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ロシア3トップの勢いを、フランス、ドイツが食い止めた。欧州選手権のペア競技は、素晴らしい演技が続出し、チェコのオストラヴァ・アリーナに集まった観客を大いに沸かせることとなった。優勝したエフゲーニヤ・タラソワ/ウラジ―ミル・モロゾフ組、2位のアリョーナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソ組、3位のヴァネッサ・ジェームズ/モルガン・シプレ組の3チームが、ともにトータルでPB(パーソナルベスト)を出すという、稀に見るハイレベルでの闘いとなった。
1位 エフゲーニヤ・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組/277.58(SP:80.82/1位、FS:146.76/2位)
ペアの覇者となったのは、エフゲーニヤ・タラソワ/ウラジ―ミル・モロゾフ組。圧巻だったのはSP(ショートプログラム)。冒頭の3トゥループツイストリフトでは、GOE(出来栄え点)満点を獲得。さらに、すべてのエレメンツでレベル4の評価を受け、高い加点がつくパフォーマンスで、PB(パーソナルベスト)の80.82を叩き出した。「このプログラムはマジカルだ」とモロゾフが語ったように、まだまだ進化を予感させる。FS(フリースケーティング)では4回転ツイストを封印し勝ちに行ったが、後半リフトとツイストでレベルの取りこぼしもあり、FSでは2位となった。それでもPBを達成し、優勝を果たした。今季はスケートアメリカ、フランス杯、GPF(グランプリファイナル)、ロシア選手権と、見事に上向きでスコアを伸ばしてきた2人。滑るのを楽しんでいるのが伝わって来る。そんな演技を見られることは何より幸せだ。
2位 アリョーナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソ組/222.35(SP:73.76/3位、FS:148.59/1位)
SPでは3位だったアリョーナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソ組がFSでは1位となり、総合2位となった。怒濤の追い上げとなったFSの曲は『Light House』。うねるようなエモーショナルなメロディに、2人の滑らかなスケーティングがピッタリとはまる。冒頭の3トゥループツイストリフトは巨大で、全ジャッジがGOE満点の評価。トレードマークとなったワンアームリフトなど、力強さ、テクニックにも目を見張るものがある。それは、世界選手権で5度金メダリストとなったサフチェンコの存在も大きい。怪我に苦しんでいた彼女は、今回も完全な状態とは言えないが、つねに落ち着いて自信に溢れていた。2人に訪れた「長いトンネルの向こうに見えた光」を曲のテーマに重ね合わせ、 PBのパフォーマンスで得た銀メダルは特別なものだろう。
3位 ヴァネッサ・ジェームズ/モルガン・シプレ組/220.02(SP:74.18/2位、FS:145.84/3位)
今回、最も観客を沸かせたのはヴァネッサ・ジェームズ/モルガン・シプレ組かもしれない。14年ぶりの欧州選手権メダリストとなった2人。SPでは、ノーミスの演技で歓喜の声を上げた。サイド・バイ・サイドの3サルコウ+2トゥループ+トゥループ、スロー3トゥループはダイナミックで、とくにヴァネッサのキレのある動きが爽快。PBの74.18で2位につけた。優勝を見据えて挑んだFSは『The sound of silence』。大技のスロー4サルコウにチャレンジし、惜しくも両足着氷となるが、大いに会場を沸かせた。そこからはジャンプ、スピン、リフトでレベル4、さらには美しいスロー3トゥループジャンプを決めるなど、この名曲と一体化したドラマチックなパフォーマンスを見せた。演技後、感極まって氷に突っ伏したシプレ。その感動のパフォーマンスは必見だ。
4位 クセニア・ストルボワ/フョードル・クリモフ組/216.51(SP:73.70/4位、FS:142.81/4位)
ロシアチャンピオンとして今大会へ乗り込んで来たクセニア・ストルボワ/フョードル・クリモフ組。今回はSP、FSともにスロー3フリップジャンプで転倒するなど、目立つミスが出た。故障が続き、今季2試合目となる彼ら。それでも3トゥループのコンビネーション、3サルコウジャンプはきっちり決めて見せた。笑顔もあまり見えなかった今回、まだまだ本調子ではないものの、スピード感溢れる演技、圧倒的な存在感は、さすが五輪銀メダリストの貫禄か。今はリンクにこのペアが帰ってきたことを喜びたい。
5位 ナタリア・サビヤコ/アレクサンドル・エンベルト組/200.75(SP:72.38/5位、FS:128.37/5位)
GPFで4位に入り、直近のロシア選手権では3位に入ったナタリア・サビヤコ/アレクサンドル・エンベルト組。チームを組んで2シーズン目で一気に駆け上がって来た印象だ。SPではノーミスで滑り終え、TES(技術点)は3番目に高かった。72.38という得点はPB。FSではサイド・バイ・サイドの3サルコウが1回転になるなど、痛恨のミスが出て点を伸ばせず5位のままフィニッシュとなった。それでもトータルのPBも記録して、次に続く結果と言えるだろう。
ロシアチームの若手、エフゲーニヤ・タラソワ/ウラジ―ミル・モロゾフ組が躍進し、復帰組や新規組もまとまりを見せた大会となった。PBを次々に更新していくという、選手も観客も最高にエキサイティングな試合はそう多くない。1位〜5位までがトータルで200点超えという、予想以上の大接戦。3月に開催される世界選手権を前に、注目の選手をしっかりチェックしておきたい。
植田広美
女性誌編集者としてアスリートの取材、インタビューを手がけるうち、どっぷりとフィギュアスケートの沼にはまる。国内外の試合、アイスショーはほぼ観戦。五輪王者を筆頭に日本選手が世界の舞台で活躍する現在の状況にワクワクしつつ、海外選手も全力応援! 全員がベストスコアの神試合がいちばんの望み。趣味は愛機で選手の写真を撮ること。
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