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羽生結弦が念願の金メダルを手に入れたと同時に、今年の四大陸選手権大会は幕が降りた。男子シングル史上初のスーパースラム達成をはじめ、今大会はダイナミックなジャンプと優雅なスケーティング、新人の活躍とベテランの復帰、感極まる表情と悔し顔…印象的な場面がたくさんあり、とても記憶に残る大会になった。
1位 羽生結弦(日本)
2018年冬季オリンピックで66年ぶりの男子シングル2連覇を達成して以来、羽生結弦はすでにGOAT(グレイテスト・オブ・オール・タイム)と広く呼ばれるようになった。が、今まで取ったことのない四大陸の金メダルを今大会で手に入れたことによって、男子史上初のスーパースラム(ジュニアとシニアの主要国際大会を完全制覇すること)を達成でき、錦上に花を添えた。
この完全制覇に導いたのも、2つの伝説的なプログラムだった。ショートプログラム(SP)は「バラード第1番」。これまでに何度も世界最高得点を記録した名プロだが、羽生はまた自分を超え、またもや言葉に絶するような完璧な演技で記録を更新した。本人はただ「疑問のない演技ができてよかった」と淡々とコメントしたが、いや、フィギュアスケートのパンテオン(万神殿)に入るような、たとえ4シーズン目に入っても厭きることなく見たい、何年経ってもまた見たい素晴らしい演技だった。
フリースケーティング(FS)は「SEIMEI」。演技の前に「いつもと違ったことがあった」と説明し(注:リンクに穴を発見した)、演技に完全に入り込めなかったと話したが、それでも十分素晴らしい演技だった。課題としていた冒頭の4ルッツは残念ながらステップアウトになったが、その後の4サルコウは鮮やかだった。次の3アクセルを完璧に降りた直後に、また3フリップを軽々と跳んで、アクセルに相当の自信がないと絶対に挑めない難しい構成だった。プログラムの後半に入ると、体力の影響か、2本の4トゥループともミスをしてしまったが、最後の3アクセルのコンビネーション・ジャンプとスピン、ステップを見事に実行し、高い技術点を積み重ねた。曲が30秒短くなったが、羽生がこのプログラムに注いだ力と感情は変わらず、音楽が終わった瞬間、それを感じた観客が湧き上がった。言うまでもなく、SP、FS両方とも1位となった羽生はようやく4度目の出場で四大陸の優勝を飾った。
演技後の記者会見で、スーパースラムを達成した王者は、「とりあえずほっとしている」と心境を語り、「やっと取れてよかったなと思います」と達成感に言及した。でもやはりFSの演技は悔しそうで、「自分らしいものになったなと言えるように滑りたいと今思っています」と課題を上げた。この生きる伝説の今後の演技も、とても楽しみだ。
2位 ジェイソン・ブラウン(アメリカ)
銀メダルに輝いたのは、氷上の芸術家として知られるジェイソン・ブラウン。SPでは不得意の4回転を回避。3回転ジャンプからなる構成を完璧にこなし、得点を最大限に伸ばして3位に。
注目のFSは、「シンドラーのリスト」。SP後、ブラウンは「自分にとって意味が重大なプログラムですので、エモーショナルな演技を見せ、心と魂を込めて滑りたい」とFSについて語った。まさにそのとおり、ブラウンは細部まで行き届く手足の動きと繊細な表情の変化で、物語の悲しみ、苦しみ、そして希望など、様々な感情を観客に伝え、見るものの心を揺さぶった。4回転で失敗したが、演技の美しさにまったく響かず、出場した全選手の中で一番高い演技構成点を獲得した。その他のエレメンツは全部見事で、FS、総合得点共にパーソナルベストを叩き出し、2位に浮上した。
演技後、ブラウンは「今日の演技にとても満足しています。ノーミスで滑りたかったが、トゥループでミスしたので悔しかった。でもその後気を改めて、集中して自分のベストを滑りきれたことは、誇りに思います」と笑顔で話し、「今の練習は正しい方向に向かっていると信じています。世界選手権で絶対に4回転を成功させたい」と意気込みも示した。
3位 鍵山優真(日本)
見事に銅メダルを獲得したのは、日本の新星・鍵山優真。まだ主にジュニアレベル戦っている選手だが、今シーズンの全日本銅メダリストだけあって、普段ジュニアの大会を見ない方々からもある程度期待を寄せられたが、その期待を遥かに超えた見事な演技を披露した。
SPでは協奏曲「宿命」ピアノの音に合わせ、滑らかなスケーティングと、自然と音楽を表現できる才能を見せ、90点超えのパーソナルベストを叩き出した。
注目のFSは映画「タッカー」のサウンドトラックからのリズムが軽快なジャズ曲だが、鍵山は演技の最初から最後まで音楽に合わせたスピードと演技へのエネルギーを保って、観客を楽しませた。本人も「楽しくお客さんと一緒に笑顔で演技をすることができたので、とてもよかったなと思っています」と振り返ったとおり、本当に見ると笑顔になるような演技だった。また、余裕のあるジャンプと軽やかな滑りを見せ、底知らぬポテンシャルを感じさせた。その結果、FSではまたもやパーソナルベストを大幅に更新し、総合得点で3位に輝いた。
メダリストの記者会見で鍵山は「メダルを獲得できるなんて、本当に思ってもなくて、すごく、正直びっくりしているんですけど、ここまで努力してきて、1つのご褒美だと思いますし、本当にびっくりしました」と驚きが抑えきれないようだったが、今大会で全日本選手権での成功は偶然ではなかったと証明し、世界に名を知らしめたと言えよう。
4位以下は中国のボーヤン・ジン、地元韓国のジュンファン・チャ、カナダのナム・グエンと続いた。どの演技も完成度が高く、とても見応えがあり、ぜひ見逃したくない。
さらに今大会、宇野昌磨に代わって出場を果たした友野一希にも拍手を送りたい。SPでは4回転を2本も成功させ、ほぼノーミスの演技をまとめてパーソナルベストを更新した。しかも「Chroma - The Hardest Button to Button」という曲に語られた少年の悩みや葛藤をうまく演出した。
FSの曲は映画「ムーラン・ルージュ」より、スケーティングや表情を一変し、大人の滑りを見せた。着氷が少し乱れたジャンプやパンクしたジャンプもあったが、それでもうまく演技をまとめて、またパーソナルベストを叩き出した。自分らしく滑りきり、さらなる成長を見せた友野の今後の活躍に期待したい。
文:ウェイション
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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