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近年の男子シングルのテーマは、間違いなく「4回転」だが、今年の四大陸選手権のエントリーリストを見れば、多種類の4回転をバンバン跳ぶ選手はそれほど多くはいない印象を受ける。
つまり、今大会の表彰台争いの鍵となるのは、むしろ「バランス」と言えよう。
難しいジャンプをどれほど高い質で完成できるか、それに加えてどんなスケーティングを以てプログラムのストーリーを表現できるか、この2つのポイントをバランスよくまとめる選手が上位に立つだろう。
宇野 昌磨
先頭に立つのは、言うまでもなく先シーズンから出場したすべての大会で表彰台から落ちたことのない宇野昌磨だ。
多種類の4回転が跳べるからこそ、今季のジャンプの構成でいろいろ試行錯誤してきたが、大会前のインタビューによると、今回はあえて難易度を下げ(と言っても合計3種類6本を予定している)、プログラムの完成度に注力したいようだ。
ショートプログラムの「四季」は、抑揚がある管弦楽で、彼の滑らかな滑りと、メリハリのあるパフォーマンスによく合う。
フリーはオペラ「トゥーランドット」より、「このプログラムで演技するのが当たり前になってきた」と自信満々に自己評価した彼は、きっとパワフルな歌声に合わせたダイナミックな演技で観客を盛り上げるだろう。
田中 刑事
全日本で銀メダルを獲得し、見事に五輪代表として選出された田中刑事は、今シーズンで試合の度に調子と成績を上げてきており、今大会での演技もとても楽しみだ。
成長の鍵は「練習」。
大会の前に体が動けないぐらいギリギリまで練習することで、本番に出る時は身軽になり、緊張しすぎずに演技できるという。
このような方法で自分ができる最高のパフォーマンスを本番で出せるものと確信しているようだ。
去年の四大陸で不本意な13位に終わった彼は、今回こそ実力を出し切り、ベストな演技で上位を狙いたい。
無良 崇人
日本が派遣した3人目の選手は2014年四大陸選手権を優勝した無良崇人。
彼の持ち味と言えばダイナミックなジャンプが挙げられるが、若い選手がどんどん出てくる中で彼の大人な男性の魅力が溢れる演技にも注目したい。
フラメンコの曲を力強く滑るショートももちろんだが、感情を注ぎ込み、愛と憎しみと苦しみで葛藤してる「オペラ座の怪人」を演じるフリーも見逃せない。
今大会で集大成となる演技がスケートファンに届くことを期待したい。
もちろん、チーム・ジャパンだけでなく、中国や北米からも多くのスター選手が出場する。
彼らの演技にも注目したい。
多くのスター選手
足首のけがでグランプリファイナルを辞退した中国のボーヤン・ジンにとって、今大会は復帰戦となる。
コーチの話によると、すでに普通の練習に戻しており、調子も悪くないとのことで、今大会ではスケート・アメリカで封印していた4ルッツを含め、ショートで2種類2本、フリーで3種類4本の4回転を入れる予定とのことだ。
ショートの曲は台湾出身の映画監督アン・リーの名作「グリーン・デスティニー」より、中国カンフーをイメージした振り付けが印象的だ。フリーの曲は「スター・ウォーズ」より。2つのプログラムとも現地の観客にとっておなじみの曲であり、完成度の高い演技を出せれば、きっと会場を沸かせるであろう。
しかしながら本人は目標を特定せず、ただ「練習試合の感覚で今大会に挑みたい」と本番に臨んでる。
4回転を今大会で跳ばないが、スケーティングとパフォーマンスで観客を魅了する。それがアメリカのジェイソン・ブラウン。
全米選手権で残念ながらオリンピックへの切符を掴めなかったが、「(ショートプログラムの)アメリカらしいハミルトンの魅力を世界の人々に見せたい」、そして「僕のパフォーマンスでフィギュアスケートの芸術性を発信したい」と言った彼は、韓国に行かなくてもきっとここでも最高なパフォーマンスを観客に届けるであろう。
全米は不本意に終わったが、ここでベストな演技をし、もう一度太陽のように温かい笑顔を見せてくれることを願いたい。
他にも2015年四大陸王者デニス・テン、四大陸銅メダルを3回獲得したハン・ヤン、カナダのケビン・レイノルズ、アメリカのマックス・アーロンなど、有力選手が多数出場する。
何が起こるかがわからない男子シングルの試合は、本当に見る人をわくわくさせるのだ。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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