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【レビュー:ISU欧州フィギュアスケート選手権2020 アイスダンス】金メダルに輝いたシニツィナ/カツァラポフ組。「ガブリエラやギヨームと肩を並べるなんて、まるで不可能のように感じていました」
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部得点差は小さかったが、波紋は大きかった。ロシア勢が全てを独占した2020年欧州フィギュアスケート選手権で、他の3カテゴリの結果が予想通り、もしくは想定の範囲内だったのだとしたら、アイスダンスの成り行きは「驚き」だった。
金メダルに輝いたのは、ヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組。そして、わずか0.14点差で2位に甘んじたのは、他でもない、欧州6勝・世界4勝のガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組だ。
1位 ヴィクトリア・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ(ロシア)
慈しみ合うように寄り添いながら結果を待っていた2人は、優勝が決まった瞬間、固く抱き合った。結成から6年。2人で勝ちとった初めての大きな国際タイトルだった。
「表彰台の真ん中に立てるとは想像もしていませんでした。ガブリエラやギヨームと肩を並べるなんて、まるで不可能のように感じていましたから」(カツァラポフ)
昨ワールドでは表彰台の2番目の段から、パパダキス/シゼロン組を見上げた。リズムダンス(RD)4.48点・フリーダンス(FD)6.41点と、得点差も大きかった。
あれから10ヶ月後。シニツィナ/カツァラポフ組はRDでは0.05点差に迫り、FDでは逆に0.19点のリードを奪った。簡単に10点満点を出さぬように..とジャッジたちに指示が出ていたと言われるプログラムコンポーネンツでさえ、フランス組8つに対し、9つの満点をもらった。「アンタッチャブル」だと思われていたパパダキス/シゼロン組を、ついに追い越した。
GPファイナルを最下位で終えた悔しさが、2人を奮起させた。
「いい教訓になりました。失敗から学んだんです。怒りに燃えて今大会に乗り込みましたし、ハングリーな気持ちでした」(シニツィナ)
年末のロシアナショナル制覇後も、ほとんど休まず、プログラムを磨き上げることに集中したという。いくつか改良もほどこした。RD「Singin’ in the Rain」ではスーツを着ないほうがいい、とアドバイスされ、カツァラポフは衣装を変えた。つまりシンプルな黒いタートルネックの男性と、雨色のドレスの女性が、氷の上を流れるように駆け回る。見る者になんともいえぬ多幸感をもたらしてくれるのは、2人が心から楽しそうに踊っているからかもしれない。
「内側から感情が湧き上がってくるんです。気持ちを高揚してくれるこの曲が大好き」(シニツィナ)
FD「Songs My Mother Taught Me」は音楽に少しアレンジを加えた。「気が付かない人のほうが多いと思いますよ」(カツァラポフ)というくらい、微妙な変化だ。例えばプログラム序盤の、ストレートラインリフトと共に曲調が変わる部分。バイオリンの叙情的な音色を、まるで追いかけるように、ピアノの旋律が付け加えられている。2つの異なる楽器が、ひとつの美しいメロディを作り上げる。まるでシニツィナ/カツァラポフ組の関係のようだ。
「今日は全てを氷の上に出し尽くし、そして素晴らしい成果を手にしました。でもここで立ち止まったりしません。もっと前へ進みたい。僕たちには目標があります。本気でリーダーになりたいんです」(カツァラポフ)
世界選手権まで2ヶ月、冬季五輪まで2年。自らの実力でアイスダンス界のパワーバランスを変えた2人は、次なる次元へと進み出る。
2位 ガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン(フランス)
欧州選手権6連勝で、史上最多優勝記録に並ぶはずだった。しかし8分もの長い待ち時間の果てに、2位の判定が下された。
2015年フランス選手権で優勝して以来、ここまでパパダキス/シゼロン組の前に立ちはだかったのは、ただテッサ・ヴァーチュ/スコット・モイヤー組だけ。カナダの偉大なるカップルが、2度目の五輪優勝と共に競技人生を終えると、フランス組は文字通り「無敵」になった。
「でも、無敵の人間なんて、存在しないんです。いつかはこんな日が来るのだと分かっていました。どれほど、そんなことは起こらないで欲しい..って願ったところで、避けることはできません」(シゼロン)
2018年世界選手権以来の連勝がストップし、さらに2016年フランス選手権以来続いてきた「FD1位」も打ち止めとなった。
「もちろんがっかりしています。でも、いつも勝てるわけではない、という事実を受け止めています。きっと私達には、こんな教訓が必要だったんです」(パパダキス)
このところフランスチームに問題が立て続けに起こり、さらには男子でメダルが期待されたケヴィン・エイモズがショート落ち。まだ20代半ばでしかないパパダキス/シゼロン組の両肩には、大きな重圧がかかったに違いない。しかも年頭から、パパダキスは心身の疲労に悩まされていた。「練習も欧州選手権も無理に出なくてもいいんだよ」とシゼロンやコーチ陣が声をかけたほどに、事態は重大だったそうだ。
そんな苦悩など一切感じさせず、欧州選手権のリンクでは、あの楽しく激しいRD「Fame」を笑顔で踊りこなした。ちなみに「バカバカしくて、最初は着るのにかなり抵抗があった(パパダキス)」というピンク&水色の衣装は、毎回ちょっとずつ変化が加えられてきたが、どうやら今回のバージョンが最終形らしい!
