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ルールの復習と今シーズンの注目選手 | フィギュアスケーターのオアシス♪ KENJIの部屋
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部KENJIの部屋
フィギュアスケートファンの“もっと選手の素顔を知りたい!”という熱い想いに応えるべくスタートした、「フィギュアスケーターのオアシス♪ KENJIの部屋」シーズン8がスタート!
日本選手はもちろん、海外選手のプログラムも多数手掛ける振付師・宮本賢二さん(KENJI)が、ゲストを迎えて、楽しく、真剣にトークを繰り広げます!
今回も今シーズンを観戦する上で絶対におさえておきたいルールや注目の海外選手など、見どころをたっぷりご紹介します。
今シーズンの主なステップの変更点
KENJI:クラスター以外にレベル4を取るために重要はことは?
岡崎:一番大事な最初の要件は、両方向のターンとステップ。一応、数えられるターンとステップが6種類(ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー、チョクトウ)あるので、両足ではなくて両方向で、左回転・右回転。12あるうちの11個取れないと駄目。失敗して大丈夫なのは1個だけです。それを満たしつつ、ローテーションです。左回り・右回りで選手が踏んだパターンのうち1/3ずつは少なくともあること。さらに、ボディを使う。以前は上半身だったのですが、全身になったので、例えばフリーレッグの動きでもいいですし、スケートのバランスに影響を与える動きとみなされるものがパターンの1/3ないといけません。さらにクラスターも左右1回ずつ成功しなければいけません。それを全部クリアして、レベル4。
KENJI:言葉にするとレベル4がどれだけ難しいのかが分かりますね。
中庭:ものすごく価値が高いです。レベル4のステップができる選手って、ちょっとすごいなって思います。
KENJI:ちょっとしたジャンプより点数高くなりますもんね。
岡崎:レベル4をクリアするくらいのものであれば、質としても非常に高いものなので、GOEも合わせて相乗効果でプラスが付いてきますよね。
鈴木:レベル4のステップを取っている人でマイナス付いている人をあまり見たことないですもんね。
岡崎:ステップの最後に転んじゃったりしたら仕方ないですけど、本当に滅多に無いですね。でも、転んだとしてもマイナス5にはならないと思います。マイナスにはなりますが、それを補えるだけのプラスもあるものだと思います。
ステップ・シークエンス
鈴木:私自身、現役時代ステップシークエンスが大好きでした。個性も出せるし、表現できるものの一つだったので。それだけレベルを取るのもの難しいし、複雑になってきているからこそ、見ている人にはもっと、ステップに注目してほしいです。
岡崎:一番、時間がかかるエレメンツでもありますし、見てもらえますよね。ハイライトにする選手も多いので、そこは楽しんでもらいたいですね。
KENJI:コレオの変更点はありますか?
岡崎:コレオも無いですね。ステップみたいに表面を大きく利用しなければいけないという括りも無くなってきました。最近トランジションが充実している選手がいるので「これ、コレオかな?」みたいに思うこともあります。練習を何度も見ていたり、申請があると分かるのですが、国内の大会で初見だったりすると、判断が難しいときもあります。ジャッジの人に一応GOE付けておいてもらわないといけないので、「あとで実はここでした」ってなったときに、ジャッジの人はレビューがなくて思い出せないときもあるので、余分にコレオシークエンスをコールしておいて、相応しい方を残して、そうじゃない方を消すといった作業をすることもあります。
鈴木:尺が短い人もいますしね。
KENJI:尺が短くなると、トランジションの方がコレオのように見えることもありますし、難しいですね。
鈴木:今は明確にイーグルとかスパイラルをしなくていいので、逆に難しいですよね。子どもたちの練習を見ていても思うのが、プログラムに入れていないものって練習しなくなるじゃないですか。私のときはすごい(スパイラルの練習に)時間が掛かるし、しんどいなって思ったけど、やっぱり美しいし、曲によってもすごく栄えるし、良いなって思います。入れてないからいらないじゃなくて、練習はしてて損はないと子どもたちに教えてあげたいといつも思います。
プログラムコンポーネンツの変更
プログラム・コンポーネンツ
岡崎:数年前に「振り付け」と日本語で訳されていたコレオグラフが、コンポジション(構成力)に変わりました。「振り付け」になると、振付師さんが作っているから点数に反映されるんじゃないかと邪推されるために変更されたところもあったと思います。名前は変わりましたが、評価的には変わりません。あとは重大なエラーがあったときに、10点満点を出してはいけないということが明文化されました。いくら素晴らしい演技をしていても、例えば転倒があれば最高点に縛りができました。ジャッジの方も5項目つけることに慣れてきたので、項目ごとにずいぶんと差がつくようになってきました。我々もピンとこなかった中で、ジャッジの方も理解されてきたのかなと思います。
KENJI:改めて、今回の変更によって、スケーターにはどんなことが求められると思いますか?
