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フィギュア スケート コラム 2020年1月23日

全米フィギュアスケート選手権2020 女子のみどころ

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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ここ数年、女子フィギュアスケートの焦点はロシアや日本に当てられているが、昨年の全米メダリスト、アリサ・リュウ、ブレイディ・テネル及びマライア・ベル3選手は、グランプリシリーズ(リュウはジュニア)やチャレンジャーシリーズなどのハイレベルな大会で、ロシア女子の覇権に挑戦し、アメリカ女子の存在感を示している。今年の全米も、この3人による三つ巴の戦いになる予想だ。



昨年の大会で、アリサ・リュウは13歳にして3つの3アクセルを着氷し、世界を驚かせながら初戴冠した。今シーズンのショートプログラムは昨季からの持ち越しで、構成と振り付けに大きな変更がなく、安定感と完成度の向上を図る。一方、フリースケーティングには、新たに習得した大技4ルッツを入れ、さらなる高得点を目指す。その結果、ジュニア・グランプリ2戦とも金メダルを収め、ファイナルでは銀メダルを獲得した。しかし、ファイナルのフリースケーティングでは、2本の4ルッツがともに回転不足を取られ、減点が大きかった。それに対して、リュウは「1本にしとけばよかったが、やっぱり試合を楽しめたかった。挑戦して楽しかった。」と語り、積極的な姿勢を示した。今大会でも4ルッツを入れる予定だが、成功させれば、全米選手権女子史上初の4回転になる。また、ファイナルの後、リュウはイタリアにしばらく残り、元世界女王のカロリナ・コストナーの元でスケーティングと表現力の指導を受けたという。今大会どんな演技を出し、どんな成長を見せてくれるのか、本当に楽しみである。

一方、4回転や3アクセルなどの大技を持っていないが、2018年の全米女王ブレイディ・テネルは質の高いエレメンツと抜群な安定感を以て、国際大会で好演技を出し続け、実績を重ねた。さらに、グランプリ・ファイナルへの進出を果たし、5位に入ったことで、世界のトップスケーターとしての地位を確立した。特に注目すべきはやはり表現力の大きな成長だ。今まで「体が硬い」「感情が足りない」と指摘されてきたテネルだが、今シーズンのプログラム、特にフリースケーティングの「ニュー・シネマ・パラダイス」のバラード曲に合わせて滑ると、手足の力加減を程よくコントロールでき、しなやかさがだいぶ増し、表情も柔らかくなった。その結果、今までの高い技術点に加え、演技構成点も徐々に上げてきた。「大技」は持っていないが、そんな進歩を遂げた彼女は、今大会でノーミスの演技を2つ揃え、成熟した表現力を見せれば、王座奪還が決して不可能ではない。



昨年の銅メダリスト、シーズンベストがテネルまで僅か3点しか差がないマライア・ベルも優勝候補である。今シーズンのグランプリ・シリーズでは2戦とも銅メダルを収め、高い技術力と安定感を魅せたが、彼女の最大の「武器」は、なんと言っても観客を引き込む力であろう。トレーニング・メイトだったアダム・リッポンが振り付けたリズム感あふれるショートプログラムでは、女性らしい可愛さとセクシーさを存分演出してくれるが、フリーの「ハレルヤ」ではまたしっとりとした雰囲気を醸し出し、見るものを魅了する。この2つのプログラムは絶対に見逃せない。 今シーズンで収めた実績を見て、この3選手が表彰台に一番近いと考えられるが、他にも何人かの有力選手が挙げられる。

2017年の全米女王たるカレン・チェンはケガで昨年の大会を欠場したが、オフシーズンからグランプリシリーズにかけて徐々に調子を上げ、2年ぶりに戻ってきた全米選手権でどんな演技を見せてくれるのか、実に楽しみだ。



そしてアンバー・グレンやスター・アンドリュース、ハンナ・ハリル(田村花亜)などの実力者もおり、完璧な演技を2つ揃えれば、4人まで上がれる全米の表彰台を十分狙えるであろう。



最後に忘れてはならないのは、ここ数年自分自身との戦いを勝ち抜け、ようやく今大会に戻ってきた元全米女王グレイシー・ゴールド。現地に入ってから、彼女は公開練習で3ルッツのコンビネーション・ジャンプをきれいに着氷するなど、心身ともいい調子を示した。待ち遠しかった彼女の復帰の舞を、一刻も早く見てみたい。


文:ウェイ・シュン

代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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