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2012年からの6年間、四大陸選手権ペアスケーティングの金メダルを取ったのは、現世界王者ウェンジン・スイ/ツォン・ハン組(4回)と2015および2016年の世界王者メーガン・デュハメル/エリック・ラドフォード組(2回)しかいなかった。しかし今年は残念ながら、デュハメル/ラドフォード組はオリンピックへの最終準備に専念したいため、今大会に出場しないことを決めた。ディフェンディング・チャンピオンたるスイ/ハン組は出場する予定だったが、スイが先週の練習で脛の部分で引っ掻き傷がついてしまい、さらに去年の大会で5位に入賞したチェン・ペン/ヤン・ジン組もジンの古傷が再発し、この2組とも五輪直前でリスクを回避するため今大会を辞退した。
トップペアが多く欠場、しかも中国勢が完全にいない四大陸のペア競技は少しさびしく感じるが、その一方、表彰台争いの行方に期待が高まり、そんな中で新王者が誕生するワクワク感も沸いてくる。
表彰台のトップに一番近いのは、去年の銅メダリスト、カナダのリューボフィ・イリュシェチキナ/ディラン・モスコヴィッチ組であろう。競争が激しいカナダ選手権では、サイド・バイ・サイド・ジャンプでのミスが大きく響き、結果は4位に終わったが、調子自体が悪くなかったので、今大会での活躍が期待される。さらに注目したいのは、伝説の振付師サンドラ・べジックが振り付けたフリープログラム「At This Moment」だ。80年代で発売された大人のバラードで、初めて聞く人には少しダサさも感じるかもしれないが、プログラムのところどころで女性の柔軟性と男性の力強さをよく活かしたアクロバティックなトランジション・ムーブメント(つなぎ)が入っており、リフトやスピンなどのペアエレメンツもユニークで巧妙に仕上げられており、二人が一体させた動きでこの曲のロマンチックな情緒がよく伝わる。ペアスケーティングの醍醐味を十分味わえる、必見のプログラムだ。
2014年の四大陸銀メダリスト、2016年に4位に入賞したアメリカのタラ・ケイン/ダニエル・オシェイ組ももちろん金メダルを狙えるところにいる。女性の膝靭帯損傷でほぼ一年間休養し、ようやく12月に競技に戻してきたこの組は、不安を抱えながら出場した先日の全米選手権で200点超えの高得点を叩き出し、「帰ってきたぞ」と強く宣言した。全米の後に安定感を増し、表現力をより磨き上げたいとコメントした二人は、今大会でさらなる進歩を見せてくれるのか、楽しみだ。
結成して2年も経たない全米銅メダリストのディアナ・ステラート=デュデック/ネイサン・バーソロメイ組はISU選手権大会のデビュー戦を迎える。この組の見どころは、質の高いペアエレメンツと女性が34歳にしながら4回転スロー・ジャンプを挑戦する迫力だ。この4回転を成功させ、他のエレメンツもうまくまとめれば、初出場で表彰台に乗るのも不可能ではない。
フィギュアスケートを長年見ている方々にもよく忘れられがちだが、オーストラリアも四大陸の出場国だ。だが、今大会でエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ/ハーリー・ウィンザー組が、皆さんのオーストラリアへの印象を一新させるかもしれない。去年の世界ジュニア王者である二人は、ジュニアグランプリに出場しながらシニアの大会にも参加し、着実に力と自信を付けている。今大会でベストな演技を出せば、オーストラリア初のISUシニア選手権大会でのメダルを獲得する、という歴史を作り出せるかもしれない。
もちろん、チーム・ジャパンの須崎海羽/木原龍一組、そして三浦璃来/市橋翔哉組にも注目したい。須崎/木原組にとって、今大会はオリンピックまでの最終調整の機会でもあり、2つのプログラムをうまくまとめて、いいイメージを持って平昌へ向かえるように頑張ってもらいたい。そしてまだジュニア選手である三浦/市橋組には、シニア大会での初出場でプレッシャーも大きいだろうが、緊張せずにリンクに出て、今大会でいい経験を収穫できるように頑張ってもらいたい。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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