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フィギュア スケート コラム 2021年9月14日

町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 ~女性アスリート問題~ 東京大学医学部付属病院 能瀬さやか先生:病院の選び方

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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病院の選び方

病院の選び方

今回お迎えしたのは、医学博士であり、婦人科の専門医でもある能瀬さやか先生です。現在は、東京大学医学部附属病院に勤務。2017年には国立大学病院初の女性アスリート外来を立ち上げました。今回は医学の目線からスポーツ界で喫緊の課題である、女性アスリート問題について伺います。

病院の選び方

町田 樹(以下、M):問題が起こってしまって、お医者さんに相談したいと思った方は、どこにでも産婦人科、レディースクリニックはあるわけですけど、最寄りのところ行けばいいのか、それともスポーツの知識がある特別なところに行かなければいけないのでしょうか。

能瀬さやか先生(以下、N):2012年くらいから私たちも啓発するようになってきて、啓発が進めば進むほど、全国からどこの婦人科を受診したらいいのか分からないという問い合わせが多くありました。こういった三主徴の問題や、アスリート外来で重要なことは、アンチ・ドーピングの理念に基づいて診療することも重要ですが、やはり産婦人科の先生方はドーピングのことをご存じない方が多いと思いますので、まずは受け入れ側である産婦人科の先生方に女性アスリートの問題、ドーピングの問題を知ってもらおうということで、2014年に「女性アスリート健康支援委員会」というものを設立しています。日本医師会、日本産婦人科学会、日本スポーツ協会など、いろいろな構成団体を基に設立していますが、まず2014年から4年をかけてやったことは、47都道府県を1県1県まわって、産婦人科の先生方に講習会をしました。そこで受講した先生方をHPで公開して、この県で困っている選手がいたら、まずはそのHPを参考にして、この病院のこの先生に受診してくださいといったシステムを取っています。

M:これは女性はもちろんのこと、男性であっても、もし自分の教え子がそういった状況になったらそこで情報を得て問題解決に取り組まなければいけませんね。

東京大学医学附属病院 女性診療科・産科 女性アスリート外来

東京大学医学附属病院 女性診療科・産科 女性アスリート外来

N:東大のアスリート外来でもいろいろな啓発の教育用資材を載せています。東大のアスリート外来は2017年から開設していますが、競技レベルや年齢を問わず、パラのアスリートも積極的に受け入れながら診療を行っています。トップ選手に限らず、スポーツをやっている方はどなたでも受診できます。2017年開設以降は年々受診する選手が増えてきています。どういった相談内容で受診する選手が多いかと言いますと、エネルギー不足による無月経の選手が圧倒的に多いです。その次が月経困難症やPMS。その他、摂食障害や妊娠・産後の問題であったり、更年期の問題であったり、いろいろな相談内容で受診する選手が多いです。

競技種目別

競技種目別

競技種目を少し紹介しますと、陸上の中・長距離の選手が多いです。やはり無月経の選手が多いです。パラの選手も様々な競技の選手たちが来ています。また、実際に受診されている選手は全国大会以上とか、オリンピアとかの方が多いですが、部活動を頑張っている方などで問題を抱えている方にはもっともっと積極的に受診していただきたいと思っています。

女性アスリートのための無料オンラインセミナーも行われている

女性アスリートのための無料オンラインセミナーも行われている

これまでスポーツ庁の委託事業で東大のアスリート外来では女性アスリートの支援プログラムや調査研究なども行ってきています。昨年度も女性アスリートの無料オンラインセミナーを開催して、4000名の方に登録していただきました。今年は7月26日から第1回が開催されていますが、昨年度の分も含めて、全部で34本、どなたでも参加できる無料オンラインセミナーを開催しています。「Basic編」「Advance編」「Research編」と3つに分けていて、「Basic編」は月経の仕組みなど基礎的な内容をお話して、「Advance編」で女性アスリート特有の問題について、最後に「Research編」では女性アスリートを研究をされている先生方からお話をしていただいています。今年度いっぱいは34本を無料で視聴できますので、今年は定員を10000名に増やしましたので、是非参加していただきたいです。

その他、国立スポーツ科学センター在籍中、また東大に移動してからいろいろな女性アスリートの調査や啓発を行ってきました。そうした調査研究の内容を本にまとめたりしています。

冊子

冊子

M:私も実は拝読させていただきました。とても良くまとまっていて、これ一冊読めば基礎知識が入ってくるような形になります。これは冊子として綺麗にまとまっていますが、東大の女性アスリート外来では無料でPDF形式で手に入れられると。気になる方は東大女性アスリート外来で検索をかけていただければ、この冊子が無料でダウンロードできますのでご確認ください。

N:白い冊子の方が、今日お話している無月経やピルの問題です。ピルを使うと運動パフォーマンスに影響するんじゃないかと懸念するアスリートや指導者が多いですが、国立スポーツ科学センターで運動生理学者の方と一緒に、ピルを使った後に、運動パフォーマンスのテストをして、その結果も全て載せています。

青い冊子の方は、更年期障害を抱えているアスリート、妊娠・出産の問題をまとめた本になります。特に最近は産後に競技復帰されるアスリートも増えてきていますし、パラアスリートなんかは引退年齢が遅いですので、妊娠・出産・不妊治療・更年期障害などを抱えながら競技をしている選手が多いです。こちらは日本パラリンピック委員会と連携して調査研究を行った結果なども載せています。

また、東大のアスリート外来では、中高生向けの啓発として、イラストを使って簡単な動画を9本公開しています。月経周期とコンディション、ドーピングや栄養の問題などを短い動画にまとめてあります。

今年度はトップ選手の経験談、体験談として、「スポーツを止めるな」という団体と連携して、トップ選手の女性特有の問題の体験談を10本配信する予定でいます。そちらも是非参考にしていただけたらと思います。

今後の取り組みについて

今後の取り組みについて

今後の取り組みについて

M:当たり前ですが、正しい知識を踏まえることからはじめないとこの問題は解決しないということですよね。先生は今後も医者としての仕事の傍で、こうした問題に取り組んでいきたいと考えているのですか?

N:ここまで女性アスリートのことを深くやる立場になるとは思っていませんでしたが、やはり日々受診する選手を見ますと、まだまだ課題が多いです。一つ、今後やっていかなければいけないなと感じていることは、RED-Sによる骨や月経の問題はこれまでやってきましたが、その他の生理機能にどういった影響がでるのか、もう少し深めた研究をしていきたいと思っています。

M:その域に至ると、男性も同じということになってきますよね。

N:そうですね。このデータを出せば、男性にも応用ができると思います。あとは骨の問題は10代で手を打たなければ一生の問題になると考えていますので、スポーツの現場で、骨量が減少するリスク因子をスコア化して、例えば何点以上であれば医療機関に受診して骨密度を一回測りなさいというようなスクリーニングのツールを今作成しています。また、無月経で受診した選手の中には摂食障害がすごく多いです。日本版の女性アスリート専用の接触障害スクリーニングテストも今年度中に発表する予定です。

私の考えとしては、私はずっと研究1本でやってきたわけではなくて、受診した選手たちを見て、どういった課題があるのか、現場でどういったことをすればいいのかという臨床研究を主にやってきましたので、現場にフィードバックしないと何も意味がないと私は思っています。ですので、得られた調査結果は全て東大のアスリート外来で公開しようと思っていますし、女性アスリート健康支援委員会も連携してやっていますので、そちらのHPでも全て公開しています。

文:J SPORTS編集部

J SPORTS編集部

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