて4種目の欧州チャンピオンを有する。その層はとてつもなく厚い。今季グランプリファイナルが開催されていれば、シニアで24枠中11人/組、ジュニアでは15人/組を送り込んだはずだった。
進化と増殖は留まるところを知らず、栄光の歴史を現在進行系で紡ぎ続ける。そんなロシアの国内ナンバーワンを決める争いは、自ずと国際大会以上の熾烈さと興奮をはらんでいる。
女子シングル
今大会のメダルの数も、五輪や欧州・世界選手権の出場枠も、それぞれ3つしかない。ロシア女子にはまるで足りない。
たしかに美しい3回転トリプルを武器に持つ欧州女王アリョーナ・コストルナヤと、シニア国際大会デビューとなるアメリカ杯でいきなり2位表彰台に飛び乗った15歳ダリア・ウサチョワは、怪我のため残念ながら今大会の欠場を発表した。
それでも限られた席以上の、強豪たちがひしめいている。現役世界チャンピオンのアンナ・シェルバコワを筆頭に、女子4回転時代の牽引者アレクサンドラ・トゥルソワ、しなやかに進化を続けるエリザベータ・トゥクタミシェワ、さらにはシニア1年目でグランプリファイナル出場権を勝ち取ったマイア・フロミフに、なにより今季歴代最高得点を3度も塗り替えたカミラ・ワリエワ!
ワリエワがいつも通りの演技さえ披露できれば、悠々と金メダルを持ち帰れるはずだ。なにしろ15歳は今季ここまで敵なし。3回転アクセルと4回転2種類を軽やかに飛びこなし、流れるようなスピンやステップは軒並みレベル4が並ぶ。FS「ボレロ」では成熟した表現力を披露し、演技構成点では時に10点満点さえ飛び出す。まさに無双。
国内選手権特有の緊張感を、シェルバコワは飼いならしている。目指すは21世紀初の女子4連覇。ところで11月上旬のイタリア杯は、SPをまさかの3位(トータル1位)で終えた。大会後には急遽プログラムを変更。2週間後のフランス杯では、新プログラムで、堂々1位を2本揃えた。ロシア選手権には、さらにプログラムに磨きをかけて乗り込む。
シニアでの転戦も11年目を迎え、グランプリファイナル・欧州選・世界選のすべてを勝ち取ってきたトゥクタミシェワだが、不思議なことにロシア選手権優勝は2012年末の1度だけ。表彰台からも2014年以来遠ざかっており……結果的に五輪出場を1度も果たせていない。25歳の今年こそ。そんな思いは強い。
アメリカ杯を制した後、NHK杯を怪我で欠場したトゥルソワは、果たして調子が完全に戻っているだろうか。今季もFSは、予定通りなら4回転5本という超高難度の構成だ。15歳フロミフも、FSは4回転2本を飛ぶ。
シェルバコワが初めてロシアの女王の頂点に君臨したのは14歳だった。今季だってもしかしたら、いまだ私達の知らない恐るべき少女が、突如としてヒエラルキーをぶち壊してしまうことだってあるかもしれない。今季のジュニアグランプリシリーズでそれぞれ1大会ずつ制したアデリア・ペトロシアン14歳とソフィア・ムラヴィエワ15歳も、シニア女子の競演に参戦する。
男子シングル
北米や日本に成績面では少々押され気味ではある。それでも滑らかなスケーティング技術と高い芸術性、そして醸し出される独特なノーブルさが、ロシア男子をたまらなく魅力的な存在にしている。
その代表格こそがミハイル・コリヤダだろう。今季はなにより、ロシアが誇るバレエの魅力を最大限に取り込んだ。ロシアが生んだバレエダンサー、ミハイル・バシリニコフへのオマージュを込めて、SPは「くるみ割り人形」を選択。またロシア選手権の機会に、FSを昨季のプログラムに戻す。やはりロシア人バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの伝記映画のテーマ音楽「ホワイトクロウ」だ。SPは凛々しく気品高く、FSは繊細で感傷的。いずれも指先まで神経の行き届いた演技は、ただただ美しい。
今季イタリア杯とロシア杯でいずれも銀メダルを獲得したコリヤダを除くと、表彰台争いは極めて混沌としている。アメリカ杯銅メダリストのエフゲニー・セメネンコと、グランプリ大会で4位×2度のマーカル・イグナトフが、今季の戦績的には一歩リードか。2年前の世界ジュニア王者アンドレイ・モザリョフは、フランス杯はジャンプに苦しみSP9位で折り返したものの、FSは2位と底力の高さを再証明。さらには2季前に欧州選2位に飛び込んだアルドゥール・ダニエリヤンや、台頭著しいマルク・コンドラチュクも見逃せない。
