ロシアフィギュアスケート選手権アイスダンスの見どころ

試合の行方

エカテリーナ・ボブロワ
&ドミトリー・ソロビヨフ

ロシアのアイスダンスオリンピック枠は残念ながら2枠である。今季はグランプリファイナル進出を逃しているが、エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ組、アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組が最有力との下馬評だ。ロシアアイスダンスの底力を、オリンピックの舞台の前に、是非国内選手権で見せてほしい。

ボリショイバレエ、マリンスキーバレエなどのクラシックバレエの殿堂に象徴されるように、ロシアは芸術大国である。アイスダンスにはフィギュアスケートの各カテゴリーの中でも、特に独自の芸術性が感じられ、ロシア人にとってアイスダンスは美しく高貴な、尊敬と憧憬の念を抱かれる存在だ。そして優れたコーチ達が絶えることなくその伝統を継承し、現在も多くの魅力的なカップルを生み出している。

泰然自若なアレクサンドル・ジューリンコーチに師事するボブロワ&ソロビヨフ。クールな落ち着きの大人っぽいボブロワと少年の面影も残す熱血漢のソロビヨフ。ソチオリンピック団体金メダリストで近年のロシアアイスダンスを牽引してきた彼等は、今季のグランプリシリーズでもロシア大会2位、中国大会3位と好成績、言うまでもなく優勝候補筆頭だ。長年培われてきたパートナーシップが奏でるドラマチックなフリーダンスには心が震えるだろう。

アレクサンドラ・ステパノワ
&イワン・ブキン

カルガリーオリンピック、アイスダンス金メダリストのアレクサンドル・ブキンの息子であるイワン・ブキンには父とはまた違うカリスマがある。アレクサンドラ・ステパノワとのスピードとパワーのある、情熱的で現代感覚溢れるダンスで、国内でもさらなる飛躍が期待されているペアである。必殺技のユニークな圧巻ツイズルは必見だ。

ニキータ・カツァラポフは放蕩息子のように、パートナーのヴィクトリア・シニツィナとともに、ジューリンコーチの元に帰還した。今季もCSアイススターで転倒後カツァラポフが彼女に冷たい態度を取ったように、常に才能豊かだが腕白なカツァラポフのパートナーを探す形で来たキャリアからか、時折シニツィナが彼に遠慮しているように見えてしまうのだが、非常に美しく華のあるカップルなので、大切なときに、大輪の花を咲かせてくれることを願いたい。

ヴィクトリア・シニツィナ
&ニキータ・カツァラポフ

他にもグランプリシリーズにも参戦したべティナ・ポポワ&セルゲイ・モズゴフ組。ポポワはパートナーを変更しイメージも一新、モズゴフとの相性も良いようで、フリープログラム「カルメン」も好評だ。エキゾチックビューティーカップルのティファニー・ゾゴルスキー&ジョナサン・ゲレイロ、今季シニアデビューのアッラ・ロボダ&パヴェル・ドローズド、話題のニコライ・モロゾフの娘アナベリ・モロゾワ&アンドレイ・バギン等、群雄割拠の国内争いを勝ち抜いてきた美しき強者たちにも注目だ。 その中で、ファンも多いエレーナ・イリニフ&アントン・シブネフ組の欠場は残念だった。身体、相性、技術等の問題から、ボブロワとソロビヨフのように、ペアやアイスダンスの選手がキャリアを通して同じパートナーで競技を続けることは稀だ。何度パートナーが変わっても、どんなに苦しみを味わっても氷上に帰ってくるスケーター達の事情は違えど答えは一つ、それがどうしてもしなければいけないことだから、心からのスケートへの愛からだろう。

タチアナ・タラソワ曰く、「運命が残酷であればあるほど、成功したときの喜びは大きいもの」。綺羅星の如きアイスダンサーたちが氷上で繰り広げるロシアン・ドラマを、是非堪能して頂きたい。