岡崎:できることを最大限やることがベストではありますが、その日その試合によって違いますよね。技術点でいくら難しいことをやって点数を取ったとしても、それがパフォーマンスを悪くしてしまうものであれば、危険を冒さずにレベルを1つ2つ下げて、綺麗にやることでコンポーネンツも付いてきます。フリーではコンポーネンツが2倍になりますし、パフォーマンスを下げてまで無理しない方が良いのかもしれません。ずっと4回転を何種類もやっていた女子選手も、一つに集中してまとめてみたりとか、試合毎に構成を変えるとか、そのときの自分の体調や氷のコンディションに対応して内容を変えてくる選手が、上に行けば行くほど増えてきている印象です。無理をしないけど、攻めないわけじゃないみたいな。
鈴木:対応力も実はすごい難しいし、その中で構成も瞬時に変えていけるプランが何個もあるということを考えなければいけないので、すごく難しいことを求められているなと感じます。
今シーズンの展望と女子シングル注目選手
KENJI注目のアリサ・リュウ選手
KENJI:まず、日本の女子はどうですか?
岡崎:順当にいけば紀平(梨花)さんが筆頭だったんでしょうけど、グランプリシリーズも欠場が続いていますね。
鈴木:全日本1本勝負になってくるのかもしれませんね。
岡崎:全日本までにどこまで戻せるかというところだと思います。
中庭:樋口新葉選手もトリプルアクセルを決めはじめていますし、そういった意味では3回転3回転ではなく、4回転ジャンプやトリプルアクセルを持っていないと、国内の争いに勝っていけない時代になってきたのかなと感じます。
鈴木:しかも、トリプルアクセルを決めても、他もミス無くやらないと、それが武器にならないという、本当に僅差の戦いですよね。オリンピックシーズンはいつもこうだなって感じるここまでの戦い振りだなと思います。
岡崎:一つのミスも許されない、あのビリビリとした独特の緊張感が怖いですね。
鈴木:もう、やりたくない(笑)
KENJI:でも、見る方からしたらすごく楽しいですもんね。誰が勝つか分からないですし、どんなミスも許されないし、試合的には面白いですよね。そんな日本人選手のライバルとなる外国人選手をあげていきたいのですが、僕はアリサ・リュウ選手です。愛くるしい選手ですし、技術も柔らかみがあって、表現が上手だなと思う選手です。
鈴木:すごく可愛らしい選手ですけど、ちょっと大人になってきていますよね。
KENJI:それも魅力ですね。どう変わっていくのか楽しみにしています。
鈴木:私はルナ・ヘンドリックス選手。グランプリシリーズのイタリアで、ショートをトップで折り返して、フリーでも素晴らしい演技で、おそらくグランプリシリーズ初メダルだと思います。ジャンプも非常に大きいですし、スピンの回転速度もポジションもすごく美しくて、バランスの良い選手だなと思います。ちゃんと積み重ねてきている選手がこうやって結果を出してくるのってすごく嬉しい。今シーズン注目しています。
中庭:僕はいつもマニアックな選手ですが、今年はソフィア・アカチェワ選手です。今シーズン、ジュニアグランプリで二つの大会を制して、今のジュニアグランプリシリーズでナンバー1の選手です。なにがすごいかと言うと、頭で分かっていても、やらなかったショートの内容をやってのけた選手。ジュニアの場合、ショートではダブルアクセルのみなので、トリプルアクセルにそこをすることはできませんが、コンビネーションは3回転3回転が許可されていて、それがトリプルアクセルも可能なので、それでショートプログラムでトリプルアクセル・トリプルトゥーループ、そして今年はトリプルフリップ、ダブルアクセルの、想像はしていたけどやる人いないよなと思っていたことを現実にやって、素晴らしいジュニアで成果をあげた選手です。さらに、フリーではトリプルアクセルはもちろん、2種類の4回転を計3本。ディティールを見たときに、なんの試合を見ているのか分からなくなるくらいすごい試合になっていました。すごいなと思いつつも、今後こうした選手にどうやって勝っていくのかも同時に考えています。
