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フィギュア スケート コラム 2020年2月17日

レビュー:ISU四大陸選手権2020女子シングル

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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近年の女子シングル競技は、間違いなくロシア勢が牽引しているが、今年の四大陸選手権を見て、四大陸女子も先頭に追いつくように正しい方向に走っていると強く感じた。金メダルを取った紀平梨花をはじめ、ヨン・ユと樋口新葉3人も今大会で3アクセルに挑み、さらに坂本花織が4回転に挑戦したことから、技術面の進化が一気に加速したと言えよう。一方、ブレイディ・テネルやイェリム・キムなどの選手は大技がないが、安定したエレメンツと表現力に優れた演技でいい順位につけることもできた。まさに「百華百彩」の大会だった。


1位 紀平梨花(日本)

金メダルに輝いたのは、全日本女王紀平梨花。ディフェンディング・チャンピオンとして迎えた今大会では、自分の代名詞でもある3アクセルに加え、シーズン前半にはケガで回避していた3ルッツをもショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)両方に入れることで、出場した全選手の中で最高難度のジャンプ構成に挑んだ。SPでは、3つのジャンプを全部鮮やかに決め、好調子を示した。FSでは、1つ目の3アクセルでパンクして1回転になったが、その後驚異のリカバリー力を発揮し、臨機応変にプログラム後半に3-3の連続ジャンプを2つも入れて、基礎点を最大限に上げた。結果、大きなミスが1つあっても一番高い技術点を叩き出し、圧倒的な優勢で男女通じて初となる四大陸選手権連覇を果たした。

演技後、紀平自身も「1つ目のアクセルがシングルになってしまって、すごく焦りがあったけど、後半のリカバリーで大幅に構成を変更して、それがうまくいったのが収穫だったなと思います」とそのリカバリー力をポジティブに捉えた。

しかし、彼女を連覇に導いたのは決して技術力だけではなかった。今シーズンのプログラムの使用曲、SPの「Breakfast in Baghdad」もFSの「International Angel of Peace」も、フィギュアスケートにおいては非常に珍しい選曲で、エキゾチックで独特な味がする簡単には表現ではない曲だ。しかし紀平は音楽の抑揚に合わせて、正確なステップを踏みながら上半身を大幅に動かして、ユニークな振り付けと曲に入り込んだような表情で独特な世界観を作り出した。特に、2つのプログラムのステップシークエンスとも、技術的にレベル4の条件を満たしただけでなく、1つ1つの動きが音を捉えて、音楽と滑りが一体になった。本当に素晴らしい表現力だった。

2位 ヨン・ユ(韓国)

銀メダルを獲得したのは地元の新星、ヨン・ユ。先月ユースオリンピックに出場し、見事に優勝したばかりのユは、今大会に臨んで「正直少し疲れた」と感じながらも、「地元開催なので、観客から熱い応援を送っていただき、本当に力になった」と話した。まさにそのとおり、彼女の演技にはまったく疲れが見られず、むしろスピード感があり、とてもパワフルで印象的だった。

SPの「ロミオ・アンド・ジュリエット」では、冒頭に3アクセルに挑んでステップアウトになったが、残りのエレメンツをうまくまとめて3位についた。FSではまた3アクセルに挑戦し、今度は見事に成功した。その後、後半の3フリップ以外、他のジャンプをすべてきれいに着氷させ、紀平に肉薄する技術点を叩き出した。そして、ミュージカル「エビータ」のメドレーに合わせ、バラード曲のときは滑らかなスケーティングを見せ、ダンス曲のときは軽快に体を動かすなど、エビータの物語をうまく表現した。その結果、演技構成点も8点台後半の高い評価をもらい、FSで2位につき、総合順位も2位に浮上した。

演技後、ユは「地元開催の大会で、正直プレッシャーを少し感じましたが、銀メダルを獲得できてうれしいです」と心境を語り、さらに表彰式で憧れていたキム・ヨナに記念品を渡してもらったエピソードについても「ヨナに次いで(ISU選手権大会で)メダルを獲得なんて、光栄に思います。憧れていた選手に(大会の)マスコットを渡していただき、本当に嬉しかった」と笑顔で話した。この15歳の新星には、今後も注目していきたい。


3位 ブレイディ・テネル(アメリカ)

1、2位の選手のように3アクセルなどの「大技」は持っていないが、安定感抜群のブレイディ・テネルは、安定感を武器に、ようやく自身初となるISU選手権大会のメダルを手に入れた。

SPではすべてのエレメンツを高い質で完成させ、特にスピンとステップの出来栄え点には+4、+5がずらりと並び、自己ベストを更新して2位に。FSでは、冒頭の3ルッツ-3トゥループのコンビネーション・ジャンプで乱れたが、すぐ気を改めて残りのエレメンツを次々とクリアした。特筆すべきのは、FS「ニュー・シネマ・パラダイス」で見せた、今シーズン飛躍的な進歩を遂げた表現力だ。今まで「体が硬い」「ロボットみたい」と散々指摘されてきたテネルだが、もともときれいな姿勢に加え、今や手足の動きも表情も柔らかくなり、スケーティング・スキルをも向上させた。その結果、高い技術点に加え、出場した全選手の中で、一番高い演技構成点を稼いだ。総合得点は3位になったが、「今日の演技にとても満足しています。冒頭のコンビネーションに入るときは少し焦って、ミスしてしまいましたが、すぐに気を取り直してプログラムを滑りきりました。そのリカバリーに対しても満足しています」と笑顔で演技を振り返って、「練習を積み、世界選手権でもっといい演技を見せることを楽しみにしています」と意気込みを示した。

4位 樋口新葉(日本)

2年ぶりにISU選手権大会に復帰した樋口新葉は、SP、FSとも自己ベストを更新して4位に入賞した。SPはほぼノーミスで、技術的にも優れた演技だったが、彼女の力強い滑りと表現力に注目したい。曲は「Bird Set Free」。傷ついた鳥がようやく勇気を見つけたように、自分も何も恐れずに自由に飛ぶというような歌詞が、「自分の心境に似ている」と樋口が言ったように、特別な思いが込められたプログラムだ。怪我や挫折を乗り越えて復帰した彼女のこの演技は、本当に感動的だ。

FSでは冒頭に3アクセルに挑戦して転倒したが、回り切ったことが「次につながる」と本人は前向きに捉えた。その他、前から難題だった3サルコウがダブルになった以外、他のエレメンツをうまくまとめた。さらに、フラメンコの振り付けを入れながら手足を大幅に動かし、華麗に名曲「ポエタ」を演じた。SP、FSとも5位についたが、総合得点で4位となった。

5位 坂本花織(日本)

続いて5位についたのは、2018年の四大陸女王坂本花織。SPでは躍動感が溢れる曲「No Roots」のリズムに合わせ、ダイナミックなジャンプを見せ、小さいミスがありながらもシーズンベストに近い得点で4位に。FSでは、果敢に4トゥループに挑んだが、回転不足で転倒した。大技をやって体力を使いすぎたか、その後のいくつかのジャンプで着氷が乱れ、3連続ジャンプでパンクしたミスもあった。しかし、映画「マトリックス」のサウンドトラックに合わせ独特な振り付けを見せ、「バレットタイム」と呼ばれる名場面を再現するなど、観客を楽しませながら、8点台後半の演技構成点を獲得した。FSでは8位に落ち込んだが、総合得点で5位となった。

他にも、カレン・チェンやイェリム・キム、ウンス・リムなど、完成度の高い演技が続出で、本当に見どころ満載だった「百華百彩」の今大会、ぜひご覧いただきたい。

文:ウェイション
代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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