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ミラノから150キロほど離れたトリノで、橋大輔が日本男子選手初、そして、アジア初の世界王者になってから8年が経つ。
バンクーバー五輪シーズンが終わってからの7シーズン、男子シングルを制してきたのは、パトリック・チャン、ハビエル・フェルナンデス、そして羽生結弦、この3人だ。やがて平昌五輪も終わり、チャンが引退を告げ、フェルナンデスと羽生もしばらく休養することとなった。言い換えると、平昌シーズンの最後のこの大会で新世界王者が誕生する。若手選手が次々と台頭する4回転時代、王座を掴むのは誰になるのか、実に観客をわくわくさせている。
「表彰台の一番高いところ」を狙う宇野昌磨
宇野 昌磨選手
昨シーズンの世界選手権、今シーズンのグランプリファイナル、四大陸選手権、そしてオリンピック、過去一年間の国際大会で完成度の高い演技をし続け、すべての大会において銀メダルを獲得した宇野昌磨は、間違いなく今大会の優勝最有力候補だ。
滑らかなスケーティングと音符を一個一個感じ取れるほどの体の動きで再現する表現力に加え、プログラムで多種類の4回転を成功できるほど、技術力も優れている。今大会の公式練習から見ると、3種類の4回転に挑むようだが、臨機応変のフレキシビリティも持つ。ただし、メダルの色を変えるには、やはりジャンプでのミスとスピン、ステップのレベルの取りこぼしを最小限に抑えることが必要だ。それができれば、表彰台の一番高いところも十分狙える。
4回転時代を牽引してきたボーヤン・ジン
ボーヤン・ジン選手
現在の男子シングルの多種類4回転時代を引き起こしたと言われる“4回転の申し子”ボーヤン・ジン。
両足のけがでグランプリファイナルを棄権したが、復帰戦である1月の四大陸選手権でほぼノーミスのパフォーマンスで初優勝を飾り、先月のオリンピックでも4位入賞、いい調子を保てている。さらに注目したいのは、苦戦していた演技構成点も徐々に評価されるようになり、特に中国カンフーをイメージしたショートとの相性がとても良く、プログラムをうまくまとめれば、いい順位でフリーに臨むことができよう。フリーは後半でのスピードが落ち、繋ぎの部分がゆるくなることが若干目立つが、最後までベストを尽くし滑りきれば、3年連続表彰台に上がることも、メダルの色を変えることも十分可能だ。
今度こそ本当の実力を見せるか ネイサン・チェン
ネイサン・チェン選手
オリンピックのショートプログラムでは団体戦と個人戦の2度にわたり悔しい思いをしたネイサン・チェンだが、巻き返しを目指したフリーでは、4種類の4回転を6つも着氷させ、世界を驚かせた。
それだけでなく、ミスや乱れがありながらも、彼が叩き出した技術点は男子シングルにおいて歴代最高だった。このようなとてつもない才能と底知れぬポテンシャルの持ち主なので、五輪のプレッシャーから解き放たれた今大会では、平常心で挑み本当の実力を発揮できれば、また世界を唖然とさせる演技をすることが望めるであろう。
メダルを狙う精鋭たち
ヴィンセント・ジョウ選手
アメリカからのもう一人の4回転天才ジャンパー、先月のオリンピックで6位と大活躍したヴィンセント・ジョウは、世界選手権を初出場で迎えることになる。今や4ルッツを跳ぶ選手も少なくはないが、それでも彼のような軸が美しく、しかも手を上げながら跳ぶ4ルッツのコンビネーションジャンプは見逃せない。五輪の大舞台を経験し、自信をより付けた彼は、今大会でどんな演技をしてくれるのか、とても楽しみだ。
オリンピック7位と8位にたったロシア出身のドミトリー・アリエフとミハイル・コリヤダは、今大会ではともに先月の悔しさを晴らすような「リベンジ」を目指しているであろう。
アリエフにはぜひオリンピックのショートで見せたような高いジャンプと躍動感溢れる表現力をもう一度見せてもらいたいし、コリヤダにもぜひ質の高いエレメンツとエルビス・プレスリーの曲に合わせた一味違うリズム感のある振り付けで会場を沸かせてほしい。
最後に、来季日本で開催される世界選手権への3枠を確保できるよう、「プレッシャーというよりも、自分のためにやらなきゃいけないという気持ち」とコメントした田中刑事選手にも、「わくわく感と緊張感がある」と初出場となる世界選手権を楽しみにしている友野一希選手にも、満足の行くような好演技をぜひ期待したい。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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