岡崎:今年シニアデビューですが、いまさらながらカミラ・ワリエワ選手です。ジュニアのころからすごく実力のある選手でしたが、今シーズン見たら身体もちょっと大きくなって、ボディーコントロールなんかも難しいかなと思いましたが、それもなんのその、素晴らしいジャンプ、スピン、ステップ、総合力のある選手です。脚が細くて足が大きいのか、足元が強調されると、足元は汚く見えがちなんですけど、細やかに足先まで綺麗にやっていて、向きだったり位置の処理も素晴らしく綺麗です。
KENJI:ルール変更もあった中で、今シーズンの女子シングルではどんな選手が表彰台に上がってくると思いますか?
岡崎:女子はそれぞれにコンポーネンツの高い選手も多いでしょうし、ロシア勢を筆頭にトリプルアクセルや4回転だったり大物の武器を持っている選手が多いので、基礎点が高い分、降りたときにプラスが付けば付加価値も高くなります。諸刃の剣のところもあるので、エラーが続いてきたときに、武器を持っていない選手がまとめて勝負できるかなというところ。オリンピックは魔物が棲んでいると言いますし、どうなるか分からないので、読めないですね。
鈴木:戦略的にオリンピックでどうくるかですよね。めちゃくちゃ攻めるのか、例えば4回転を1本にしてまとめるのか。そういったところをシーズンの流れで見ていくのも面白いですよね。
男子シングル注目選手
KENJI:続いては男子シングルについて。どう見ていますか?
岡崎:羽生(結弦)選手の情報も気になっています。たった一度の転倒でということなので、よほど酷い転び方をしたのか、どれくらい時間がかかるのかも気になります。
KENJI:彼はいつもミラクルを起こしてくれますからね。
中庭:あとは宇野(昌磨)くんの今年のフリープログラムの「ボレロ」。重厚感というか、彼の歴代の演技の中でも歴史的な演技になる予感をさせてくれるフリープログラムだなと思います。
鈴木:私は宇野選手のショートも好きです。昨年からエキシビジョンでショートを見ていて、すごく宇野選手の新たな魅力が出ていて、すごく好きです。
KENJI:ありがとうございます。もっと褒めて。そんな日本人選手のライバルになりそうな注目の海外選手をあげていきましょう。私はジェイソン・ブラウン選手です。僕が思ったのは、スケーティングとかがブレない。ターンをしたときにすごく安定していて、上半身に余裕がさらにできている。それにプラスしてジャンプも安定してきています。技術だけではなく、それ以外でも見せてくれると思います。
鈴木:毎回プログラムが楽しみです。
岡崎:ショートプログラムも4回転が無い構成で、唯一コンポーネンツ10点満点をどっかの項目で取りそうな選手。他にいない選手ですよね。そのくらいプログラムの完成度が高い。
岡崎:私はイタリアのマッテオ・リッツォ選手。メダル争いとなるとどうかなと思いますが、先日の大会でもショートで出遅れたんですけど、そこから順位を上げてフリーで1位。内容を見ても彼のベストの演技だったと思います。平昌のときから団体でずっと出ずっぱりで、オリンピック男みたいな感じもあるので、オリンピックの舞台で旋風を巻き起こすかもなというところで彼をあげさせていただきました。
中庭氏が注目するミハイル・コリヤダ選手
