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フィギュアスケートのカテゴリーの中でも、ヨーロッパではアイスダンスが人気だ。美しい衣裳で踊るように滑る男女。オペラやバレエを愛する人々は、同じように氷上の芸術を好むのだろう。そんな期待に沸く観客の前で、フランスのガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組が見事欧州選手権3連覇を果たした。2位と3位は前年と変わらず、アンナ・カッペリーニ /ルカ・ラノッテ組、エカテリーナ・ボブロワ/ドミトリー・ソロヴィヨフ組となった。3位からの逆転優勝、2位と3位の差はわずか0.08点と、激しい頂上決戦が繰り広げられた。
1位 ガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組/189.67(SD:75.48/3位、FD:114.19/1位)
3連覇に挑んだガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組。美貌の2人が繰り出す高難度のテクニックと溢れる芸術性との共存で、独自の世界観を確立してきた彼らだが、今季はここまで調子に乗れていない印象だった。今大会のSD(ショートダンス)でも最後のステップでレベルを落とし、3位からのスタートとなる。しかし迎えたFD(フリーダンス)で、彼らが見せたのは本来の実力どおり、圧巻のパフォーマンスだった。フィンランドのバンドNestによる『Stillness』の厳かで力強いピアノの音と一体化したように、リフト、ツイズルと、流れるように続くエレメンツ。GOE(出来栄え点)満点がズラリと並ぶ。7つのエレメンツのうち5つでレベル4を獲得し、PCS(演技構成点)でも満点をつけるジャッジが何人も出るなど、息をもつかせぬ演技で会場を熱狂させた。解説に「1日中見ていられる」と言わしめる2人のスケーティング。 まるで1本の映画を見ているかのような情感が胸に迫る。「観客を自分たちの演技に引き込みたい」というシゼロンの願いは、大会3連覇とともに叶ったのだ。
2位 アンナ・カッペリーニ /ルカ・ラノッテ組/186.64(SD:75.65/2位、FD:110.99/2位)
SDではPB(パーソナルベスト)スコアを出し、1位のコールを受けたアンナ・カッペリーニ /ルカ・ラノッテ組。その後、ロテーショナルリフト1つが余分だったと判断され、一夜にして2位に。「スモールメダルを交換するのは奇妙な気分だった」という2人だが気分を一新、名プログラムと名高いFD、チャーリー・チャップリンメドレーで返り咲きに挑んだ。TVカメラがチャップリンになりきったラノッテの表情を映し出すと、観客から笑い声が。もうそこから彼らの物語に引き込まれている。冒頭のツイズルでカッペリーニが足をつくミスがあったがレベル4を獲得。その後は危なげない演技で滑りきった。ダイナミックなストレートラインリフト、美しいコンビネーションスピンなど、難度の高い技で笑顔にさせてくれるのはこのコンビならでは。FDはSB(シーズンベスト)、トータルの186.64はPBスコアとなり、喜びを爆発させた。この大会では3年連続の銀メダリストとなった。
3位 エカテリーナ・ボブロワ/ドミトリー・ソロヴィヨフ組/186.56(SD:76.18/1位、FD:110.38/3位)
ロシア選手権6連覇という偉業を達成し、乗り込んできた欧州選手権。ロシアチームのトップとして昨年の3位より上を狙いたいエカテリーナ・ボブロワ/ドミトリー・ソロヴィヨフ組は、SDから気迫のノーミス演技。76.18のPBで1位に立った。長身の2人が見せるパワフルなリフトにツイズルは見応え充分。長くコンビを組む2人ゆえの成熟したパフォーマンスは会場を魅了した。FDに選んだ曲はショパンの『前奏曲20番』とヴィヴァルディの『四季』の現代版アレンジ。クラシカルな中にも妖艶さ、激しさを感じさせる彼らにとてもよくはまっていた。冒頭、彼らのトレードマークとも言えるストレートラインリフトで勢いに乗ると、最後までスピード感溢れる素晴らしい演技を見せたが、サーキュラーステップのレベルを取りこぼしたことで、2位とはわずか0.08点差の3位に順位を落とした。それでも「100%出し切って最高のパフォーマンスができた」と語ったように、2年連続の銅メダリストに悔いはない。
4位 イザベラ・トバイアス/イリヤ・トカチェンコ組/169.29(SD:69.35/5位、FD:99.94/4位)
コンビを組んで2シーズン目、イスラエルのイザベラ・トバイアス/イリヤ・トカチェンコ組。ゴージャスな衣裳で目を楽しませてくれる25歳と30歳の大人のカップルは、今大会、好調さを見せた。SDでは、ブルース&ヒップホップをスタイリッシュに表現。エネルギーを感じさせるツイズルやリフトでレベルをしっかり獲得した。FDくるみ割り人形』でも優雅な曲の世界観は壊さずに、難度の高いリフトをしっかり決めるなど、終始自信を感じさせるパフォーマンス。納得の笑顔で4位につけた。トップ3と大きく差がついたPCS(演技構成点)の底上げが、今後の課題だろう。
5位 アレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組/166.93(SD:68.17/6位、FD:98.76/5位)
一昨年の欧州選手権の銅メダリストであるアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組。直近のロシア選手権で2位に入り、今回は表彰台を狙いたいところだ。若さ溢れる演技で攻めたSDは、手足の長いステパノワのスタイルを際立たせる振り付け、スケールの大きなリフトが素晴らしく目を引いた。しかし、ところどころで粗さが目立ち、レベルを取りきれずに6位と出遅れる。FDに選んだのは、ピアソラの『リベルタンゴ』。滑らかなスケーティングと情熱的なステップで観客を沸かせるパフォーマンスを見せた。ここでもステップにミスが出たものの、結果は1つランクを上げて5位でフィニッシュ。真っ赤なドレスのステパノワの美しさ、ブキンの色男ぶりも見どころだ。
そのほか、6位のイタリアのシャルリーヌ・ギニャール/マルコ・ファッブリ組も、SDでは4位に食い込む好調さを見せた。総合7位のデンマークのロレンス・フルニエ・ボウドリー/ニコライ・ソレンセン組は、SD、FD、トータルとすべてでPBを更新。可能性を感じさせた。
3連覇のかかるガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組がSDで3位となり、上位2チームの順位が入れ変わるなど、波乱の幕開けとなったアイスダンス。終わってみればトップ3組が別格の強さを見せた大会だった。改めて、各エレメンツの完成度、演技構成点の高さがメダルの色を分けると実感。この上なく強く美しいチャンピオンを見ながら、次への期待が高まった。
植田広美
女性誌編集者としてアスリートの取材、インタビューを手がけるうち、どっぷりとフィギュアスケートの沼にはまる。国内外の試合、アイスショーはほぼ観戦。五輪王者を筆頭に日本選手が世界の舞台で活躍する現在の状況にワクワクしつつ、海外選手も全力応援! 全員がベストスコアの神試合がいちばんの望み。趣味は愛機で選手の写真を撮ること。
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