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【髙橋大輔選手スペシャルセレクション】日本男子シングルとして、史上初めて世界のてっぺんに立った髙橋「4回転を跳ばずに世界チャンピオンになるのは絶対に嫌」
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部2019年全日本選手権を最後に、シングルスケーターとしてのキャリアを締めくくった髙橋大輔選手。今はアイスダンサーとしての、新たなる冒険へと漕ぎ出したばかり。
そんな髙橋選手のこれまでの偉業にオマージュを捧げ、これからの活躍にエールを贈るため、J SPORTSでは、出場大会を厳選した「ISUフィギュアスケートアーカイブ」と「ISUグランプリファイナルハイライト」をお届けしています。
そして今月6月は、日本男子として史上初めて世界チャンピオンに君臨した2010年世界選手権と、羽生結弦とのチャンピオンシップ初競演となった2011年四大陸選手権をピックアップです!
2010年世界選手権:道は頂点へと続いていた
24年間の短くも濃縮された人生が、トランペットの音色とともに、氷の上で紐解かれていく。
ちょうど4年前。同じトリノの、まさに同じパラヴェーラ競技場のリンクで、荒川静香が史上初めて日本人フィギュアスケーターとして五輪金メダリストに輝いた。しかし、あの大会の髙橋は、この2010年世界選手権と同じフリー最終滑走で..ジャンプのミスが続き8位で終えた。
約1年半前。練習中の転倒で右膝を負傷し、2008−2009シーズンを完全に棒に振った。手術とリハビリを経て、ようやく氷の上で練習を再開できたのは、それから約半年後のことだった。
J SPORTS放送情報
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ISUフィギュアスケートアーカイブ 2010年 世界選手権 男子シングル #3
放送日:2020年6月7日(日) 放送時間:午後 5時 00分~午後 7時 00分
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ISUフィギュアスケートアーカイブ 2011年 四大陸選手権 男子シングル #4
放送日:2020年6月20日(土) 放送時間:午後 9時 00分~午後 11時 00分
そして1ヶ月前のバンクーバー五輪。SPを1位とわずか0.6点差の3位で折り返すも、FSで逆転ならず。それでもFSの演技構成点は出場選手の中で最も髙い84.50点をマークし、なにより日本男子として初の銅メダルを手に入れた。
FSの「映画『道』より」は、髙橋にとってこれ以上ないほどに、ふさわしいプログラムだったに違いない。フェデリコ・フェリーニの名作。人生における喜怒哀楽とは、すべてがそれぞれに尊く、ただのひとつでさえ欠くことのできない大切な要素である..そんなメッセージが詰め込まれた4分半。
演技冒頭で、当時いまだ誰も成功させていなかった4回転フリップを試みたのも、髙橋にとっては必要なことだった。
「無謀な挑戦だ。やらないでおこうか」とも正直、悩んだそうだ。そもそもバンクーバー五輪では、4回転回避で着実な演技を選んだライサチェクが、見事金メダルに輝いているではないか。しかし髙橋は「4回転を跳ばずに世界チャンピオンになるのは絶対に嫌」だった。
こうも考えた。「ケガをする前までは、4回転を試合で成功させていた。2回入れることもできていた。だから4回転にこだわるというより..元の自分に戻りたいという気持ちが大きかった」。
結果的に4Fは両足着氷+ダウングレード判定を受けるが、挑戦はきっと、無駄ではなかった。日本から駆けつけたファンたちも、地元イタリアの観客も、勇敢な髙橋に心からの声援を送った。「すごく後押ししてもらって、楽しく滑ることができた」。
その後のジャンプはすべて飛びきった。丁寧なスケーティングと、音楽をまるで包み込むようなやわらかな腕の動き。生き生きとしたステップは冴え渡り、あらゆる苦悩を振り払うように、スピンはどんどん速度を上げていく。そして最後に待っていたのは、解放の笑顔だった。
髙橋大輔は日本男子シングルとして、史上初めて世界のてっぺんに立った。2位には2年連続でパトリック・チャンが食い込んだ。卓越したスケーティング能力で、ご存知の通り、翌年から3連覇を果たすことになる。3位にはブライアン・ジュベール。優勝候補と目されていたバンクーバー五輪ではまさかの16位に沈んだが、今大会ではSPで4回転1本・FSで2本を成功させ、自らの名声を取り戻した。
また女子では浅田真央が2度目の世界選優勝を成し遂げた。もちろん日本にとっては、嬉しい歴史的な男女アベック優勝でもあった。
J SPORTS 放送情報
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ISUフィギュアスケートアーカイブ 2010年 世界選手権 男子シングル #3
放送日:2020年6月7日(日) 放送時間:午後 5時 00分~午後 7時 00分
