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田村岳斗コーチ20/21シーズン振り返りインタビュー~田村岳斗コーチが見た世界フィギュアスケート選手権~
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部田村岳斗コーチ(木下アカデミーヘッドコーチ)が見た今シーズンの世界選手権。特に男子について、優勝したネイサン・チェン選手をはじめ、2位に入った鍵山優真選手、その他印象に残った選手について聞いてみました。
田村岳斗コーチ(木下アカデミーヘッドコーチ)
Q:今回の世界選手権について、優勝したのはネイサン・チェン選手でした。
田村:ネイサン・チェン選手、3連覇おめでとうございます。フリーの演技は本当にすごかったですね。初日を振り返ってみると、ショートプログラムでネイサン・チェン選手が転んだということに、ここ数年見慣れない光景でしたので、驚きました。
ネイサン・チェン選手のフリーのあのとんでもないジャンプ構成を生み出したのは、羽生選手との得点差が8点近くあったことと、それ以上にネイサン・チェン選手の意識の中には、羽生選手の全日本フリーの演技内容があったでしょう。もし、羽生選手が全日本と同じ演技内容だったら、すべてを出し切っても勝てない。そういう計算もあったのかなと思います。4回転5本にコンビネーションも入れてあれもこれも入れて…。これ以上は考えられないという構成でした。それを世界選手権でできてしまうのが、ネイサン・チェン選手のすごさです。絶対にあきらめない精神力、自分のベストなものをすべて出し切れる力。その両方があってあの逆転優勝が生まれました。
Q:2位に入ったのは世界選手権初出場の鍵山優真選手でした。
田村:初の世界選手権で銀メダル獲得おめでとうございます。彼がショートプログラムで100点を超えて、無邪気に喜んでいる姿を見て、僕も笑顔がこぼれてしまいました。ジュニアでの世界大会の経験はあるとはいえ、初めての世界選手権ですから、ショートプログラムはチャレンジャーの気持ちで臨めたと思います。ただ、最終組のプレッシャーの中でのあのフリーの演技は見事でした。しかも、ネイサン・チェン選手が4回転を5回完璧に成功した後で、それ以上に高いジャンプを決めていたところにも驚きもありましたし、見ていてとても気持ちよかったですね。彼は北京オリンピックだけでなく、2026年ミラノ、その先までも十分狙える年齢です。今シーズンまではチャレンジャーの立場でしたが、これからはメダリストとしてライバルやファンの注目度もどんどん上がっていくでしょう。そのプレッシャーをうまく自分の味方につけて、しっかりと成長していくことを期待します。
Q:3位の羽生選手についてはどのように感じましたか?
田村:先にも話しましたが、全日本の演技の素晴らしさの印象が残っていただけにファンのみなさんの期待も大きかったと思います。世界選手権のフリーだけがコンディションの問題で崩れてしまいました。羽生選手が最初の世界選手権でメダルを獲ってから9年。最初のオリンピックで金メダルを獲ってから7年。これだけ長い間、休養期間もとらずにトップ争いをしていればコンディションの悪い時だってあります。そんな状況でも世界3位。彼は満足していないと思いますが十分立派な成績です。おめでとうございます。
Q:ここ数年、羽生選手とネイサン・チェン選手の関係性について、どのように感じていますか?
田村:羽生選手とネイサン・チェン選手の関係は、それぞれがリスペクトしあいながら切磋琢磨してレベルを上げていることが伝わってきます。年齢も違う中で、2人の関係性は、他の選手にとってもいい影響を与えるでしょうし、フィギュアスケートという競技の質の向上にも大きく貢献しています。
Q:4位になった宇野選手はジャンプのミスがいくつか出てしまいました。
田村:ショートプログラムのトリプルアクセルが本当にもったいなかったです。フリーでは3位に入っていますし、コンビネーションもしっかりと決めて、いい演技内容だったと思います。世界4位の成績を収めているにも関わらずどこか負けた感が出てしまう。宇野選手にしても、羽生選手にしても、2人が受けるプレッシャーの大きさに改めて大変な立場だなと思います。
4回転5本、4回転アクセルと聞いてチャレンジ心に火が! 岳斗コーチいわく「今、何回転でした?」
Q:今回、男子の上位2人の成績によって北京の3枠出場は確保しました。
田村:北京の3枠を取るという中で、宇野選手が上位につけていたことで、鍵山選手のプレッシャーの緩和になったと思います。羽生選手、宇野選手という絶対的な存在がいたことで、枠取りにこだわることなく、自分の演技に集中することができたと思います。実際には上位2人の成績によって枠が決まりますが、そこに至るまでの中で、宇野選手の力があってこその日本男子3枠獲得につながったと思います。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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