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【チャレンジカップ2020】来シーズンへの素敵な予感。宇野・田中・紀平・横井が描いた日本フィギュア界の未来
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部きっと再開の日がますます待ち遠しくなる。
だって、この競技会を最後にシニアスケーターたちの2019−20シーズンは突如として終わってしまうのだけれど……次へ、来シーズンへと、素敵な予感を抱くことができるから。
それほどまでに、チャレンジカップの宇野昌磨は、輝いている。
シーズン序盤の苦悩がまるで嘘だったかのように。いや、もしかしたらフランス大会での、あの涙があったからこそ、「ここ数年間で抱えていたものをすべて肩から下ろした」からこそ、澄み切った世界へと到達することができたのかもしれない。
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ロシア大会を前にそっと手を差し伸べてくれた元世界王者ステファン・ランビエールに、11月中旬から教えを受け始めた。背中を押してくれる人がいることの大切さを実感し、全日本選手権では4連覇を果たした。1月には正式に師弟関係を結び、欧州で修行に勤しんだ。四大陸選手権はあえて辞退。ひたすら世界選手権へ向けて、演技の完成度を高めることに専念した。
最後のひと磨き。それが2月末にオランダ・デンハーグで開かれたチャレンジカップ出場の目的だった。
ここ3シーズン課題としてきた4回転サルコウを、フリーで見事に着氷しただけではない。いきいきと音楽の中に生きる宇野昌磨の姿を、わたしたちは見出すことになる。フリー終盤のステップシークエンスではきらきらと喜びを撒き散らし、「ランビ」の魔法でさらに艶を増したスピンが、光の輪を描く。
演技を終えた直後の表情が、すべてを物語っている。笑顔のランビエールが小走りで宇野のもとに駆けつけるシーンも、キス&クライで2人が楽しげに話し合う姿も、どん底の日々があったからこそなおいっそう尊い。
田中刑事との日本男子ワンツーフィニッシュも、日本のファンには嬉しいニュースだ。
田中にとってもまた、決して簡単なシーズンではなかった。スケートカナダの直前に現地で交通事故に見舞われ、全日本では4年ぶりに表彰台を逃した。「この大会で出来なかったことが残っている。どこかで晴らしたい」と挑んだチャレンジカップでも、ショートは悔しいミスが続いた。
それでもフリーの田中は、「攻めの姿勢」を見せた。演技後半には大きな得点源となる4回転トウループを組み込み、きっちり着氷。最終盤のステップやスピンでは、きれいにレベル4を揃えた。ショート3位から逆転でトータル2位に食い込み、4年連続の世界選手権出場へ確かな一歩を踏み出した……はずだった。
モントリオールで「完成形」を披露したかったのは、女子シングルの紀平梨花だって同じ。
4回転を入れるか、それとも入れないか。大技を武器に持つロシア勢に対抗するために、もちろん4回転サルコウの練習は熱心に重ねてきた。GPファイナルでは初めて本番でトライし、転倒するも認定された。しかし、この難しい問いに、チャレンジカップの紀平は「入れない」という答えを導き出した。
むしろこだわったのは演技の完成度。アリョーナ・コストルナヤは同じく3回転アクセルを2本組み込む構成で、つまりは4回転なしで、フリー160点超えを達成している。だったら自分だってノーミスで、質の高い演技をすれば良いのではないか。後退ではない。世界選で「勝つ」ための冷静かつ現実的な計算だった。
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4回転を入れるか、それとも入れないか。大技を武器に持つロシア勢に対抗するために、もちろん4回転サルコウの練習は熱心に重ねてきた。GPファイナルでは初めて本番でトライし、転倒するも認定された。しかし、この難しい問いに、チャレンジカップの紀平は「入れない」という答えを導き出した。
むしろこだわったのは演技の完成度。アリョーナ・コストルナヤは同じく3回転アクセルを2本組み込む構成で、つまりは4回転なしで、フリー160点超えを達成している。だったら自分だってノーミスで、質の高い演技をすれば良いのではないか。後退ではない。世界選で「勝つ」ための冷静かつ現実的な計算だった。
残念ながらショートでは1度転倒があったものの、フリーの紀平は2本の3Aを含むすべてのジャンプを成功させる。今季通して安定して高評価を得てきたスピン&ステップは、当然のようにオールレベル4で綺麗にまとめた。目標としてきたフリー160点には、ほんのわずかに届かないのだけれど……自己最高の156.38点(非公認)を記録した。なにより4回転抜きでも戦える「自信」がついた。
チャレンジカップ2連覇を果たし、表彰台の中央に立つ紀平梨花の右隣には、昨季同大会のジュニア部門金メダリストの横井ゆは菜が並ぶ。今季から本格シニア転戦を始めた遅咲きの20歳。ショートもフリーもガッツポーズが何度も飛び出すほどの会心の出来で、手に入れた嬉しい銀メダルだった。
こうして日本フィギュアスケート界にとって明るい話題に埋め尽くされた今大会が、2月23日に閉幕し、世界ジュニア選手権が3月2日から8日までエストニアで行われた後、状況は急速に悪化する。あらゆるスケーターが、シーズンを通して目指してきた世界最高峰の戦いも、ついには実現しなかった。3月16日から開幕予定だった世界選手権は、直前に延期が決定した(最終的に4月半ばに中止発表)。
それでも多くの国が、新型コロナウイルスの影響を乗り越えて、少しずつ日常を取り戻しつつある。長らく閉ざされていた世界各地のアイスリンクも、5月半ばには、徐々に扉を開き始めた。笑顔の報告が次々とSNSに上がり、氷の上で、再び、フィギュアスケーターは美しいラインを描いている。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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