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2人の初対面
――では、改めまして村元小月先生です、よろしくお願いします
村元:よろしくお願いします。
――さっちゃん今タイでスケートの先生してるけど、今は日本に帰ってきてるんだよね?
村元:はい、今は合宿で生徒を連れて帰ってきてます。
――今もう何歳になったの?
村元:26歳です。
――引退したのは?
村元:4年前ですね。2012年。
――で、いつからタイに行ってるんやっけ?
村元:タイに来て3年過ぎたので3年前に来ました。
――日本語より英語の方がラクっちゃラクなんやね
村元:そうですね、タイにいて3年たつので、英語ばっかりじゃないですか。日本帰ってくると日本語が変というか。
――日本語が変?そうかな。方言が出ないなっていうくらい
村元:方言は昔から出ないです。いつもなぜか標準語らしくて、関西弁の友達と話すとすごい関西弁になるみたいで。
――今めっちゃ関西弁やで?
村元:え、うそー、ほんと?
――最初にさっちゃん会った時が小学生やったっけ。姫路のスケートリンクで。ちなみに、同期って誰がいるの?
村元:今がんばってるって言ったら浅田真央選手が同い年になるんで。あとは、少ないんですよ。水津瑠美ちゃんとか、高山睦美ちゃんとか、石川翔子ちゃん。
――今でもみんな仲良いの?
村元:そうですね、なかなか会う機会はないんですけど、会ったらわいわいしますね。
――真央ちゃんとは最近?
村元:最近、会いました。すごいですよね、今でもがんばってる。真央もがんばってるから私もがんばろうっていう気持ちになります。
――やっぱり欠かせへん人よね、スケートには。今、哉中ちゃんがアイスダンスがんばってるやん。2人で会ったりすんの?
村元:なかなか会えなくて、哉中もアメリカにいるので。全日本はいつも応援行ってるので全日本で会ったりくらいですあね。でもこないだ、全日本で哉中と一緒にいて、たまたま羽生くんが前通ったら「うわあ、同じ顔が2つもある」って言われました(笑)。
スケートを始めたきっかけ
――まずスケートをきっかけ
村元:生まれてすぐタイに行って、タイはすごく暑いのでなかなか冬のスポーツができなくて。で、お母さんがせっかくだから、日本人だから冬のスポーツさせようってしてるうちに、ひとつがスケートで。妹が先に神戸のクラブに入ってたんですよ。で、私は最初お教室スタートだったんですけど、そこで声がかかって試合に出ない?みたいな。で、コスチュームが着たいだけのために出ますって言って。
――何歳の時に始めたん?
村元:8歳の終わりですね。
――女の子やったら結構遅いよね
村元:遅いです。ギリギリだね、みたいなん言われたの覚えてます。
――そうなんや、始めた頃はどうだったの?すぐできたの?
村元:こんな大変なスポーツなんだっていう。朝練行って、学校行って、また夜貸し切りまで。
――でもまわりの人から試合出ればって言われるくらい、ちょっと惹くものがあったのかな?
村元:いや、なかったんじゃないですか。とりあえずみんなに追いついていかないとっていうので必死でしたね。
――みんなに質問してるねんけど、ダブルアクセル跳んだのっていつ?
村元:11歳か12歳くらい。野辺山のノービスAの一年目でシード選ばれたんで。
――すごいやん、いきなりシードなんや
村元:ノービス2年目の時にシードに選んでいただいたんで、その時跳んでたのは覚えてます。
――じゃあ始めて何年くらいや?
村元:2、3年ですかね。
――2、3年でシードになったんや、すごいな。なかなかないよね
村元:そうなんですよ。
――濱田先生にはいつ頃?
村元:14歳くらいの時ですかね。ちょうど岳斗先生が濱田先生の所にいた時と全く同じ時期にいて。
――今タイに行ってコーチしてるやん。それはまたきっかけはなんやったん?
村元:タイのナショナルに日本の連盟が呼ばれるんですよ、ジャッジがいないからって。で、そのタイの会長さんが、コーチ少ないから、誰かタイで教えてくれるコーチいませんか?って聞いたらしくて。で、ちょうどたまたま引退の年だったんで、英語もしゃべれるし声がかかって。迷ったんですよね、正直。ちがう国だし。でもタイで教えようって決めました。
――向こうからしたら英語もしゃべれるし、ちょっと現地人ぽいし
村元:はい(笑)。
――変な意味じゃなくて親しみやすいというか。だって生徒さんに今すごい好かれてるやん。ジャンプ一回跳んだら抱きついてくるくらいの
村元:そうですね、うれしいですね。
タイと日本のちがい
――今まで神戸とか京都でやってたけど、タイに行って感じたちがいは?
