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フィギュア スケート コラム 2017年1月25日

全米フィギュアスケート選手権 女子シングル レビュー

フィギュアスケートレポート by 植田広美
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数あるウィンタースポーツイベントの中でも、全米フィギュア選手権の注目度は別格。多くの観客が今年の覇者を目撃するために駆けつけ、会場となったカンザスシティのスプリントセンターは熱気に包まれた。まずは、新女王の誕生など、エキサイティングな結果となった女子シングルから振り返る。

1位 カレン・チェン/214.22(SP:72.82/1位、FS:141.40/1位)

若干17歳のカレン・チェンが、いきなり全米女子シングル、SP(ショートプログラム)歴代最高点を叩き出すというエキサイティングな幕開けを、誰が予想しただろうか。チェンはそのままの勢いでFS(フリースケーティング)もしっかりまとめ、完全優勝での全米新女王となった。SPの冒頭、高さのある3ルッツ-3トゥループのコンビネーションジャンプを完璧に決め、そこからは映画『黄昏』の音楽にぴったりとはまる優雅なスケーティングで、一気に彼女の世界へ観客を引き込んだ。それはFS『タンゴジェラシー』でも同じ。ポジションの美しいスピン、ゴージャスなスパイラルでは大きな拍手が起こる。終わってみれば 各エレメンツはレベル4、ジャンプもすべてに加点のつく圧巻の演技。優勝を目前にしても固くなることもなく、余裕すら感じる表情は、積み重ねて来たハードな練習からの自信だろう。「弱点がない」「とにかくゴージャス」と現地の解説が熱くなるのも納得。今回の振り付けは元シングルスケーターのジョナサン・カサーだが、チェン本人も関わっているという。曲の解釈、表現力に光るものを感じるのはそんな彼女の芸術性によるものか。今回、アメリカは、可能性をたっぷり秘めた新女王の誕生を目撃したのだ。

2位 アシュリー・ワグナー/211.78(SP:70.94/3位、FS:140.84/2位)

2012年、2013年、そして2015年と、3度の全米女王に輝いているアシュリー・ワグナー。25歳という年齢のことばかり話題にされることにうんざりしている様子だが、それも当然。つねにトップ争いのまっただ中にいるのだから。2008年、セントポールで開催された大会で3位となって以来、なんと全米のメダル獲得は9回目。「戦後最も年長の女子メダリスト」と記者会見でいじられても、「16歳で銅メダルを獲ってから10年、今もここに座っていることを誇りに思う」と見事に切り返した。今回のSPでは、ユーリズミックスの『Sweet Dreams』に合わせ、ビートの効いたダンサブルな演技を披露。冒頭の3フリップ-3トゥループをクリーンに決め、会場を沸かせた。FSでも終始、自信に満ちたパフォーマンスでメンタルの強さを見せつけた。勝負どころでしっかりと決める――それこそが経験豊かなベテランの魅力と言える。

3位 マライア・ベル/197.92(SP:63.33/6位、FS:134.59/3位)

アンジェラ・ウォンの代理として出場したスケートアメリカで、ショート、フリーともに自己ベストのスコアを出して準優勝し、一気に注目を集めたマライア・ベル。今回の全米選手権は、その実力が試される場でもあった。SP『シカゴ』では、冒頭のコンビネーションジャンプで転倒はあったものの、スピードに乗り、ミュージカルの世界観を見事に表現。勢いを感じさせた。FSの『エデンの東』とともに、観客の心を掴む選曲も見事。こちらも前半、2つのジャンプに乱れは出たものの、そこからは落ち着いたスケーティングを見せ、3連を含むすべてのジャンプを加点付きで成功させた。親しみのある愛らしい顔立ち、パワフルかつエレガントなスケーティング。まさに「正統派アメリカ」を継ぐベルの活躍は、今大会の大きな収穫だろう。

4位 長洲未来/194.90(SP:71.95/2位、FS:122.95/4位)

練習から3F3Tのコンビネーションジャンプを何度も決め、好調さをアピールしていた長洲未来。本番でもしっかりと決めてきた。ダイナミックなフライングキャメル、ポジションが美しいレイバックと、得意とするスピンはやはり目を引く。SPでは ジェフリー・バトル振り付けによるショパンの『夜想曲第20番』の世界観をしっかり描き出し、1位のカレン・チェンとはわずか0.87点差の2位につけた。しかし、このことで優勝を意識したのか、FSでは硬さが見られ、ミスが続いて大失速。演技終了後、一瞬泣き出しそうな表情を見せたのは切ない。結果、2年連続の4位、ピューターメダリストとなった。しかし、コールからフィニッシュまでの大声援は、彼女が観客に愛されている証だろう。

5位 キャロライン・ジャン/182.82(SP:62.55/7位、FS/120.27/5位)

2007年、世界ジュニア選手権の金メダリストでもあるキャロライン・ジャン。しかし、先天的な股関節の障害のために、浮き沈みの激しいキャリアとなっている。手術のために昨シーズンは休養し、今季は、この全米選手権1本にかけてきた。彼女の得意とするのが3ループ+3ループという高難度のコンビネーションジャンプ。これだけで10点以上を叩き出す大きな武器だ。今回もSP、FSともに加点付きで成功させ、総合で5位に食い込んだ。美しいスパイラル、スピンなど、女性らしい柔軟性ある演技で観客を引き込んだ。

6位 グレイシー・ゴールド/179.62(SP:64.85/5位、FS:114.77/9位)

昨年の覇者、グレイシー・ゴールドは、今季はいまだ調子に乗れていない。とくにジャンプに自信を失くしていただけに、SPの冒頭の3Lz-3Tに慎重さが見えた。それを上手く降り、スピンもレベル4を取るなど、各所に復調の兆しは見えたものの、やはり、ジャンプの抜け、音楽とのずれなど、タイミングの取り方に苦労していた印象。FSでは見事な3ループ+3ループを決めたものの、細かなミスが目立ち9位に沈み、総合で5位。シニアデビューしてから初めて、全米のメダルを逃すこととなった。しかし、ゴールドらしい高さと幅のあるダイナミックなジャンプ、ゴージャスな存在感は魅力的。次回は思う存分そのポテンシャルを発揮してほしい。

終わってみれば、ダークホース的存在だったカレン・チェンの飛躍、アシュリー・ワグナーの強さに驚かされた大会だった。この結果を受けて、世界選手権へ派遣する選手も決定。女子は順位通りに、カレン・チェン、アシュリー・ワグナー、マライア・ベルの3選手。常連だったゴールドの名がないのは寂しいが、勢いのある若手2人に安定感抜群のアシュリーと、バランスのとれたアメリカチームの活躍が楽しみだ。

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植田広美

女性誌編集者としてアスリートの取材、インタビューを手がけるうち、どっぷりとフィギュアスケートの沼にはまる。国内外の試合、アイスショーはほぼ観戦。五輪王者を筆頭に日本選手が世界の舞台で活躍する現在の状況にワクワクしつつ、海外選手も全力応援! 全員がベストスコアの神試合がいちばんの望み。趣味は愛機で選手の写真を撮ること。

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