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1位 竹内 すい
ショート、フリーとも見事な演技、2位に大差をつけての完勝を果たした竹内すい。
元々、ノービス時代から注目を集めた選手であり、一時はトリプルアクセルも完成間近とささやかれていた。しかし怪我をしたことでスランプに陥り、復帰後は回転不足のジャンプが目立ち、点数が伸び悩む時期が続いた。それが今季、以前は小柄だった体格も大きくなり、短期間のうちに急成長。昨年の夏からは試合でトリプルアクセルに挑戦し始め、このインターハイでは遂に成功させることができた。
それも3アクセル+3トウループのコンビネーションでの成功だ。紀平梨花に続き、日本から相次いでトリプルアクセルジャンパーが誕生したことは実に素晴らしいことだ。
試合後のインタビューでは
「ショート、フリー共に自己ベストを更新できて、団体でも優勝できました。とても嬉しいです。」と笑顔を見せた。
実はインターハイの女子は一昨年まで中京高校が連覇を続けており、昨年途切れた団体優勝を取り戻すべく、今回は必勝を期して臨んでいたのだが、竹内すいを擁する大同大学大同高校が中京高校の優勝を阻んだのだ。愛知県勢同士の熾烈な争いだった。
「今までない緊張でした。6分間練習が終わった後、膝ががくがくしていたんですけど、本番までの間に落ち着くことができました。」
いつも笑顔の絶えない選手で、緊張しているようには見えなかったのだが、まだ高校1年生、初出場のインターハイで優勝を争うことは想像以上に負担だったようだ。
竹内選手は最近になって頭角を現した選手であるため、まだ国際大会へ派遣された経験がないそうだが、この試合での圧巻のパフォーマンスにより新たな道が開けることだろう。本人も「少しでも多くの大会に出たいです。」とのこと。平昌オリンピック後のシーズンに、新たなスター選手が誕生しそうだ。
2位 荒木 菜那
今季はジュニアグランプリで大活躍。惜しくもファイナル出場は逃したものの、ベラルーシ大会での演技は見事なものだった。
その後、調子を崩した時期があったが全日本ジュニアでは見事に復調。今回も素晴らしい演技だったのだが、フリーでノーミスができなかったこと、ショートでも細かなミスがあったことに不満が残った様子。特にスピン、ステップでの取りこぼしについて反省していた。2月にオランダで開催されるチャレンジカップに出場するそうで、国際舞台での更なるアピールを期待したい。
来季に向けて、大技にも挑戦したいという。やはり竹内すいがトリプルアクセルを決めたことが刺激になったようだ。そして来季の目標として、今季は出場を逃した世界ジュニアへの出場を挙げた。ジャンプを始め、一つ一つのエレメンツのクオリティが素晴らしい選手だ。更なる飛躍を期待したい。
3位 岩元 こころ
今季は受験生としてシーズンを過ごした岩元こころ。夏場には受験の準備のためにあまり練習できていなかったそうで。夏のローカル大会では満足の行く演技ができていなかった。そこから良くここまで復調したものだと感心するばかりだ。
「夏場は靴が合わなかったこともあったんです。シーズンに間に合って良かったです。」
おっとりとした口調でそう話すが、わずかな期間で復調するためには相当の努力、苦労があったことだろう。このインターハイは3年連続で3位と常に表彰台に立ち続け、昨年は団体優勝も果たした。彼女にとってはとてもゲンのいい試合だ。
「今年は最終グループの皆が1年生で、若くてどうしよう?という気持ちでした。若いし、元気だし、話についていけない。年を感じました。」
確かに大人びた雰囲気の選手ではあるが、まだ高校生。年を感じるというのは半ば冗談だろう。
「1月に入ってから、フリーを練習する時間がなくて、滑り切れるかどうか不安だったんです。」
と話すが、やり遂げたことでガッツポーズも出た。来季に向けては、何も決めていないという。
「大学生になったら、生まれ変わりたい。自分の人生、楽しめるように、第二の人生を楽しみたい。」
まるで引退するような口ぶりに驚いたのだが、
「スケートもしますよ。ただ変わりたいんです。」
とのこと。実は今、受験をしている途中だという。どの大学を選ぶか、まだ迷っているそうだ。どんな道を選ぶのかは分からないが、来シーズン、進化した岩元こころの演技を楽しみに待ちたいものだ。
4位 青木 祐奈
この試合、久々に良い演技を見せてくれた青木祐奈。
もちろん完全に満足の行く演技だったわけではなく、「攻めきれなかったことは悔しい。」と反省の言葉を口にしていた。ショートでは3フリップ+3ループ、フリーでは3ルッツ+3ループを予定していたのだが、ファーストジャンプの着氷が悪く、後ろをダブルトウに変更したことが心残りだったのだ。しかし以前はたとえファーストジャンプの着氷が悪くとも、無理やりにセカンドジャンプにトリプルループを入れて転倒していた。そこから大きく考え方を変えたようだ。
