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ついにこの日が来た。5度の世界王者、2度のオリンピック銅メダリスト、5度のグランプリファイナル・チャンピオンたるアリョーナ・サフチェンコがオリンピックの金メダルを手に入れる日がついに来た。サフチェンコ/マッソ組を始め、トップペアたちによるオリンピックにふさわしい好演技が続出し、歓喜の笑顔もあり悔し涙もある、見るものに興奮と感動を与える大会だった。
ブルーノ・マッソ選手/アリョーナ・サフチェンコ選手
1位 アリョーナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソ
235.90(SP:76.59/4位、FS:159.31/1位)
金メダルへの道は決して平易ではなかった。個人戦の緊張からか、ショート・プログラムではマッソが珍しくサイド・バイ・サイド・3サルコウが抜けて、点数を大きく損なった。他のエレメンツはきれいに成功したが、好演技が続出する中、ショートの順位が4位にとどまり、トップから6点の差を付けられ、念願の五輪優勝は絶望的に見えた。
それでも二人は諦めなかった。次の日、背水の陣でフリー・スケーティングを迎えたサフマソ組は、雑念を一切払拭し、演技の最初から高度な集中力を見せ、スピードを出しながら類を見ない高い質でエレメンツを次々とクリアした。また、元五輪アイスダンス王者たるクリストファー・ディーンが振り付けたこのプログラム「La terre vue du ciel」には、ダンスを彷彿とさせる動きやつなぎが多く、リフトの持ち上げとキャッチも巧妙に組まれている。これらの細かい振り付けをすべて完璧に行ったサフマソは、演技構成点ももちろん高く稼いだ。パーフェクトな演技をした結果、159.31点を叩き出し、自身が持つ世界最高得点を塗り替えた。そして、総合得点が235.90で1位に立ち、逆転優勝を決めた。
試合後、サフチェンコは逆転についてこう語った。「ショートの後に、周りの人に『大丈夫よ、去年の世界選手権を優勝した(羽生)結弦のショートは5位だったもん』と言われた。私たちは4位で、それよりもいいところにいたから、まだ勝てると自信を持ってフリーに臨んだ。」マッソも「私たちは金メダルのために氷に乗った。諦めるわけがなかった。今日は金メダルにふさわしい演技をし、世界記録をも破った。4位から1位になるなんて、まだ信じられない」とコメントした。
5度目の挑戦で、3人目のパートナーとようやく五輪表彰台の一番高いところに登ったサフチェンコ。順位が確定した直後で涙をこぼしたシーンも、金メダルを胸にかけ「これは最高の瞬間だ」と感極まる発言も、そしてこの大逆転も、人々の胸を打つであろう。
ツォン・ハン選手/ウェンジン・スイ選手
2位 ウェンジン・スイ/ツォン・ハン
235.47(SP:82.39/1位、FS:153.08/3位)
初出場を果たした二人はショート・プログラムでノーミスな演技を出し、82.39点と歴代2位の高得点をマークし、現世界王者たる貫禄を見せた。
しかし、オリンピックにはやはり魔物が棲んでいた。「トゥーランドット」の音楽が始まると、いつも果敢に滑る二人の動きに慎重さが見られ、大技4ツイストを完成した後に挑んだサイド・バイ・サイドのコンビネーション・ジャンプでハンがすっぽ抜け、その後の3サルコウではスイの着氷が乱れ、2つのエレメンツともマイナスのGOEを付けられた。気を取り直し、プログラム後半の2つのスロー・ジャンプで満点のGOEを稼いだが、ペアスピンと最後のリフトでレベルを取りこぼし、技術点を損なった。ハイレベルな戦いで、これらの細かいミスが響いて、スイ/ハン組が結局フリーで3位につけ、総合2位に終わった。
試合後、スイは取材エリアで涙をこぼしながら「本当に残念だった。(点差は)ちょっとだけだった」と話し、ミスは大会直前で足のけがと炎症が出たため、練習不足によるものだったと自己分析した。ハンは「やはり経験不足だった。まだ私たちのコーチのレベルになっていません。まだまだ頑張らなきゃ」と未来へ視線を向けた。取材の最後に、気持ちが落ち着いたスイは「今日の結果は次の北京五輪へのモチベーションとなった。待っていて、次の4年間、世界は私たちのものよ」と強気を見せた。
エリック・ラドフォード選手/メーガン・デュハメル選手
3位 メーガン・デュハメル/エリック・ラドフォード
230.15(SP:76.82/3位、FS:153.33/2位)
銅メダルを獲得したのは、2015と2016年の世界王者、カナダのデュハメル/ラドフォード組。団体戦でカナダの金メダル獲得に全力を尽くしたデュハラド組は、わずか3日後に行われた個人戦でも全く疲れを見せず、大きなミスなくショート・プログラムをまとめ、3位に付けた。フリー・プログラムでは、アデルの「Hometown Glory」の歌声で二人はグローリー(栄光)の瞬間を迎えた。それはプログラムの3つ目のエレメンツ、スロー4回転サルコウでデュハメルが着実に氷に降りた瞬間だった。オリンピック史上初めて成功したスロー4回転だった。この大技を完成した後も二人は気を抜かず、残りのエレメンツを高い質でクリアし、プログラムを滑りきった。その結果、自己ベストに迫る153.33点を叩き出し、総合3位に付け、念願の個人戦メダルを手に入れた。
「このような素晴らしいフリーで今大会を締めくくることができて、本当に良かったと思う。銅メダルを取れて、何よりも嬉しい。」ラドフォードは試合後の記者会見でこう語った。デュハメルも「銀メダルや銅メダルでも決して失敗ではない。これはオリンピックよ。メダルを獲得したことを誇りに思う。」とコメントし、満足な表情を見せた。団体金、個人銅の結果で今大会を終えた二人は、引退を発表した。
4年の集大成となるオリンピックが終わり、いつもなら3月の世界選手権を休むトップスケーターが多いが、金メダルのサフチェンコ/マッソ組も、銀のスイ/ハン組も参加の意向を示した。オリンピックとグランプリファイナルの金メダルを取ったが、まだ世界選手権を優勝したことのないサフマソ組にとっては、勢いに乗ってシーズン三冠という偉業を目指すであろう。僅差で負けたスイ/ハン組も、ベストな演技で世界王者の座を守り、リベンジを狙うであろう。
さらに忘れられないのは、五輪で4位に終わった欧州王者エフゲーニャ・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組。フリーでミスが続出し、表彰台に上がれなかった悔しさをバネに、世界選手権で会心な演技でメダルを狙うはずだ。五輪5位フランスのヴァネッサ・ジェームズ/モルガン・シプレ組、6位イタリアのヴァレンティナ・マルケイ/オンドレイ・ホタレック組、そして7位ロシアのナタリア・サビヤコ/アレクサンドル・エンベルトにも、ぜひオリンピックで好演技をした経験をいかし、世界選手権の舞台でさらなる活躍を期待したい。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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