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チェコのオストラヴァの会場が沸いた。5連覇のかかるスペインのハビエル・フェルナンデスが話題の中心だった男子シングル。フェルナンデスの優勝、ロシア勢の強さは想定済みと、盛り上がりに欠けると思われたが、蓋を開ければPB(自己ベスト)スコアを出す選手が続出。選手たちが快哉を叫ぶ完成度の高い演技に、観客も熱狂した大会となった。
1位 ハビエル・フェルナンデス/294.84(SP:104.25/1位、FS:190.59/1位)
GPF(グランプリファイナル)では、精彩を欠く演技で5位に沈んだフェルナンデス。今大会への意気込みは強く、集中して練習をして来たと語っていた。スペイン人の彼のためにあるようなSP(ショートプログラム)『マラゲーニャ』では、冒頭の4トーゥーループの着氷が乱れたが、3トゥループジャンプをしっかりつける強さを見せた。ノーミスの演技で、PB(自己ベスト)スコアの104.25。これで大きなリードをつかんだ。迎えたフリーでは冒頭の4サルコウ+2トゥーループのコンビネーションを耐えたが、4サルコウで転倒、3アクセル、3ルッツでも着氷が乱れるなど、連続してジャンプにミスが出た。その影響か後半は疲れが見え、最後は気迫で滑りきった印象。それでもトータルでは2位に30点近い差をつけての金メダル。見事大会5連覇を果たした。観客の大声援に応える様子はさすが王者の貫禄。ちなみに、SP『マラゲーニャ』のために蓄えたヒゲは、FS(フリースケーティング)のプレスリーメドレーでは剃られているのも注目ポイント。
2位 マキシム・コフトゥン/266.80(SP:94.53/2位、FS:172.27/2位)
この大会では昨年の銅メダリストであるロシアのコフトゥン。今シーズンのGPS(グランプリシリーズ)では表彰台には遠く不調の印象が強かった彼が、今回は覚醒したかのような強さを見せた。まずSPでは4サルコウ+3トゥーループのコンビネーションをクリアに決めると4トゥループ、3アクセルと、ジャンプはすべて成功。他のエレメンツもレベル4という見事な演技で、久々に大きくガッツポーズ。FSでもその好調さは続き、スタートから2つの4回転には、高いGOE(出来栄え点)がついた。後半は疲れが出たのか粗さが目立ったが、それでも大崩れしないのがこれまでとの違いを感じさせる。ダイナミックなジャンプが戻ってきたコフトゥンが、SP、FS、トータルすべてでPBを達成。「両方を楽しんで滑れたのは初めてのこと」と、笑顔で2位を守り抜いた。
3位 ミハイル・コリヤダ/250.18(SP:83.96/4位、FS:166.22/3位)
ロシア選手権を制覇し、好調さを見せていたロシアのコリアダ。弾けるようなキレのある演技が彼の魅力だ。SPでも4トゥループ+3トゥループのコンビネーションを決め、勢いに乗るかと思いきや、続く3アクセルがシングルになってしまうという痛恨のミス。4位から挽回を賭けたFSでは、冒頭2つの4回転ジャンプ(4ルッツ、4トゥループ)を失敗したが、そこからは丁寧なスケーティングで、3アクセル+3トゥループ、3ルッツ+2トゥループ+2ツゥループのコンビネーションはしっかり決めた。しかしまたもや3アクセルがシングルになるというSPと同じ失敗が出てスコアを伸ばせず。SB(シーズンベスト)とはなったが、トレードマークの笑顔が見られない寂しいキスアンドクライとなった。それでも着実に力をつけているコリアダが3位に入った。
4位 ヨリック・ヘンドリクス/242.56(SP:82.50/5位、FS:160.06/5位)
独特のヘアスタイルでおなじみ、ベルギーのヨリック・ヘンドリクス。4回転ジャンプをプログラムに取り入れていない彼が上位を狙うには、クリーンな演技が必須条件。それを十分意識した正確なエッジワーク、音楽と一体化した丁寧なスケーティングで観客を魅了した。「今できる最高の演技」でSP、FS、トータルのすべてでPBを出し、キスアンドクライでは笑顔が耐えなかったヘンドリックス。練習中の4トゥループ、4サルコウをものにしたら、さらに上位に絡んでくるだろう。世界選手権でも注目したい。
5位 アレクセイ・ビチェンコ/239.24(SP:86.68/3位、FS:152.56/9位)
今季のGPSでは、ロステレコム杯で3位、NHK杯で4位と好調さを見せていたイスラエルのビチェンコ。この27歳のベテランは、今大会のSPでもノーミスの素晴らしいパフォーマンスを披露し、3位に食い込んだ。ここまで安定感のあったジャンプだが、FSでは4トゥループ、3アクセルなど得点源のジャンプに失敗が続きスコアを伸ばせず。9位に後退した。
ハビエル・フェルナンデスが見事5連覇を達成。その圧倒的な強さ、そしてマキシム・コフトゥンの復活の印象が強く残る男子シングル。しかし、若手選手の勢いも感じる大会だった。FSで4位と追い上げたジョージアのモリス・クヴィテラシヴィリ、ラトビアのデニス・ヴァシリエフスはPBを更新、JGPF(ジュニアグランプリファイナル)の覇者、ロシアのアレクサンドル・サマリンは3本の4トゥループを跳んだ。トップ選手たちもうかうかしてはいられない。高い難度と完成度がともに求められる熾烈な闘いは、今季最終章、世界選手権でも続くのだ。
植田広美
女性誌編集者としてアスリートの取材、インタビューを手がけるうち、どっぷりとフィギュアスケートの沼にはまる。国内外の試合、アイスショーはほぼ観戦。五輪王者を筆頭に日本選手が世界の舞台で活躍する現在の状況にワクワクしつつ、海外選手も全力応援! 全員がベストスコアの神試合がいちばんの望み。趣味は愛機で選手の写真を撮ること。
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