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【ロシアフィギュアスケート選手権2017 ペア プレビュー】悲願のナショナルタイトル獲得が期待されるタラソワ&モロゾフ ペア
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部2016/2017シーズンのロシアフィギュアスケート選手権が、12月22日から25日にかけてロシア・南ウラルのチェリャビンスクにて開催される。
圧倒的なカリスマ性を誇ったタチアナ・ボロソジャル/マキシム・トランコフは、ソチ五輪で金メダル獲得後、1シーズン休養後に昨季復活を果たした。しかし私生活でもパートーナーである2人は、2016年9月、ボロソジャルの妊娠を発表。今季のスケーターとしての活動を全て中止した。
当然ながら、過去2回ロシアチャンピオンの座に上り詰め、ソチ五輪ではボロソジャル/トランコフに次ぐ銀メダリストのクセニヤ・ストルボワ/フョードル・クリモフが、自動的にロシア国内のトップペアに押し上げられた。ところが、昨季ヨーロピアンをクリモフの肩の負傷でスキップせざるを得なかった2人は、今季はストルボワの脛骨骨膜の炎症により、出場を予定していた全ての大会を棄権した。
つまりロシアナショナルが、ストルボワ&クリモフにとって今シーズン初めての大会となる。正確に言うと、2016年4月のチーム・チャレンジカップ以来、8ヶ月ぶりの本番だ。果たしてどこまで調整は進んでいるだろうか。情報によるとSPがドビュッシーの月の光で、FSは昨季と同じくマン・アンド・シャドウなのでは、とのこと。
月の光……と言えば、やはり川口悠子/アレクサンドル・スミルノフの2人だろう。2008年から2010年までナショナル3連覇を成し遂げ、国内7回表彰台、欧州選手権優勝2回というベテランは、ペア結成10年目の今シーズン、5年ぶりに月の光をFSに選んだ。
昨季の欧州選手権直前にアキレス腱を断裂してから、完全復活を目指してリハビリに励んできた川口選手。このままシーズンを棒に振り、たとえ五輪出場を逃したとしても、一緒にスケートを続けていこうと誓ったスミルノフ。7ヶ月以上も氷上練習から遠ざかっていた2人が、思い出の曲を再び滑ることに決めたのは、スミルノフによれば「僕らの得意なプログラムだから」。また足の状態がいまだ完全ではないパートナーのために、静かな曲のほうが滑りやすいに違いない、という思いやりの気持ちも込められているそうだ。
もちろん5年前と振付は完全に別もので、エレメンツのタイミングや種類もまったく違う。ただし編曲は完全に同じで、プログラムの最初と最後のポーズもほぼ同じ。スカートが少し短くなったかな……という程度で、川口選手のコスチュームも変わらない。まるで、あの頃のように輝きたい、という2人の思いが込められているかのように。ともかく、1ヶ月前に35歳の誕生日を迎えた川口選手の、華奢な肢体が紡ぎだす月の光は、あの頃と変わらず本当に美しい。
復活にかける2組に対して、初の頂点獲りを期待されるのがエフゲーニヤ・タラソワ/ウラジ―ミル・モロゾフだ。世界ジュニア選手権2位、欧州選手権2年連続3位、グランプリシリーズ表彰台5回…、と台乗り経験こそ豊富なものの、これまでトップに立つ機会にはそれほど多くは恵まれなかった。今季スケートアメリカではSPで大差をつけ首位に立ちながらも、プレッシャーに押しつぶされて、トータル3位(FS5位)に沈むという苦い経験も味わった。
しかし2016年12月のグランプリファイナルで、ほぼクリーンな滑りを実現させ、ついにゴールドを勝ち取った。表情が硬いことがしばし批判されてきたが(そもそもインタビューや会見時も大げさに表情を作ったりしないタイプだ)、SPでは音楽に合わせたくるくる笑顔を変化させる、そんな努力の様子が見て取られた。なにより今季初めてFSに組み込んだ4回転ツイストリフトを、しっかりと成功させられたことが、タラソワ&モロソフ組の自信になった。だからこそ金メダル獲得後は、自然と、ナショナルタイトル獲得へ向けての意気込みも口にしている。
ジュニア部門でグランプリファイナルを制したアナスタシア・ミシナ/ウラジスラフ・ミルゾエフは、タラソワ&モロソフ組とは対照的に、表情たっぷり+コミカルな演技でマルセイユの聴衆を魅了した。実はSPの朝、ミルゾエフは体調不良で発熱・嘔吐に苦しみながら、チームドクターから「こういう状況に慣れておけ、五輪でこんなことがあるかもしれない」と声をかけられ、笑顔で滑りきったという根性の持ち主でもあるらしい。
15歳のミシナと20歳のミルゾエフは、初めてのシニアナショナル挑戦を成功させるために、準備を抜かりなく行ってきた。FSは緊張せず慣れたプログラムで、と、あえて昨シーズンと同じモノを採用したそうだ。70年代フランスのノリノリの曲だから、きっと会場の手拍子が2人を後押ししてくれるだろう。グランプリファイナルでは3T+2T+2Tのコンビネーションジャンプを披露したが、シニア大会では3T+3T+2Tを取り入れるべく、昨季末から練習を重ねている。もちろん演技時間はジュニアの4分(±10秒)から、シニアの4分30秒(±10秒)へと延長される。つまり30秒分の音楽をプラスし、新たなつなぎを組み入れなければならない。リフトもジュニアなら2つのところ、シニアは3つ行う必要がある。ミシナ&ミルゾエフ組にとって幸いなのは、今大会がチェリャビンスで開催されること。まさしく、今年の2月に、ロシアジュニアチャンピオンに輝いた地なのだ。
ジュニアグランプリファイナル3位のアレクサンドラ/ドミトリー・コズロフスキー、同4位=ジュニアながら今季すでにシニアのチャレンジシリーズ(タリン杯)で優勝をさらったアリーナ・ウスティムキナ/ニキータ・ボロディンも、シニアのロシア選手権で腕試し。一方で昨季の世界ジュニア選手権ではミシナ&ミルゾエフ組と共に表彰台に上がったエカテリーナ・ボリソワ/ドミトリー・ソポトは、今季のジュニアグランプリファイナルに続き、残念ながらロシア選手権にも不出場。またグランプリシリーズ・ロシア杯2位のナタリア・サビヤコ/アレクサンドル・エンベルト、さらには同3位のクリスティーナ・アスタホワ/アレクセイ・ロゴノフも参戦と、ロシアにおけるペア競技の層の厚さとレベルの高さがうかがえる。
ペア 出場選手
1:クリスティーナ・アスタホワ / アレクセイ・ロゴノフ
2:アレクサンドラ / ドミトリー・コズロフスキー
3:アリサ・エフィモア / アレクサンドル・コロヴィン
4:ナタリア・サビヤコ / アレクサンドル・エンベルト
5:川口悠子 / アレクサンドル・スミルノフ
6:ルカシェヴィチ / アレキサンダー・ステパノフ
7:アナスタシア・ミシナ / ウラジスラフ・ミルゾエフ
8:アナスタシア・ポルヤノワ / マキシム
9:クセニア・ストルボワ / フョードル・クリモフ
10:エフゲーニヤ・タラソワ / ウラジ―ミル・モロゾフ
11:アリーナ・ウスティムキナ / ニキータ・ボロディン
12:アリーナ・ウスティムキナ / ニキータ・ボロディン
R:エりザベータ・ジューク / イゴール・ブリトフ
J SPORTS 編集部
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