村元:結構みんなのんびりしてるんですよ。スケートしてる選手もすごい少なくて、真剣にしてる選手も少なくて。なので、日本って厳しいイメージじゃないですか。ちょっと厳しくすると選手が辞めちゃうんですよね。楽しくしながら厳しくするっていうのが今一番大変かなって思います。
――そうなんや。でも今日選手たちに聞いたらさ、コーチ小月はなぜいつも平常心でいられるんだって聞かれてたけど、なんでそういつもできるの?
村元:怒ってできる時はもちろん怒るんですけど、ここでガーってなっても意味ないしなっていうのでちょっと冷静になってしてます、自分の中では。もちろん怒りたい時はたくさんあるんですけど、怒っても仕方ないって思ってやってます。
――タイに行った時にさ、さっちゃんレッスンしてて一回ふわあって一周回るやん。あれって怒ってる時?
村元:怒ってる時ですね(笑)。ちょっと離れるっていうか。
――離れて戻ってきてまだ笑顔で。さすがですよ
村元:もし日本で教えてるなら、その場で怒っても選手も言うこと聞いてくれると思うんですけど、タイはちょっとちがうんですよね、やっぱり。怒られ慣れてないというか、そういう文化なんで。
――さっちゃんもともとそんな怒る人じゃないから、ちょうど合ってたんかもしれへんね。日本で常識とされる練習の仕方がまずちがうし、選手を目指す人と趣味でしてる方と、ちょっと線引きがあんまりないのね
村元:そうですね。ほんとに、選手を目指してやってる子たちが増えてきたので、それはありがたいなと思ってます。
――タイに来て一番驚いたことはなに?
村元:スケート関係なくていいですか?私のリンクが電車がつながってないんですよ。最終点からりんくがちょっと先で。すごい渋滞なんで、タクシーなんかに乗ってるとほんとすぐそこなのに30分くらいかかるんです。なのでいつもバイクかタクシーに乗ってリンクに行ってます。
――俺初めて行った時に、まず駅降りたらこれくらい水溜まってた
村元:洪水がしょっちゅうあるんで、タイは。
――ビーサンじゃないし長ズボンやし、いろんなものがある水の中を歩いた時は結構寒気した、暑いタイで。あのあとお手洗い行ってすごい洗った
村元:めっちゃ洗ってましたもんね、先生(笑)。タイそういうのが大変なんですよね。
タイでコーチをする上で苦労すること
――タイでコーチする上で一番苦労してることっていうのは?
村元:なんかいっぱいありすぎて(笑)。とりあえず私は一応経験してきてるじゃないですか、スケート選手として。なので選手のために色々言うんですけど、まぁ信じてもらえない時もあります。
――信じてもらえない?
村元:親とかも、そんなんダメ、みたいに言われると、いやこっちは選手のため思ってっていうのはあります。ほんとフィギュアがまだ全然発達してないというか選手が少ないので、そういう面では苦労してます。
――正直タイのスケート選手のレベルっていうとどれくらいになるのかな?
村元:そうですね、日本は今すごいレベルなので、日本と比べると話にならないくらいのレベルですね。ジュニアはトリプル跳ぶ選手が2人しかいないんですよ。なんでそれくらいのレベルです。
――その1人がさっちゃんとこの生徒やんね。プロムか。がんばってるもんね
村元:そうなんです。一応ジュニアグランプリの方にも出て。
――その時にやっぱり、コーチとして立つ時に、選手を送り出す時にどういう言葉をかける?
村元:楽しんで、って絶対言います。あとはポジティブにできるよ、信じなさいって。
――選手は一生懸命がんばる。帰ってきた時にはなんて声かけるん?
村元:まあ大体はよくがんばったねって言って、軽くですけど演技を振り返るというか、あそこ失敗したのはあれだったね、みたいな。
――それ、キスクラで?
村元:そうですね、ちょっとだけ。
――選手帰ってきたらほら、日本の先生は結構ああ~ってかんじやけど海外だと?
村元:絶対ハグですね。選手送り出す時も、すごい緊張しているせいか、みんなハグを求めてるかんじで待ってるんですよ。初めてタイで生徒を送り出す時に、そういう習慣ないじゃないですか、選手とコーチがはぐするっていうのが。でもハグするんだ、と思ってフェンス越しでハグして、がんばれって。
――だってさっちゃんの選手、試合出る前にさっちゃんの現役の時の動画見て出る子いるよね
村元:いますね(笑)。
スケートの指導者として大切にしていること
――さっちゃんがタイとは関係なく、スケートの指導者として一番大切にしているのは?
村元:とりあえず、スケートが好きっていう、スケートが好きだからやってるっていうのはいつも生徒に言い聞かせてます。
――どういう風に?