あまりに冗談の度合いがキツすぎて拒否反応を受けるんじゃないか..とシーズン序盤は不安だったというRDに対して、FD「Find Me」もまたひどく実験的だ。「詩」の朗読にのせて作り上げられる静寂で哲学的な世界は、きっとエレメンツのミスやスコアだけで評価されるべきものではない。
2015/16シーズンにアイスダンス界に新しい波を起こしたパパダキス/シゼロン組にとって、そもそも今季は、2つの革命的プログラムで乗り込んだ冒険のシーズンなのだ。今回の敗北で「アスリート魂に火がついた(シゼロン)」2人が、世界選手権で完成形を披露してくれるであろうことを、楽しみに待ちたい。
3位 アレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン(ロシア)
RD4位から逆転を成功させ、3年連続4度目の欧州表彰台乗り。
「得点や表彰台なんて考えずに滑りました。ただ観客のみなさんの、あたたかいサポートに、背中を押してもらいました」(ステパノワ)
それにしても今シーズンの彼らのRDの衣装は、いつまでも愛でていたいほど最高だ。ステパノワは頭の先からつま先まで(金髪→真紅のドレス→長い脚)、ゴージャスそのもの。ブキンは正統派燕尾服かと思いきや..チラリと見える裏地が赤。なんともセクシーなのだ。
FD「Primavera」のシックな黒いコスチュームは、逆に2人の素材の美しさが際立つ。しかもステパノワの長い脚を大胆に見せつけるリフトは、FDのほうが見応えあり。単に綺麗なだけではなく、力強さに溢れる。
4位 シャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファッブリ(イタリア)
一方のイタリア組はRD3位から一歩後退し、2年連続の表彰台乗りは果たせなかった。
ただ怪我のせいで、右手が思うように使えない状態でシーズン前半戦を乗り切ったファッブリにとって、プロテクターなしで滑れたことが一番嬉しかった。シンプルなホールドや、単なるトランジション動作さえも、ようやく普通にできるようになったとのこと。
「今大会の目標はメダルではないんです。自分たちの思い通りの滑りを実現することでした。つまり今大会で見せたようなパフォーマンスです。だから幸せです!」(ファッブリ)
しかもRDは、シーズン途中に(GP大会2戦目のNHK杯から)「Grease」に変えたから、今回ついにキレッキレでノリノリに仕上がった。今大会8位のスペイン組オリヴィア・スマート/アドリア・ディアスのRD「Grease」との比較も楽しいし(衣装がキュートなのは断然シャルレーヌ!)、実は2016/17シーズンSDでも「Grease」を使用した時の振り付け比較も楽しかったりする。
またFDではデヴィッド・ボウイの音楽と共に、今までとはまるで違う印象のギニャール/ファッブリ組を見せてくれる。
今季スケートアメリカでGPシリーズ初表彰台乗りを果たしたライラ・フィアー/ルイス・ギブソン(イギリス)は、過去最高の5位入賞を成功させた。FD「Vogue」はとにかく疾走しながら踊りまくる!気持ちいいほど何度でもぐるぐる回る!
また2019年5月からカップルとして活動を始めたばかりの折原裕香/ユーホー・ピリネン組(フィンランド)は、2人にとって初めてのヨーロッパ選手権で、FD進出→18位という立派な成績を残した。「今までにない良い演技が出来ました。練習以上の出来です!」(ピリネン)、「自分たちに10点をつけてあげたいです」(折原)と2人はフィンランドメディアに語っている。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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