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Text by ウェイ・ション
平昌五輪からの一年間、女子シングルの勢力図に大きな変化が見られた。五輪女王のアリーナ・ザギトワを始め、4年間女子シングルの天下を治めていたロシア勢が失速する一方、技術力と表現力のバランスがよく安定感も抜群な日本女子が勢いに乗り、ロシア女子と拮抗する勢力となった。また、ジュニア世代がどんどん4回転を跳んでいる中、シニア女子も4回転へ挑戦し始めた。そんな中で行われる世界選手権大会は、実に観るものをワクワクさせている。
紀平梨花選手
ホームの舞台で最高の演技を
5年ぶりに日本で開催される世界選手権、一番注目を集めているのは、やはりホームで戦うこととなる四大陸女王紀平梨花、全日本女王坂本花織、そして昨年大会のメダリスト宮原知子からなるチーム・ジャパンであろう。
トリプルアクセルを武器に、グランプリファイナルと四大陸を含め、今シーズン出場した全ての国際大会を制覇してきた紀平梨花は、金メダルに最も近いところにいると考えられる。まだシニア一年生だが、これまでの試合でも初々しいというよりはいつも落ち着いていて、難しいジャンプに挑む。表現面でも大きな成長を遂げ、明確なストーリーがあるわけではないフリープログラムについてもしっかりと音楽の感覚を掴み、個性的な解釈と表現で力強い演技を届ける。実に素晴らしい。初出場となる今大会に臨む紀平は、「完璧な演技を揃えることだけを考えたい」と目標を掲げたが、誰よりも難易度の高い構成をクリアできれば、この大会は彼女の戴冠式になる可能性が高い。しかし、世界選手権はやはり格別なもので、初出場の選手にとって、プレッシャーもこれまでの大会と全く違う。ぜひ重圧に負けず、実力を出し切ってもらいたい。
坂本花織選手
全日本女王たる坂本花織も、意外にも世界選手権は初出場となる。先月の四大陸選手権はジャンプでミスしてしまい涙で終わったが、演技自体を見ると今シーズン目標としていた「大人」の表現力を着実に身につけた。四大陸から一夜明けて、深い赤の口紅を購入した。大人っぽさを出すよう、世界選手権のショートプログラムで使う予定にしてるそうだが、果たしてどんなメイクに仕上げてどんな表情を見せてくれるのか、本当に楽しみだ。「自分の演技がしっかりできたら、もっと強くなれるかなと思うので、この大会でしっかりベストを尽くせるように頑張りたい」と本人が意気込みを示したように、坂本らしい力強い演技を期待したい。
宮原知子選手
二人の「新人」と比べて、宮原知子は20歳にしてすでにベテランだ。ベテランだけに、スケーティングと表現力が高度に成熟している。特にフリープログラムでは全身を大きく動かしながら、細かい振付けでタンゴの抑揚と情熱を存分に表現していて、とても迫力がある。「大きな会場で試合ができるので、本当にすごく盛り上がると思うし、すごくワクワクしている」と彼女が言ったように、本番で最高のタンゴが踊れば、きっと観客をワクワクさせ、スタンディングオベーションを起こすであろう。
アリーナ・ザギトワ選手
女王の名誉に賭けて 王座返上へ
平昌五輪で優勝を飾った後、アリーナ・ザギトワの道はまさに山あり谷あり。世界最高得点を塗り替えるほどの好演技もあれば、欧州選手権でみせてしまったようなボロボロの演技もある。ほぼ2ヶ月間試合に出ていないので、今大会でどちらのザギトワが現れるか、みなその疑問を抱いていたが、大会初日の公式練習で3回転の連続ジャンプを次々と着氷し、良い調子と強気の姿勢を見せた。本番で好調子を維持し、五輪女王たる実力を発揮できれば、初優勝が十分狙える。
エフゲーニャ・メドヴェージェワ選手
元世界女王エフゲーニャ・メドヴェージェワも公式練習で好調子を見せている。オフシーズンに練習拠点をカナダに移転してから、調子が一時期低迷していたが、ロシア選手権から復調しつつある。トリプルアクセルのような大技は持っていないが、構成の難易度では競争力が十分あるので、彼女の強みである表現力に加えて、完璧な滑りを2つ揃えれば、表彰台はきっと射程圏内である。
ソフィア・サモドゥーロワ選手
欧州の新女王、ソフィア・サモドゥーロワのことも忘れてはならない。層が厚いロシア女子の「戦国時代」を勝ち抜いた彼女の最大の武器は、やはり抜群の安定感だ。それに加えて、スケーティングはまだ洗練されてはいないが、いつも情熱的に楽しそうにプログラムを滑っているので、会場を盛り上げる力を持っている。今大会でベストな演技ができれば、高得点を叩き出すに違いない。もしもトップ選手がミスしてしまった場合、表彰台乗りも不可能ではない。
今大会の女子シングルのテーマは間違いなく日露対戦だが、他国の有力選手にもぜひ注目したい。例えば、カザフスタンのエリザベット・トゥルシンバエワはISU公式大会でシニア女子選手初の4回転サルコウを成功させることができるのか。ブレイディ・テネルとマライア・ベルは最高のパフォーマンスをし、アメリカの3枠奪還を実現できるのか。ベルギーのルナ・ヘンドリクスがダークホースになるのか。実に見どころがいっぱいで、とても楽しみだ。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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