もちろんドミトリー・アリエフやアレクサンドル・サマリンという2人のオリンピアンも、本来の実力を発揮できさえすれば、表彰台復帰は十分にありえる。
ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ / アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー
ペア
女子にも負けないくらい、国内の争いが熾烈だ。なにしろ今季グランプリファイナル進出が4組。さらにグランプリ大会で2度ずつ表彰台に乗ったのがプラス1組、表彰台1度がプラス1組。ついでにジュニアグランプリファイナル進出も4組。ロシアの頂点に立てば、世界の頂点も自ずと見えてくる。
不思議なことに、現役世界チャンピオン組のアナスタシア・ミーシナ&アレクサンドル・ガリャモフは、いまだロシアチャンピオンに君臨したことはない。それどころか表彰台にさえ登ったことがない。順番は逆になったけれど、今年こそは母国で栄光を勝ち取りたい。今季ここまで国際大会3戦は負け無しで突っ走っている。
ミーシナ&ガリャモフがダイナミックで圧倒的な技術力を誇るのだとしたら、現役欧州チャンピオン組のアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキーは滑らかなスケーティングとエレガントな足さばきが魅力。元世界ジュニアチャンピオンのダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキンは、見たこともないようなアクロバチックなつなぎをどんどん突っ込んでくる。
こんな若い3組にまだまだ座は譲らない、とばかりに、世界選表彰台3度・欧州表彰台6年連続のエフゲーニヤ・タラソワ&ウラジーミル・モロゾフも進化を続ける。今季からエテリ・トゥトベリーゼに師事したベテラン組は、持ち前の完璧な技術に加え、表現力に深みを増した。
演技前の小芝居も表情豊かな踊りも魅力的なユリア・アルチェミエワ&ミハイル・ナザリチェフや、ロシア杯では大きな失敗がありながらも3位初表彰台を射止め、将来性を感じさせたヤスミナ・カディロワ&イワン・バルチェンコも、クリーンな演技で大躍進の可能性を秘めている。
アイスダンス
カップル結成6年目で欧州チャンピオンの座に上り、7年目の昨季ついに世界の頂点を極めたヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ。今やトレードマークともなった、胸を熱くするような幸せオーラは、今シーズンも氷の上にあふれている。FDの「ラフマニノフピアノ協奏曲2番第2楽章」の美しくセンチメンタルな音色には、伸びのある2人の滑りがよく似合う。
2年前のロシア選以来、連勝街道を続けている同組に、おそらく今大会も敵はいない。むしろシニツィナ&カツァラポフの視線の先にあるのは、3週間後の欧州選手権、さらには1ヶ月半後の北京五輪。特に昨シーズン大会から離れていたフランス組ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロンとの、2年ぶりの直接対決をにらみながら、ハードな練習を続けているはずだ。
シニツィナ&カツァラポフが棄権した昨大会で、初優勝を飾ったアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキンは、今は大改造の真っ最中。今季のグランプリを2試合ともに3位で終えた後、コーチ陣にメダル請負人ニコライ・モロゾフを迎え入れた。目標はレベルや出来栄え点のアップによる得点向上。ロシア選手権ですぐにでも結果を出したい。
本来ならば3番手の実力を持つティファニー・ザゴルスキー&ジョナサン・ゲレイロは、相次ぐ体調不良で今季いまだ1試合も参戦できていない。ロシア選手権でどれだけのパフォーマンスが見せられるだろうか。もしも本調子を取り戻せていない場合、昨大会3位のアナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシンや、ワルシャワ杯を制した若きディアナ・デイヴィス&グレブ・スモルキン等々の台頭もありえそうだ。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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