村元:なんかたまに、ジャンプとかすごい調子悪くて落ち込んでる時とか、「好きだからやってるんだし、跳べるまでがんばろう」みたいなかんじで言っています。
――結構スパルタやね、跳べるまで早くやりなさいみたいな
村元:今日とかじゃなくて(笑)、ちょっとずつ。
――選手が良い成績を取るために、どんなことを求められていると思う?
村元:今すごい細かいんで、フィギュアスケートの採点。全てが良くないとダメなんで、ジャンプはもちろんなんですけど、今ではつなぎ、トランジッションだったりスケーティングスキルだったり、そういうのも全部上手じゃないとダメなので、全部ですよね。スピンもレベル取らないとダメだし、ステップもレベル取らないとダメだし。ほんとにジャンプ以外の所でも細かく練習しないとダメだなあっていうのはあります。
――選手もさ、ジャンプ跳べるとうれしいってのがあって練習楽しいけど、さっちゃんね、スケーティングのフリーレクとかステップの時の足とか
村元:コーチとして、自分の選手にはきれいな滑りをしてほしいんですよ。やっぱりジャンプって難しいじゃないですか。私もジャンプで苦労した方なんで、スケーティングはいつでもきれいにできるわけじゃないですか。そういうのをメインに教えてます。
――きれいなスケーティングも、トランジッションに入れてほしいよね
村元:そうですよね。
――きれいなスケーティングってなかなか難しいもんね。しかもスケーティングの練習じゃなくて、プログラムの中でそれを入れるのも難しいもんね、改めて入れるってなると。バッククロスのこだわりとかあるの?
村元:変な話、私結構めんどくさがり屋っていうか。選手時代はしんどいことが好きではなかったので。どうやったら疲れないようにスピード出るかなっていう変な研究をしてた結果、それが良かったみたいで。
――それどういう風にしてるの?
村元:しんどいのが嫌で、プログラム中とか4分って長いじゃないですか。でもジャンプを跳ぶのにスピードは必要なので、どうやったらうまくいくかなとか考えたりします。
――それ具体的に教えてもらえないかな
村元:エッジってカーブがあるじゃないですか。そのカーブのどこに体重を乗せるかによってスピードが全然ちがうんですよ。滑りやすくなったり、同じ場所にジーって乗る練習だったり、そういうかんじですかね(笑)。
村元:そうですね、疲れないように、でも速く強く、というか。
――じゃあリンクでちょっと教えてもらおう。だってさ、しんどいやん。スピードも出さなあかんし
村元:しんどいんですよ。簡単に言うと、トウに乗ると絶対にスピードは落ちるんで、できるだけトウに乗らないっていうのは一番気を使っています。
――音もしないしね
村元:音もしないし、スピードも出るし、疲れないし(笑)。
――選手もわかりやすくさ、スケーティングの練習ってなったら、はあ、ってやるよね。いやでも大事なんやで、って思いながらね
村元:もうスケーティングなんか同じことばっかりじゃないですか。つま先伸ばせ、とか。同じこと繰り返し言われるのが、選手としてはもうわかったわかった、みたいなかんじになるみたいで。
――さっちゃんが日本来た時とか俺がタイ行った時に、足をもうちょっと伸ばしなさいって言ったら、「あ、いつも言われてることだ」みたいな。やっぱり気になるものは気になるよね。やっぱりスケーティングをすると、振り付けとか踊りも足の先まで指先まできれいになるし、点数上がるだろうし。トランジッションも気をつけることになるだろうしね
村元:そうなんですよ。
――みんなやることがいっぱいあるよね
村元:ね。今では振り付けを自分なりに顔もつけたりしないとダメじゃないですか。そういうのもすごいなっていつも思う。
――さっちゃんのグレイスの振り付けかわいかったよ
村元:ほんとですか?
――俺横でずっとマネしてた。振り付けもね、手の角度もあるしね
村元:さすが先生すごいなって、いつも思って。
――よう言うわ(笑)
村元:ほんとにほんとに。
今後の目標
――最後に、さっちゃんのこれからの目標を聞かせてください
村元:タイでコーチをしていて、もちろん上手な選手を育てるのが目標です。オリンピックも夢ではないので、タイ代表でオリンピック選手が生まれてほしいと思ってます。
――すごいね
村元:なかなか簡単なことじゃないんですが、それに向けてがんばってます。
――すごいな。みんな言ってたやん、さっちゃんはいつまでタイにいてくれるの?って
村元:ね。もう私も何も計画はないので、頼ってくれてる方もいるんで、できるだけ私のできることはしてあげたいなと思ってます。
――タイのスケート界を変えた村元先生だし、これからもがんばってください。体調も気をつけて
村元:ありがとうございます。
J SPORTS 編集部
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