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フィギュア スケート コラム 2019年3月29日

ISU世界フィギュアスケート選手権大会 アイスダンスレビュー

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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アイスダンスは競技スポーツか?それとも単なる芸術か? 1952年の世界フィギュアスケート選手権で正式種目になってから、特に1976年の冬季五輪の正式種目となって以降、この論争が絶えることがなかった。

今大会を見ると、アイスダンスはやはり観るものを驚歎させる美しい芸術であり、ちょっとしたミスだけで順位が下る残酷な競技スポーツでもあると率直に思った。特にリズムダンスが終わった時点で、2位から8位までの点数差がなんと3点しかなかったので、勝負のフリーダンスは重圧の中で実力を出し切るメンタルの強さ、そしてレベルと出来栄え点(GOE)を取り尽くせるようなルールへの理解とボディコントロールが要求される修羅場となった。それこそ競技スポーツの真髄を表すのではないだろうか。

ガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組

そんな中で優勝したのは、最初から表彰台争いを占う議論から除外されるガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組だ。なぜなら、実力がダントツ1位なので、この結果は誰もが予想していた。それでも、彼らは今大会でさらなる進歩を見せた。それはフリーダンスでパパダキスが見せた自信あふれる姿だ。2014-15シーズンから世界の頂点で戦い続けた「パパシゼ」だが、長年間シゼロンの方に注目が集まることが多く、パパダキスは実力が極めて高い2人の中の「弱い」方だと思われることが多い。しかし今年のフリーは、本当に彼女の魅力を引き出せる最高のプログラムだ。マニアックな話になるが、難易度の高い片足ステップシークエンスをする時、彼女の体のエフォートレスさと自信に満ちる表情がとても印象的で、目が離せないほど美しかった。今大会で4回目の優勝を飾った2人だが、これからもこのように進化し続けるだろう。

ヴィクトリア・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組

「パパシゼ」と同じように、女性の方が大きな成長を見せたのは、銀メダルを獲得したヴィクトリア・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組だ。
5年前、2人がカップルを結成した時、カツァラポフはすでに五輪メダリストだったので、シニツィナは「本当に怖かった」と不安を吐露していた。言い方は悪いが、結成して最初の1、2年間、確かに2人のアンバランスさが顕著だった。ようやくここ2年間の演技で2人の「一体感」がどんどん増し、特に今年のフリーは管弦楽のクラッシックで、彼女の優雅な身振りととても相性が良い。今大会で見せたこの一皮抜けたような演技、絶対に見逃さないでほしい。

マディソン・ハッベル/ザカリー・ダナヒュー組

3位は2年連続表彰台に乗ったマディソン・ハッベル/ザカリー・ダナヒュー組。涙に終わった四大陸の悔しさを一掃し、リズムダンス、フリーダンスともノーミスの演技を揃え、しかもエレメンツでは全部レベル4が取れ、高いGOEをも稼いだ。特筆すべきのは、四大陸で振付が無効と認定されたフリーダンスの「ロミオ アンド ジュリエット」をところどころ直して、新しいものをまた入れた。よって、グランプリファイナル、全米選手権、四大陸、そして今大会で見せたフリーの演技はなんとそれぞれ違うものとなり、本当に見比べてみたい。

続いて4位はアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組。リズムダンスでは音楽とぴったり合う振付が印象的、フリーダンスはブルースロックに合わせて色気のある演技を見せた。今大会の重圧の中で出したこの素敵な演技を見て、世界ジュニア王者から大人のトップダンサーへと成長したなぁと改めて思った。

ロシア勢の台頭を強く感じた一方、世界選手権で9年連続5位入賞を達成したベテラン、ケイトリン・ウィーバー/アンドルー・ポジェ組と、7年連続トップ7に入った、6位のマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組の凄さも改めて感じた。特にウィーバー/ポジェ組が観客を自分の世界に引き込む感情たっぷりの表現力、そして「チョクベイ」がリズムダンスで作った緊張感とチョックが魅せた妖艶さは、やはりベテラン選手だからこそできるではないだろうか。技術面だけでなく、彼らの表情や表現にもぜひ注目してほしい。

7位のパイパー・ギルス/ポール・ポワリエ組と8位のシャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファッブリ組は、残念ながら、ちょっとしたレベルの取りこぼしと一瞬の動きの不安定さで上位に付けなかった。でもギルス/ポワリエ組のフリーダンスは本当に芸術品のように巧妙なプログラムだし、ギニャール/ファッブリ組の「ラ・ラ・ランド」はいつくかの映画のシーンを再現した面白いプログラムで、どちらも見逃せない。

日本代表の小松原美里/ティム・コレト組はリズムダンスで21位につけ、残念ながら目標としていたフリーダンスへの進出が叶わなかった。フリーまではあと1点足りなかっただけので、ぜひこの悔しさをバネに来年さらなる成長を遂げて、夢を実現できるように願いたい。

代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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