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試合後記
それにしても、良くも悪くもロシア男子の個性の豊かさを、あらためて深く感じた大会でした。
プルシェンコが男子はリーダー不在と大会前に述べた見解は正しいものでしたが、唯一それを覆したのは、ミハイル・コリヤダでした。ショート、フリープログラムともにスピード感溢れる安定した演技で優勝を飾りましたが、「ロシアチャンピオンになったという実感はまだありません。(フリーでは)大きなミスがあったのですが、全体としての演技はとても良かった。成長して行く余地はまだありますが。」といつもにこにこ明るい笑顔の彼らしく、爽やかに謙虚に話しました。
指導するいつも穏やかなセラピストのようなチェボタリョーワコーチは、「ロシアチャンピオンを育てることは私の人生の夢でした。安定しているトウループに加え、サルコウとルッツの4回転が安定してきたら、世界で戦うことが出来るでしょう。」と語りました。コリヤダの優勝は彼女の努力の結晶であり賜物です。
ジュニアグランプリファイナル2位の19歳のアレクサンドル・サマリンの躍進は驚きでした。タチアナ・タラソワの「お気に入り」の選手ではないようですが、彼の努力を厭わない性格は彼女も認めるところ。意欲満々で選手権に臨みましたが、落ち着いて全ての力を出すことに成功、「正直言うと表彰台のことは考えていませんでした。目標にしていたのは代表入りと2017年のユニバーシアードで、ヨーロッパ選手権は狙っていませんでした。フリーでは取りこぼしがあり、間違えて古いバージョンで滑ってしまい、最後にダブルアクセルを付け加えなければならなくなってしまったんです。」と、シニアでも十分戦える自信を得て意気揚々と、しかし冷静に試合内容を振り返りました。
ショートで7位となり、いつものように皆をやきもきさせたマキシム・コフトゥンは、フリーで冒頭2回の4回転を決め挽回して3位。試合後は、「もっとずっと良い演技がしたかった。でも今日は力を出すことが出来て満足しています。今、僕は心と身体の転換期にあり悩んでいます、自分の目標は良くわかっていますが。」と、もう私たちも慣れてきた「マキシム節」で語りました。
冷静に全力を出し切った4位のアンドレイ・ラズキン。タラソワはテレビで、親元を離れサンクトペテルブルクでミーシンチームで練習に励んでいる彼への経済的、環境的な援助を呼びかけました。
やはりジュニアグランプリファイナル優勝の後、シニアのこの大会への調整が難しかった5位のドミトリー・アリエフ。落ち着いて現在の力を見せた6位のアレクサンドル・ペトロフ、ショート3位からフリーで失速、チームメイトのコフトゥンと順位が逆転し肩を落とした7位のセルゲイ・ヴォロノフ。ダイナミックな演技はともかく、スポーツ選手としてのマナーや人格が物議を醸した8位のアルトゥール・ドミトリエフなど、各選手悲喜交々、しかしほぼ全ての上位選手が4回転に挑んだ、血湧き肉躍る選手権となりました。
マキシム・コフトゥンについては常に賛否両論ですが、皆が時々ウンザリしながらも彼に期待する気持ちを、イリヤ・アベルブフの言葉が総括しています。「彼は何でも出来る。私たちは結果を待っているだけなんです。(今回3位に入り、世界選手権、ヨーロッパ選手権代表となったことは)運命が彼にチャンスを与えた、それは偶然ではありません。最後に代表に滑り込んだ人が一番良い結果を出すことは、良くあるでしょう?」
練習オンリーではなく、人生を謳歌して、時々「バカをやる」こともある彼は、人間味溢れる、いろいろな意味で愛されるスケーターなのです。
セルゲイ・ヴォルコフスキー
1967年ロシア生まれ。モスクワ大学日本語学科を卒業。
日本人と結婚し、ソ連崩壊を機に日本に移住。フリーランスの通訳・ジャーナリストとして活動。日本文化への関心が高じ、ロシア語で俳句を紹介するブログも執筆。ソチ五輪を始めとするフィギュアスケートの国際大会で、記者・通訳としても活躍している。
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