「失敗して転倒して点数が出ない、となると、メンタルも落ちてしまいます。他の要素をしっかり決めれば点数は出る、と考えて決断しました。」
久し振りにレベルの高い選手達と最終グループで滑ることができ、良い刺激になったようだ。来季もジュニア残留の予定とのことで、来季こそはジュニアグランプリで活躍する姿が見たい。本人も「ファイナルに進出することが目標です。」と語ってくれた。
5位 白岩 優奈
今季、グランプリシリーズで活躍した白岩優奈。本来ならば圧倒的な優勝候補だ。しかし試合直前に怪我をしたこともあり、十分な練習ができなかったそうだ。
「1月に左足首を捻挫しました。本当は2月の半ばまでスケートは駄目と言われたんですが、京都のため、そしていつもお世話になっている学校のために滑りたいと思い、出場しました」。
フリーを通すことができるようになったのが、試合に向けて出発する3日前のことだという。よくぞ滑り切れたものだ。
「来シーズンからはもっと安定感を作りたい。表現、スケーティングでももっとレベルを上げたい。」
と、来季への意欲を語ってくれた。かねてよりスケーティング、表現へのこだわりを語る彼女に、目指す理想の境地について聞いてみたところ、宮原知子選手の名前が挙がった。
「いつも知子ちゃんと一緒に練習していて、本当にお手本にさせてもらっています。知子ちゃんのスケートが私の理想なんです。」
来季は更に理想に近づいた、白岩優奈の演技が観られそうだ。
6位 笠掛 梨乃
不調の中、迎えた試合だったようだが、その中ではかなり良い演技ができたのだと感じる。しかしインタビューでは反省の弁が続いた。
「もっともっと練習して、ジャンプを安定させるところから始めたいです。最終グループに入ったからにはもっといい演技をしなければならないのに、それができなかったことが残念でした。」
学校を代表して出ているので頑張らなきゃいけない、との気持ちもあり、余計に緊張を抱えてしまったようだ。
昨シーズンの全日本ジュニアでは素晴らしい演技を披露し、一躍注目を集めることになった。ただその後はムラの多い演技内容となっている。あの時のような素晴らしい演技をもっと観たいものだ。
「そのためには練習が足りないと思っています。もっともっと練習しないと。今年はジュニアグランプリに1戦しか出られなかったんですが、来季は2戦出たいと思います。」
抜群のスピードから踏み切る豪快なジャンプ。彼女だけの持ち味だ。今後の活躍に期待したい。
7位 横井 ゆは菜
横井選手ももちろん優勝候補だった。ただショートで痛恨の出遅れをしてしまう。
「最近、練習でのノーミスが少なく、それが不安として出てしまいました。」
決して苦手ではないはずの3フリップ+3トウループで冒頭のフリップがパンク。ここから崩れてしまった。
「6分間練習では良かったんですが、スタートからコーナーに入る辺り、(あれ?いつもと入りが違うかな?)という気持ちになってしまい、それを踏切りまで引きずってしまいました。」
その悪い流れをフリー演技まで引きずってしまったようだ。
「試合が始まる前に変な緊張を抱えて泣いてしまい、メンタルが弱いんだな、と痛感しました。」
世界ジュニアの代表になったことで、気負ってしまった面もあったようだ。
「代表として恥ずかしくない演技をしなければ、と考えてしまいました。気持ちの持って行き方を考えたいです。」
今季、彼女は全日本ジュニア以降、トリプルアクセルを封印している。
「挑戦したいという気持ちはあります。竹内すい選手が成功したことも刺激になりました。今後もまた、挑戦していきたいです。」
来季のトリプルアクセル挑戦も楽しみだが、まずは2月のチャレンジカップ。全日本選手権のような素晴らしい演技を見せてもらいたい。
8位 滝野 莉子
昨シーズン、一気に注目を集める存在となった滝野莉子。今季は表現力で大きな進化を見せ、シーズン序盤は素晴らしい演技ができていたのだが、今回の試合はミスの多いものとなってしまった。
「練習から、それほど調子は悪くなかったんですが、自分を信じ切れずに滑ってしまい、落ち着いて演技ができませんでした。演技冒頭、入り方を難しく変更したフリップで、入りの幅が合わずに失敗してしまい、そこからミスが続いてしまいました。」
彼女も今回はトリプルアクセルを封印していたのだが、その点について尋ねてみると
「最近、トリプルアクセルを入れるだけで満足していました。けれど、しっかり跳べるようになってから試合で成功させることが大事だ、と考えが変わったので、来季は成功率を上げて試合で挑戦したいと考えています。」
とのこと。練習は今も続けているそうで、再度の挑戦を期待したい。
中村康一(Image Works)
フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。
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