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フィギュア スケート コラム 2020年2月14日

レビュー:ISU四大陸選手権2020アイスダンス

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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ここ数年の四大陸選手権のアイスダンスを振り返ってみると、実力が近いトップ・カップルが多く、最後までならないとメダルの行方がわからないというのが大会の一番大きな見どころだと言えよう。今年もこのとおりで、表彰台をめぐる争いが非常に激しかった。それだけでなく、シーズンベストの好演技が続出し、出場した16組の中でなんと11組もリズムダンス(RD)と総合得点の順位が入れ替わったなど、見る側をワクワクさせたいい大会だった。

1位 マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ(アメリカ)

RDから逆転を成功させ、金メダルに輝いたのはチョック/ベイツ組。RDの曲はジャズの名曲「Too Darn Hot」、題名通り情熱が溢れるナンバーで、二人はリアル・カップルならではのケミストリーを最大限に利用し、ダンスホールで踊りながら恋に落ちるカップルの場面を、色気を加えながら存分に演出した。「会場がとても寒いから、熱々な演技で会場をワクワクさせたいわ」とチョックが演技後にコメントしたように、観客たちはもちろん、ジャッジたちもこの演技に魅了させ、高い評価を付けた。85.76の得点は「チョクベイ」のパーソナルベストで、RD1位のハッベル/ダナヒュー組にわずか0.19の差だった。

フリーダンス(FD)の「Egyptian Snake Dance」は、まさに彼らが今シーズンの大活躍を果たせた鍵だ。ときに神秘的でときにアップテンポな曲に合わせ、二人は「一人の旅人が蛇に出会って、お互いを誘惑する」という物語を、巧妙な振り付け(特にチョックは蛇をモチーフとした動きが多くある)と色気たっぷりの表情を見せながら演じてくれた。「観客たちに私たちと一緒にエジプトまで旅立ってもらいたい」とRDの演技後に宣言したとおり、会場がミステリアスな雰囲気に包まれ、演技の後は大歓声が湧き上がった。

演技途中、チョックが一瞬気が散らって転倒したアクシデントもあったが、さいわいつなぎの部分にあって、エレメンツの得点に影響がなかった。何よりも、サーキュラー・ステップシークエンスがレベル3になった以外、他のエレメンツは全部レベル4の評価と高い出来栄え点を獲得したことで、技術点を大きく伸ばし、他の組と差が開いた。その結果、FDと総合得点が1位となり、2連覇を果たした。

2位 パイパー・ギルス/ポール・ポワリエ(カナダ)

去年から順位を上げ、銀メダルを獲得したのは新カナダ王者ギルス/ポワリエ組。RDはミュージカル「Mack and Mabel」より、軽快な曲に合わせ、二人らしきコミカルなプログラムだ。安定した演技でシーズンベストを更新し、3位に付けた。

FDの曲はスローテンポの三拍子のバラード曲、Joni Mitchellの「Both Sides Now」。二人が今までやっていたこととかなり違う曲なので、選んだ理由を聞いてみると、「今年の世界選手権は地元カナダで開催されるから、FDは地元の人々のために滑りたいと最初から決めて、カナダ出身のアーティストの曲を使うことにしました。すると、ポールと私が最初に思いついた曲はこれで、すぐ決めました」とギルスが説明した。曲の歌詞が想像力に富んでいて、空や雲の描写が多くあるのに対して、2人もリフトやコレオステップをうまく活用し、ときには空を仰いでいる、ときには空を飛んでいるような振り付けをプログラムに入れた。さらに、2人の衣装まで楓の色であり、本当に所々に地元への思いを込めている。技術的にも一貫として安定で、70点を超えた技術点を獲得したことでFD2位となりにつき、総合得点も2位に浮上した。このいい結果を受けたギルスは、「世界選手権のときも、観客の皆さんにぜひこのプログラムを楽しんでいただきたい」と嬉しく語った。來月の世界選手権大会、ますます楽しみだ。

3位 マディソン・ハッベル/ザカリー・ダナヒュー(アメリカ)

「今シーズンのパターンダンスはフィンステップだとわかったとき、前から滑りたかったマリリン・モンローの曲に即決した」と本人が話したように、赤いドレスにクラシックな髪型をして、RDを滑ったときのハッベルは、まるでハリウッドの黄金時代の映画から出てきた大女優のようだった。一方、ダナヒューは彼女に魅了された役で、二人のダンスにはまさに大人の魅力が溢れていた。それだけでなく、ステップが正確で、リフトもエフォートレスに見えたこの演技は、RDで一番高い技術点を獲得し、1位についた。

しかし、RD後の記者会見でハッベルの「アイスダンスはすでに極めた完璧さが求められる時代に突入した」とのコメントは、まさにFDの成り行きを言い当てた。映画「アリー/スター誕生」のストーリーを再現した2人の演技は、決して悪くはなかった、いや、どちらかというとなかなか素晴らしかったが、ツイズルとワン・フット・ステップシークエンスでレベルの取りこぼしにより、技術点に大きな損が出てしまい、上位2組と差が開いた。激戦の中、総合得点が3位に落ちた。FD後の記者会見で、ハッベルは演技を振り返って、「私たち2人ともパワフルなスケーターで、映画の主人公にすごく共感し、彼らのロックスターならではの豪快さや放浪のライフスタイルを表現したかった。でも力が入りすぎて、一瞬コントロールできなくなってしまった」と、ミスについて説明した。一方、表情はまだがっかりしているように見えたが、ダナヒューは「自分の実力はこれだけじゃないとわかっているので、今大会で見つかった課題をしっかりと解決し、世界選手権で最高の演技を目指したい」と前向きな姿勢を見せた。

上位3組の演技、どれも見どころいっぱいで見逃せないが、チーム・ジャパンの演技もぜひ見ていただきたい。全日本王者の小松原美里/ティム・コレト組はRDでは最後のツイズルで少しミスが出た以外、他のエレメンツをしっかりと実行し、まとまった演技でシーズンベストを更新した。FDは(世界選手権のフリー進出が懸念される中)「今季最後のフリーになるかもしれないので、自分ができるベストな演技を届けたい」と決意を抱きながら滑りきった結果、FDもシーズンベストを更新した。ぜひこの勢いに乗って、世界選手権でFDへ進めるように頑張ってほしい。

今季新しく結成された深瀬理香子/張睿中組は、カップルとしてISUチャンピオンシップ大会への初出場を迎えた。新しい組にしては、2人の相性がとても良く、表現力も優れていた。もちろん、技術的にまだまだ足りていない部分があるが、2人の演技に大きなポテンシャルを感じさせた。この新しいカップルの未来を、ぜひ見守っていきたい。


文:ウェイ・ション
代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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