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ISUフィギュアスケートアーカイブ 2011年 四大陸選手権 男子シングル #4
放送日:2020年6月20日(土) 放送時間:午後 9時 00分~午後 11時 00分
2011年四大陸選手権:陰と陽。異なる魅力を使い分ける
前シーズン、髙橋大輔を日本男子初の世界王者へと導いたFS「道」は、キャリアを代表する名作だ。間違いない。
ただし名プログラムは、これだけには留まらない。なにしろジュニアグランプリに初めて参戦した2000年から、シングルスケーターとして出場した最後の全日本選手権まで、髙橋は20年間で通算15シーズンを戦い抜き、全部で31の競技プログラムを披露しているのだ。革命的だった「白鳥の湖ヒップホップバージョン」、ひたすらクールでかっこいい「ブルース・フォー・クルック」、激情の波が押し寄せる「道化師」etc...。
そしてこの2010/2011シーズンのプログラム2本もまた、ファンの記憶の中にしっかりと残されているはずだ。
SPはマンボ。会場を大いに盛り上げるエンターテイメントナンバーとして、エキシビション等でもしばし用いられる人気プログラムのひとつである。それにしてもついつい「悩殺モノ」とか「魅惑の」と形容したくなってしまうこのナンバー、とにかく楽しい。なにより、ただただ圧巻だ。スケーターとしての確かな技術はもちろん、「ダンサー」としての桁外れの能力を、髙橋はまざまざと見せつける。上半身と下半身がまるで別の生き物のようにリズムを刻んだり。氷の上でこんな動きができるの!?ってびっくりするくらい軽快に飛び跳ねたり、小気味よくステップを刻んだり。
対するFSはがらりとイメージを変えて。叙情的に踊り上げる。ちなみにその前の2シーズンもSPでタンゴをチョイスしているけれど、宮本賢二さん振り付けの「eye」(2008−2010)がキリリと男らしい色香にしびれるための人気プロだとしたら、この年のパスカーレ・カメレンゴ振り付け「ブエノスアイレスの冬」は、むしろ重々しい憂いの中から隠しきれないパッションがにじみ出してくるような、そんな作品だ。バンドネオンが緊迫感を髙めていくにつれて、髙橋のステップもどんどんと熱を帯びていく。
髙橋が2度目の優勝を飾ったこの2011年四大陸選手権はまた、羽生結弦にとってシニアで初めての国際的チャンピオンシップ参戦でもあった。
前年の世界ジュニア王者は、16歳。しなやかな肢体は今以上に線が細く、演技後の笑顔はあどけなく初々しい。それでも物怖じしない大胆さや「目力」の強さに、未来の世界&五輪チャンピオンの片鱗を見る..!
2012年グランプリファイナル:日本シングル勢の華麗なる競演
日本男子シングル初。そんな記録を次々と打ち立ててきた髙橋大輔が、ついにグランプリファイナルでも日本男子シングル初の栄光を手に入れた。
フリースケーティングは、オペラ「道化師」。間違いなく髙橋のキャリアを代表するプログラムではあるけれど……ひとつの完成形へとたどり着くのは、2週間後の全日本選手権を待たねばならない。
ヴェリスモ、つまり極限までリアリズムを追求した作品の楽曲であることから、振付師シェイリーン・ボーンから「綺麗に滑ろうと思わなくてもいい、激しくても醜くていいから、感情を出してくれ」と命じられたとも言われている。この12月上旬の時点では、いまだ解釈を模索し、苦悩している真っ只中のようにも見える。
なによりソチで行われた同大会は、日本シングル勢の豪華競演だ。日本男子が空前絶後の4人がファイナルへと駒を進めたのはもちろん、男女合わせてGPファイナルとしては現在まで最多となる4つのメダル(男子2・女子2)を持ち帰った!
直後に真のチャンピオンとして上り詰める「前夜」の羽生結弦や、当時23歳ながらすでに「いぶし銀のスケーティング」と呼ばれていた小塚崇彦の滑りを懐かしく眺めたいのはもちろん、この2012年グランプリファイナルアーカイブは、町田樹の芸術性に改めて触れる貴重な機会でもある。後のソチ五輪では火の鳥の魂が自らと融合したような精神状態になった……そうだが、このソチ大会の時点では、火の鳥とどんな関係性にあったのだろうか。
また2010年世界選手権で、髙と橋共に日本史上初の「アベック優勝」を達成した浅田真央が、この2012年グランプリファイナルでも同時に表彰台の頂点に登った。前シーズン終了後に引退さえ考え、再び力強く滑り出した直後の頂点復帰。ザ・正統派とも言える「白鳥の湖」で、4年ぶり3度目のファイナル優勝を手にしている。
鈴木明子は3度目のGPファイナル表彰台。ちなみに現在は振付師としても活躍する鈴木が、最もインスピレーションを受けたと言われるプログラムこそ、今大会で披露するパスカーレ・カメレンゴ振り付けのFS「O」だ。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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