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【レビュー:ISU世界フィギュアスケート選手権2021 ペア】 世界選手権デビューとなった三浦璃来&木原龍一組が北京五輪枠を獲得! 表彰台はロシアvs中国の熾烈な争いに
フィギュアスケートレポート by 野口 美恵三浦璃来&木原龍一組
日本のペアにとって、新たな一歩を記す演技だった。三浦璃来&木原龍一組は、ショート8位、フリー10位と好成績を記録。世界選手権デビューとなった2人が、来季の北京五輪枠を獲得するとともに、世界に存在感を示した。
ペアの育成に尽力している日本にとって、今や木原は欠かすことの出来ない“お兄さん”的存在だ。もともとシングルでも国際大会レベルにあった木原だったが、2013年に「シングルを諦めるという気持ちではなく、五輪を目指して挑戦するのは今しかできない事だからペアに挑戦したい」として、すでに世界選手権3位の経験者である高橋成美と組んでペアに転向。ソチ五輪出場は果たしたものの、ショート18位でフリーに進めなかった。
2015年からはパートナーを変更し、18年平昌五輪に出場。ショート21位でやはりフリー進出はならなかった。
そして19年から9歳下の三浦と組むと、化学変化が起きた。2人が滑ると、そこに物語が紡がれていくような一体感が生まれた。昨季は四大陸選手権8位と活躍。コロナ禍のなか、カナダで練習を積んできたため今季は試合がなく、この世界選手権が1年1か月ぶりの試合だった。
ショートは2人のなめらかな滑りを生かした『ハレルヤ』で、しっとりとした美しい滑りで魅了。自己ベストの64.37点の8位発進となる。
「1年間試合がなく、このプログラムをはやく披露したいと思っていました。世界的に大変な状況のなか、練習の制限、移動の制限など2人で乗りこえなければならないことがたくさんあって、そのぶん信頼感が高まったと思います」と木原は語った。
フリーは、Shawn Phillipsの切ないバラード『Woman』をエモーショナルに演じた2人。スロー3回転ルッツは決まったものの、スロー3回転ループで転倒すると、悔しさをにじませた。
「練習でも転んだことがなく自信があったので、試合で決められなかったのは悔しいです。すごく良い経験をさせてもらえたので、この悔しさをバネに2人で頑張っていきたいです」と三浦。
木原は「初めての第4グループで、楽しみも緊張もありました。まだまだのびしろがあります。僕たちが頑張らないと下の世代がペアをやってみようと思わないので、僕たちが頑張ることが新しいチーム誕生のきっかけになっていくと思います」と語った。
アナスタシヤ・ミーシナ&アレクサンドル・ガリャモフ組
一方、表彰台をめぐっては、ロシア対中国の熾烈な争いとなった。僅差で制したのはアナスタシヤ・ミーシナ&アレクサンドル・ガリャモフ(ロシア)。227.59点で、ショート3位から巻き返した。フリーでは「3回転サルコウ+オイラー+3回転サルコウ」の大技を冒頭で成功。高さのあるツイストリフトも見事で、ショート、フリー通じて大きなミスがなく、勢いある演技での優勝となった。
シーズン初めにコロナ陽性となり、苦難を乗り越えてきたガリャモフはこう振り返った。
「本当に大変なシーズンでした。スタートは遅れましたが、ゆっくりとこの大会にピークを合わせてきました」
またフリー曲がボヘミアン・ラプソディの『We are the champions』であることからミーシナは「1つ1つの技を終えるたびに緊張から解放され、幸せに近づいていくというような気持ちになりました」と喜んだ。
また平昌五輪銀メダルのウェンジン・スイ&ツォン・ハン(中国)も実力者らしい滑りが光った。幼少期から組んできた2人も、いまや25歳と28歳のベテランだ。怪我明けということもありサイドバイサイドのジャンプでは苦戦したものの、飛距離のあるスロージャンプ、高さのあるツイストリフトなど、ペアならではのダイナミックさは健在。225.71点で2位につけた。
「シーズン中の怪我のあと、2か月しか氷上練習できていなかったので、このレベルまで持ち直せたことが嬉しいです。来季は完全な準備で臨めるように、しっかり取り組んでいきます」とスイ。母国開催となる五輪での、悲願の金メダルに向けて、気を引き締めていた。
またアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー(ロシア)はショート首位発進を決めたものの、フリーではボイコワが3回転トウループで転倒。スロー3回転フリップでも着氷ミスがあり、3位に。「初めての世界選手権のメダルなので嬉しいという気持ちと、もっと上を目指していたので残念な気持ちです。でも銅メダルを誇りに思いたいです」とコズロフスキーは語った。
またベテランのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ(ロシア)も、僅差で4位につけた。ショート、フリーともにミスは1つずつに押さえ、2人が一体となる演技力で高得点をマーク。平昌五輪は4位だった2人。北京五輪での巻き返しにむけて、ライバル達にプレッシャーをかける位置につけた。
ペアは現在、中国とロシアの2国強豪状況が続く。三浦&木原達が、北京五輪までにどんな成長を果たし、世界トップへと迫っていくのか。期待が高まる一戦だった。
文:野口美恵
野口 美恵
元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝、20年冬季マスターゲームズ・シルバー部門11位。
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