【ISU世界フィギュアスケート選手権 2017】アイスダンス レビュー

世界選手権が開かれたフィンランドでは、アイスダンスが大会の宣伝ポスターになるほど人気だ。 SD(ショートダンス)のパターンダンスの課題に選ばれたミッドナイトブルーズのリズムに合わせ、躍動感のあるダンスで会場を盛り上げ、FD(フリーダンス)では優雅でしっとりとしたプログラムを通して、観客を自分たちの世界に引き込んだ。 観客の期待に応え、トップ選手のパーソナルベストが続出。上位2組はそれぞれ世界最高得点を塗り替え、緊張感溢れるハイレベルな試合となった。

1位 テッサ・ヴァーチュ/スコット・モイア/198.62(SD:82.43/1位、FD:116.19/2位)

今シーズン、2年半ぶりに試合に帰ってきたヴァーチュ/モイア組はまさに敵なしだ。3回目の世界タイトルを目指す今大会、SDではプリンス・メドレーに乗せて、キレのある動きでステップ、パターンダンス、ツイズル、リフトなどのエレメンツを力強く完成させ、会場を沸かせた。演技構成点においても全ての項目で9.5点以上を獲得し、SPの最終得点は82.43点。自身が持つ世界記録を2点近く上げた。FDでは、モイアがサーキュラーステップシーケンスの終わったところでまさかバランスを崩しほぼ転倒になり技術点に影響が出たが、残りの演技では二人が全く何もなかったかのように、しっかりとまとめた。結果、FDの得点は2位となったが、総合得点は198.62点となり、自身が持つ世界記録を更新して1位につけた。負け知らずの復帰シーズンを振り返ったヴァーチュは「試合に復帰すると決めた時、どんな成績を収められるか本当にわかりませんでした。これで私たちの努力が実ったと確信できました。本当に満足しています。」と笑顔で語った。

2位 ガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン/196.04(SD:76.89/2位、FD:119.15/1位)

ディフェンディング・チャンピオンのパパダキス/シゼロン組は、三連覇に挑んだ。しかし、少し苦手な印象があるSPでレベルを所々取りこぼし、ヴァーチュ/モイア組に4.54点の大差を付けられ、2位となった。得意とするFDでは、抑揚のあるピアノ曲「Stillness」に合わせて流れるようなスケーティングと精確な動きを見せ、美と力を融合したパフォーマンスで会場に魔法をかけた。完璧といえるこの演技でGOEを+2、+3を多数獲得し、演技構成点も9.75点台近く迫って、最終得点は自身が持つFDの世界最高得点を塗り替えた。しかしSDでの点差が響き、逆転優勝ならず銀メダルを獲得。試合後、パパダキスは「世界記録を更新した今日の演技は私たちのキャリアにおいて最高なもので、誇りに思います。私たちにとっては、自分自身に勝ったと言えます」と肯定的なコメントを残した。

3位 マイア・シブタニ/アレックス・シブタニ/185.18(SD:74.88/5位、FD:110.30/4位)

去年の銀メダリスト、シブタニ兄妹は熾烈な戦いを勝ち残り二年連続の表彰台を実現させた。SDでは得意なはずのステップに精確さが欠け、レベルを取りこぼした。高いGOEで上位選手との差を少し埋めたものの、5位。FDではエレメンツを次々と確実にクリアし、力強くプログラムをまとめたが、ステーショナリーリフトで時間超過により1点が減点された。結果、FD4位、総合3位。アレックスは「今シーズンは転換の年だった。色んな意味で成長を遂げたと思います。今大会の結果は私たちを励まし、力を与えてくれるでしょう。」と語った。

4位 ケイトリン・ウィーバー/アンドルー・ポジェ/184.81(SD:74.84/6位、FD:109.97/6位)

シーズン序盤で不調を見せたウィーバー/ポジェ組は徐々に調子を取り戻し、PBとなるトータルスコアと今大会4位の成績を以てシーズンを終えた。上位選手がミスを続出し、総合順位が大きく入れ替わる中、この組はSD・FDともに安定した演技を見せた。レベルの取りこぼしはあったものの、ほとんどのエレメンツで+2のGOEを稼ぎ、SD・FDともに6位。総合4位に入賞した。

5位 エカテリーナ・ボブロワ/ドミトリー・ソロヴィヨフ/184.06(SD:73.54/8位、FD:110.52/3位)

欧州選手権銅メダリストのボブロワ/ソロヴィヨフ組は、SDで目立つミスこそなかったものの、2つのステップシークエンスでレベルの判定が低く、結果として8位と出遅れた。巻き返しに臨んだFDでは、彼らのスケーティングにふさわしい弦楽曲を表現させながら、一つ一つのエレメンツをしっかりと完成させた。演技構成点全てにおいて9点台に乗り、FD3位、総合5位につけた。

その他、元世界王者のアンナ・カッペリーニ/ルカ・ラノッテ、去年の銅メダリストであるマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ、パイパー・ギルス/ポール・ポワリエ、SD3位につけたマディソン・ハッベル/ザカリー・ダナヒュー、そして元世界ジュニアチャンピオンのアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキンなどの実力者が、それぞれ6-10位につけた。

一つのミスによって順位が大きく入れ替わったこの大会、日本代表の村元哉中/クリス・リード組はSDのツイズルシーケンスでのミスが響き2.43点の差で、残念ながらFDへ進むことができなかった。残り5枠のオリンピック出場枠を取るために、オフシーズンの間に課題を克服し、自信を持って予選試合であるネーベルホルン杯に挑んでもらいたい。