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優勝候補は少なくとも過去3年に全米優勝を果たしたそれぞれ違う3組、さらにここ2、3年間新しくカップルを組んだ幾つかの有力ペアも表彰台を狙っている。オリンピックの出場枠は残念ながらひとつしかない。そんな中で行われた五輪代表の最終選考会でもあった今大会は、予想通りの激戦が展開された。
勝ち抜いたのは、やはり高い技術力と表現力をバランスよく見せたアレクサ・シメカ・ケネリム/クリス・ケネリム組。ソチ・オリンピック以来の4年間、アメリカのペアスケーティングの中心選手として国際大会でも最も高い実績を残した二人は、当然ながら平昌オリンピックの代表として選出された。銀メダルはここ1年間数々のけがを乗り越えて、ようやく先月復帰してきた2016年の全米王者タラ・ケイン/ダニエル・オシェイ組。そして3位は意外にも結成して2年も経っていないディアナ・ステラート=デュデック/ネイサン・バーソロメイ組。34歳のステラート=デュデックは今大会の全てのカテゴリーにおいて最年長のメダリストとなった。
1位 アレクサ・シメカ・ケネリム/クリス・ケネリム
1位 アレクサ・シメカ・ケネリム/クリス・ケネリム/206.60(SP:71.10/1位、FS:135.50/1位) 4回転といえば、男子シングルのイメージが強いだろうが、実はペアの試合においても4回転の重要性が日々増している。ここ2シーズン、サイド・バイ・サイド・ジャンプにずっと不安要素が残っているシメカ・ケネリム/ケネリム組だが、今大会でもやはりショート、フリーともサイド・バイ・サイドで失敗し、技術点を大きく落とした。けれども、二人は全米で彼らしかできない大技4回転ツイストリフトを見事に成功し、高いGOEも稼いで失点を一部埋めることができた。一方、二人の演技を見ると、「さすが」と言わざるをえないほど、プログラムの振り付けもトランジション(つなぎ)の部分も他のペアより多様で複雑、そして繊細だったし、夫婦だからこそプログラムのテーマである「愛」を感情たっぷり演出できた。従って、大会で一番高い演技構成点を得て、総合得点で二度目の全米優勝を飾った。
演技直後キスクラで得点を待つ時、アレクサはとても緊張で心配そうな顔をしていたが、得点と最終順位が出ると、一気に叫び出し、そしてすぐ歓喜の涙を流した。その後、彼女は「いいプログラムを滑った感じがしなかったので、優勝できるかどうかを心配していた。私たちはここまで来て、本当にオリンピックに行きたかったの。優勝できてホッとした」と当時の気持ちを述べた。
2位 タラ・ケイン/ダニエル・オシェイ
2位 タラ・ケイン/ダニエル・オシェイ/200.80(SP:68.93/2位、FS:131.87/2位) 銀メダルを獲得したのは、女性の膝靭帯損傷でほぼ一年間休養し、ようやく12月に大会に戻してきたケイン/オシェイ組。不安を抱えながら挑んだ今大会のショートではノーミスの演技を披露し、2016年全米王者としての実力を見せた。フリーの「スワン・レイク」では、冒頭のエレメンツをひとつひとつしっかりと完成したが、後半に入ると、体の調子がまだベストに戻していないせいか、スロー・ジャンプで転倒し、その後のスピードも若干落ちた。それでも完成度の高い演技で総合2位となり、2年ぶりに表彰台に上がった。「枠が1つしかないがゆえに、逆にあんまりプレッシャーを感じなかった」とケインがコメントし、「やはり安定感が足りないのは改善しなきゃいけない」と、今後の課題を示した。
3位 ディアナ・ステラート=デュデック/ネイサン・バーソロメイ
3位 ディアナ・ステラート=デュデック/ネイサン・バーソロメイ/197.65(SP:67.84/3位、FS:129.81/3位) 数多くの元全米メダリストがいる中で、3位に入賞したのは、なんと元シングルスケーターで2001年世界ジュニア銀メダリスト、ディアナ・ステラート=デュデックとネイサン・バーソロメイだった。2年前、ディアナはフィギュアスケートとその試合に出ることを懐かしみ、32歳にしながら、当時新しいパートナーを探していたソチ・オリンピック出場のネイサンと組んで、ペアスケーターとしてデビューした。その後二人は、なんと4回転スロージャンプも習得し、大会ごとに着実に成長してきた。今大会では4回転スローで失敗し、サイド・バイ・サイド・ジャンプでもミスがあったが、リフトやスピンなどを非常に高い質で完成し、フリーで最も高い技術点を獲得した。さらに、フリープログラム「One Love」を演じる時のディアナは、最初から最後まできれいな笑顔をしていて、きれのある動きからも彼女のスケートへの熱意が十分伝わった。ぜひ見たい演技だった。
4位には去年の銅メダリストアシュリー・ケイン/ティモシー・ルデュク組、5位にはディフェンディング・チャンピオンのヘイヴン・デニー/ブランドン・フレイジャー組、そして6位には去年の銀メダリストマリッサ・カステリ/マーヴィン・トラン組が入り、去年のメダリスト全組が今年の表彰台に登れなかったことは、今大会のレベル高さと熾烈さを表した結果であろう。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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