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フィギュア スケート コラム 2017年12月20日

中国フィギュアスケート選手権と五輪代表選考基準

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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今月23日から始まる中国フィギュアスケート選手権。オリンピックシーズンだけに、トップスケーターたちが五輪代表を目指して、全力を尽くすだろう…と思いきや、中国スケート協会が公表した大会エントリーリストを見てみたら、なんと、ペアの現世界王者ウェンジン・スイ/ツォン・ハンや、過去2シーズン、世界選手権銅メダリストのボーヤン・ジンなど、何人か日本でもおなじみの名前が載っていない。

「えっ、なんで!?けが?」「オリンピック代表選考どうなるの?」とびっくりしているファンもいるかもしれないが、実は心配する必要がない。なぜなら、今季の中国オリンピック代表はシーズン通しての明確な総合ポイント制によって選ばれるから。では、このポイント制とは何なのか、現在上位にいる有力選手は誰なのか、探ってみよう。まずはカップル競技であるペアとアイスダンスから。

ペアスケーティング

世界屈指のペア大国の中国では、どの選手をオリンピックや世界選手権などの国際大会に派遣すべきかが、昔からの難題だった。このシーズン通してのポイント制は、実は何年も前に生まれた。

具体的にいうと、スケート協会はジュニア選手も含めて、有望なペアたちを国際大会に出し、国内大会にも出場させ、大会の順位ごとに決められたポイントを各ペアに与える。それで、五輪代表の提出期限までに、獲得したポイントによって代表選手が決められる。ポイントが加算される大会はシーズンごとに違うが、今年はISUシニア・ジュニアグランプリシリーズ、グランプリファイナル、国内グランプリ、全国選手権及び国内テストスケートが該当する。さらに、レベルが高い大会ほど与えられるポイントも高い。

「出場条件を満たせれば、シニア選手もジュニア選手も枠を取ることができる」と元五輪王者、現中国国家隊総監督たるホンボー・ツァオがコメント。「我々の選考制度はとても合理的で、大会で獲得したポイントによって選手が決められるから、最終結果も公開的で透明になるに間違いない。」

では、今週から始まる全国選手権も見据えて、3つの五輪出場枠の行方を分析してみよう。

1枠目は間違いなく、昨シーズン世界選手権を制し、今シーズンはNHK杯とグランプリファイナルでの圧巻のフリー・スケーティング「トゥーランドット」で、日本のスケートファンを魅了したウェンジン・スイ/ツォン・ハン組に与えられる。グランプリファイナルで銀メダルとなった以外、出場したすべての大会で優勝した世界王者なので、国内選手権を欠場しても代表選考へ全く影響しない。彼らの目標は、五輪の出場権ではなく、オリンピックチャンピオンだ。

2枠目は、シャオユイ・ユイ/ハオ・ジャン組にほぼ決まりだ。グランプリシリーズ2戦とも銀メダルとなり、グランプリファイナルへの進出も果たしたので、獲得したポイントはすでに高い。スイ/ハン組が出場しない国内選手権の優勝最有力候補であるこの組は、総合ポイントで上位に立つ可能性が高い。従って、2006年トリノ・オリンピック銀メダリストであるジャン選手は、自身4度目の五輪出場を果たせるであろう。

懸念は3枠目にある。恐らく、チェン・ペン/ヤン・ジン組、シュエハン・ワン/レイ・ワン組、及びジュニアのユーメン・ガオ/ヅォン・シエー組で最後の枠を争うことになるだろう。

先頭に立つのは、今季、チャレンジャーズ・シリーズ、フィンランディアトロフィーで優勝したチェン・ペン/ヤン・ジン組だ。昨季、グランプリファイナルに進出したこともあって、世界的に見てもトップペアに入るはずだが、今シーズンの演技は若干の不安定さが見られ、ミスも多かったので、国内選手権で気を緩めることができない。

そして、昨シーズンのNHK杯銅メダリスト、シュエハン・ワン/レイ・ワン組は、今年はけがに悩まされ、グランプリシリーズを辞退したが、2015年国内選手権の優勝者である彼らも、復帰戦で最高の実力を発揮できれば、選べれる可能性がないわけではない。

最後に、カップルを組んでまだ1年しか経っていないユーメン・ガオ/ヅォン・シエー組は、まだジュニア選手だが、新しいペアとして、今年の世界ジュニアで銅メダルを取り、先日のジュニアグランプリファイナルでも4位に入るなど、実に勢いに乗っているのだ。シニアの先輩たちと戦う国内選手権で、このペアはどんな演技ができるのか、楽しみである。今季、五輪出場権を獲得するのは難しいが、ペア大国で生まれる新星として、二人の今後の活躍が期待される。

アイスダンス

ペアスケーティングと同じように、中国のアイスダンスの選考制度はシーズン通してのポイント制だが、グランプリファイナルに進出した選手がいないため、ポイントが加算されるのはグランプリシリーズのみだ。さらに、できるだけ多くの組を国際B級大会に派遣し、順位ごとにポイントを与えた。国内戦は、国内グランプリ、全国選手権およびテストスケートとなる。

そんな中、実力的にはシーユエ・ワン/シンユー・リウ組が頭一つ抜ける状況にある。今年の世界選手権で16位に入り、中国アイスダンスの五輪出場枠を確保したこの組は、今季のグランプリシリーズを含めて、出場したすべての国際試合で8位以内の成績となり、さらにB級大会のニース・カップで見事に2位入賞したので、けがなどがない限り、五輪代表に選ばれることはほぼ決まりだ。

日本と同様に、中国も世界で活躍できるアイスダンス選手の育成に頭を抱えている。近年、定期的にデトロイトの名門クラブに通い、練習を積んできたワン/リウ組は、まだ世界のトップスケーターではないが、シーズンごとに確実に実力をつけている。やはり、資金が許す限り、短期的でも優秀な有望選手をノウハウを持つ海外のコーチの下に送り、トップスケーターたちと一緒に練習することで、徐々にレベルを上げることができるのではないか。中国スケーター協会の今後のアイスダンス育成方向に注目したい。

代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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