中庭:今回はオーソドックスにミハイル・コリヤダ選手。もともと優れている選手で、世界のトップクラスの選手でしたが、近年は病気もあって安定して活躍ができない、練習も含めてすごく大変なシーズンでした。男らしさを持ちつつ、フィギュアスケートの繊細なところを表現できる、振り幅の大きい選手。今年は安定してシーズンをはじめられているようなので、4回転も複数持っていますし、コンポーネンツも持っていて、経験もあるということで、期待しています。
鈴木:私はやっぱりネイサン・チェン選手です。最大のライバルにして、平昌以降、勝ち続けていた彼が、先日のスケートアメリカでまさかという結果でしたけど、そのあとのスケートカナダには立て直す力。平昌オリンピックで悔しい思いをした彼が、オリンピックの悔しさはオリンピックでしか返せないのかなとも思うので、日本勢にとっては最大のライバルかなと思います。プログラムも楽しみですし、フリーのラストのコレオとか、見ていてもすごい高まってくるので、注目しています。
KENJI:どんなタイプの選手が表彰台にあがってきそうですか?
岡崎:4回転はハイリスク・ハイリターンなので、チャンレジしても転んでしまえばマイナス5とかで基礎点も下がってしまうし、転倒の減点もあるし、コンポーネンツの減点もあるので、いっぱい持っていても、どれを使うかというところで上手に戦略を立て、駆け引きができる選手。持ち札を上手に出して切り抜けられる選手が勝つと思います。
中庭:4回転も縛りができてきて、2種類だけだと3発までしか入れられませんので、複数の高難度と言われる種類を持っている選手が上に行きやすいのかもしれません。
今シーズンの見どころ
今シーズンの活躍を期待しています
KENJI:最後に、今シーズンの見どころをお一人ずつ。まず、僕から。シングルも盛り上がっていますが、日本のアイスダンスも盛り上がっています。小松原(美里)さんとティム(コレト)さん、そこに村元(哉中)・高橋大輔(高橋の高は「はしごだか」)組が入ってきて、簡単には勝たせないぞという。勝ち負けを別として、アイスダンスの高いレベルでの戦いに注目してほしいです。
中庭:近年、ペアスケートも強化していく中で、シングルのスケーターのときの木原(龍一)くんとは一緒に練習していた。その仲間が新しい道に進んで、色々苦労もあったし大変な中、ペアで日本の選手が世界に出ていくというところから始まって、今や世界で勝っていくところのレベルに到達しているのを目の当たりにして、改めてすごいと思います。今シーズンはオリンピックシーズンでもあるので、その舞台で活躍する姿を想像しながら、みなさんにも見ていただきたい。ペアの競技にも注目したいですね。
鈴木:長く続けていればどこかで挫折もあるだろうし、コツコツと積み重ねてきた選手が世界で活躍できる場なので、選手が思う存分演技ができたら良いなと思っています。
岡崎:最大のイベントはオリンピックなので、みなさんの注目も選手もモチベーションもそこに向いているでしょうし、それぞれの国で選考方法が違うので、どの試合も気が抜けない。試合で色々試したり、構成を変えてくる選手もいるでしょうし、同じプログラムだけど同じじゃないところもあると思うので、そういうところも試合毎に楽しんでいただきたい。日本はカップル競技が弱いと言われてきた中で、快挙を成し遂げてくれる選手がいたり、ハイレベルな選手たちがでてきている中で、今回は団体戦のメダルも狙えるんじゃないかなという期待感があります。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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