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【ロシアフィギュアスケート選手権2017 男子シングル プレビュー】王座を争うのは3連覇中コフトゥンと大ベテランのヴォロノフ
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部2016/2017シーズンのロシアフィギュアスケート選手権が、12月22日から25日にかけてロシア・南ウラルのチェリャビンスクにて開催される。
120年もの長き歴史を誇るロシアナショナル男子シングルのタイトルは、2014年大会で皇帝エフゲニー・プルシェンコから王座奪い取ったマキシム・コフトゥンが、以来昨季まで3年連続で手にしてきた。しかし、18位に終わった昨季ワールドで「僕には戦える武器(4回転2種)があるのに、なぜか、上手く行かないんだ」と本人が嘆いたように、どうも安定した好演技を見せられずにいる。
今季もグランプリシリーズでは参戦した2試合ともに7位、特にSP終了時には最下位10位と、コミカルなはずのプログラムはひどく悲しいものに変わってしまった。SPのヒッチハイクの物語には、「ユーモアを失わずに、腹を立てずにゴタゴタに向きあえば、最後は全てうまく行く」という選手本人の思いが込められている。まだ21歳と若きコフトゥン。ロシア選手権ではSPで楽しい笑顔を、そしてFSでは空と自由への憧れを美しく表現して欲しい。
そのコフトゥンが「良きスパーリングパートナー」と称するのが、昨春から同門に加わったセルゲイ・ヴォロノフだ。過去優勝2回+表彰台5回の大ベテランにとっては、20代最後のナショナルとなる。今シーズンはネペラメモリアルを制した後、スケートアメリカ4位、中国杯3位と実力は健在。しかも1年前の中国杯でボーヤン・ジンの4回転ルッツに衝撃を受けて以来、2種類目の4回転練習を開始するなど、成長への意欲もまったく衰えていない。
なにより、いまだ五輪出場経験のないヴォロノフにとって、プレ五輪シーズンの今季は非常に重要。ナショナルでの好成績で世界選手権の出場権利をもぎ取り(ロシア男子は2枠)、その世界選手権での好成績で、ロシア男子に自らの手で3枠をもたらしたいはずだ。
ミハイル・コリヤダには、2人の優勝経験者を退けての初戴冠が期待される。コフトゥンと同い年ながら、ケガ等で足踏みを余儀なくされてきた21歳は、昨シーズン、初出場の世界選手権で4位に飛び込んだ。流れるようなスピードのあるスケーティング、美しいビールマンスピン、しっかり幅のあるジャンプが目を引いただけでなく、なにより彼が創りだす独創的な世界に引き込まれたスケートファンは多かった。
「自分の立ち位置がひとつ上がった」と本人も感じた今シーズンは、国内選手権に向けてゆっくりと調整を積んできた。ロシアには徴兵制度があるため、オフ期間中に兵役についたせいでもある。軍服を脱いだ後も、大学の論文執筆に忙しかった(内容はどうやら、スケーターのジャンプ技術練習の特殊性について、らしい)。無事に「エクセレント」の評価でディプロマを取得し、自らの研究成果を元に、現在は実際に氷の上で4回転ルッツも練習しているそうだ。
ただし今季の目標は、現実的に、FSでトーループとサルコーの4回転2種類を成功させること。特に「プレ五輪イヤーの国内選手権は、誰が五輪に行くのか、行かないのか、という選択が本格的に始まる」とコリヤダ本人が分析する通り、失敗は許されないと感じている。
ちなみにコリヤダとは、古スラブ語で「冬のお祭」のこと。現在は「クリスマス前夜のお祭」や、「クリスマス聖歌」などの意味で用いられることが多い。つまりミハイル本人にとって、クリスマス直前に行われるロシア選手権での成功は、とっても大切な意味を持つに違いない(ロシアのクリスマスは1月7日)。
グランプリファイナルにシニアのロシア男子選手は1人も参加できなかったが、ジュニアからは4人もマルセイユの大舞台に送り込んだ。つまりプルシェンコ引退後の空白を埋めるかのように、10代の選手たちが、どんどんと成長してきている。そんな若き逸材を発見するのも、今年のロシア選手権の楽しみのひとつ。
10代の中でも、すでに頭角を現しているのがドミトリー・アリエフだ。涙の初優勝を果たしたジュニアグランプリファイナルでは、FSで4回転トーループを完璧に決めた(GOE+2)。エレメンツ間のつなぎも滑らかで、その繊細な表現力は見る者たちを魅了したものだ。ところで今季はSP(オブビリオン)・FS(仮面の男)共に、幼少時代から憧れてきたロシアの大先輩アレクセイ・ヤグディンのかつての名プログラムの曲を使用している。ただし「この先シニアで競い合っていくのが楽しみだ」と語る17歳は、プログラムをより叙情的なものに練り直し、自らの色をしっかり前面に押し出した。昨季のロシア選手権ではジュニアで1位、シニアの部では6位。この冬はどこまで先輩たちに肩を並べられるか。
アリエフと同い年ながら、昨季シニアクラスに移行したアレクサンドル・ペトロフも、すでに昨ナショナルで銅メダルを獲得している。今季はネーベルホルン杯で優勝し、12月上旬のゴールデンスピンではSP11位ながら、ミーシャ・ジー振付のFSで1位という精神力の強さを発揮した(トータル4位)。ただネーベルホルン杯で4回転トーループが2回転になって以来、ペトロフはどうやら不完全な4回転は封印している様子。ジュニアグランプリファイナル2位のアレクサンドル・サマリンや4位ローマン・サボシンが、FSで4回転2回に挑戦しているのとは対照的だ。
4回転といえばアルトゥール・ドミトリエフジュニア。五輪金メダリストの父を持ち、2010年世界ジュニア選手権で唯一4回転ジャンプを成功させた大型選手は、長年故障に苦しみ、本来の能力を活かし切れなかったという。しかし昨季、チャレンジシリーズなどで3勝を上げ、自慢の4回転も取り戻しつつある。今季は24歳にして生まれて初めてグランプリシリーズに参加し(ロシア杯10位、フランス杯9位)、遅まきながら、自分らしいキャリアを続けたいと願っている。
男子 出場選手
1:ドミトリー・アリエフ
2:エフゲニー・ウラソフ
3:セルゲイ・ヴォロノフ
4:パヴェル
5:アルトゥール・ドミトリエフ
6:アレクセイ・エロホフ
7:イリヤ
8:マキシム・コフトゥン
9:ミハイル・コリヤダ
10:ミュラド・クルバノフ
11:アンドレイ・ラズキン
12:アルチョム・レジェエフ
13:アレクサンドル・ペトロフ
14:ローマン・サボシン
15:アレクサンドル・サマリン
16:ウラジミール・サモイロフ
17:イリヤ・スキルダ
18:アントン・シュレポフ
R:アンドレイ・ズ―バー
J SPORTS 編集部
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