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フィギュア スケート コラム 2015年4月8日

フィギュア不毛の地から、世界の頂点へ

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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喜びにあふれた表彰セレモニーを終え、新世界チャンピオンがついにミックスゾーンに姿を表した。5つのテレビインタビューに丁寧に答えた後、最後に6つ目の、私たちJ SPORTSのインタビューブースに立ち寄ってくれた。いつものようにちょっと小首を傾げて、いつも以上に優しい笑顔で、ハビエル・フェルナンデスは口を開いた。

「ついに、ね!」

1月末のストックホルムにて、3年連続で欧州選手権を制したときの第一声は、「疲れきってボロボロ(笑)」だった。翌日のスペイン系新聞の一面は、いつもとなんらかわらず、レアル・マドリードやバルセロナFCの写真で埋め尽くされていた。それでも、スペイン全土でたった1人のフィギュアスケート専門記者、ペドロ・ラメラスさんは、「ほら見て、『AS』紙の一面のはしっこに、かろうじてハビが載ってるよ!小さいけど、写真付きだ!!」と大喜びしていたものだった……。

本人もかつてはフィギュアスケーターであり、現在は「ハビエルは記者と選手というよりは、大切な友だちであり、同士」と言うラメラスさんは、残念ながら上海には来られなかったけれど、遠いスペインでガッツポーズしているに違いない。金メダルを胸に眠りについたフェルナンデスも、翌朝、母国での

大々的な報道を知って、もう一度大きく声を上げたことだろう。「ついに!」と。なにしろスペイン最大のスポーツ紙『マルカ』の一面は、スペイン人フィギュアスケーターの歴史的快挙一色に染まっていたのだから!

ラメラスさんの言葉を借りると、フェルナンデスは、「インドネシアで生まれたリオネル・メッシ」だという。

「たとえばリオネル・メッシがインドネシア人だったら、FCバルセロナの10番になっていなかったと思う?世界年間最優秀選手賞バロンドールを獲得するような、フットボーラーにはなっていなかった?いいや。どこの国で生まれ育とうが、メッシは、メッシになっていたはずだ。ハビエルも同じさ。スペインという、フィギュアスケート不毛の地で生まれ育ったけれど、こうしてトップスケーターになった。彼には、天から与えられた、才能があるんだ」(ラメラス記者)

大騒ぎの渦中に巻き込まれた金メダリスト本人は、フットボーラーよりもむしろ、「まるでロックスターになったみたい」と言っているけれど。

「僕が生まれ育った町マドリードに、僕がスケートを始めた頃、いったいいくつリンクがあったのか分かりません。でも、とにかく言えることといえば、僕が初めてスケートを始めたリンクは、この記者会見場とほとんど同じくらいの大きさだったということです。すごく小さなリンクで、しかも、今ではレストランになってます(笑)。つまり、スペインには、スケートの伝統はまるでないんです」(フェルナンデス、世界選手権公式記者会見より)

ちなみに2015年時点で、マドリードには常設スケートリンクは5ヶ所ある。スペイン全土では15ヶ所。南部には常設リンクは1つしか存在せず、それもショッピングモール内の小さなお遊び用のもの……。スケートクラブは全部で17あるけれど、フィギュアスケートの専門クラブは4つ。日本のフィギュアスケート競技人口が3500人に対して、スペインは連盟登録スケーターが約400人。

「きっかけは、姉と一緒に、テレビで、フィギュアスケートの大会を見たこと。そして姉の後に続いて、僕もスケートを始めました。それから一度たりとも、スケートから離れたことはありません。友だちは僕がスケートをしているなんて信じられないみたいだったし、なにより、誰もスケートなんて見たことがなかったんですよ。でも、今では、たくさんの人々が、このスポーツのことを知るようになりました。特に昨年末のグランプリファイナルのおかげで、たくさんの人々の、新たな人々の関心を、惹きつけることができたんです!」(フェルナンデス、世界選手権公式記者会見より)

2013年にフェルナンデスがスペイン人として史上初のユーロ王者に上り詰めた後も、スケーターの人数自体はそれほど大きく増加していないそうだ。まだまだインフラが整わないことが最大の理由で、国内のクラブやコーチの不足も影響している。国内の五輪委員会からの予算も、ウインタースポーツには思うように配分されない。露出度が少ないスポーツに、母国の企業がスポンサーをそう簡単に名乗りでるはずもない。欧州・世界選手権出場レベルの選手でさえ、いまだに自費での遠征を余儀なくされる場合も多いのだとか。

「本当にありがたいことに、ハビには日本のファンの皆さんがついてくれている。実は日本のアイスショーの出演費が、ハビの年間活動費の約半分を占める。つまり日本の皆さんのおかげで、ハビはカナダで練習を重ね、世界中の大会へと飛び回れるわけだ。……それでも、間違いなく、『ハビ前』と『ハビ後』はある。スペインフィギュア界は確実に変わった。今では男子だけでなく、ダンスや女子も、少しずつレベルが上がってきた。今シーズンはスペインのバルセロナで初めて、グランプリシリーズファイナルが開催された。来年も再度、スペインで行われる。今冬のユニバーシアード大会は、なんと南部アンダルシアで行われた!そして2018年の世界選手権に、スペインはホスト国として立候補しているんだよ」(ラメラス記者)

ユーロ選手権のミックスゾーンインタビューで、フェルナンデスは誇らしげに、高らかに、こう宣言していた。

「祖国スペインのフィギュアスケートの歴史を、作っている真っ最中なんです。未だかつて誰も踏み込んだことのない分野に、僕は、新しい道を切り開いている」(フェルナンデス、欧州選手権インタビューより)

レアル・マドリードがタイトルを取ると、マドリード市街地のど真ん中にあるシベレス広場は、大祝賀パーティー会場に変化する。開拓者フェルナンデスの優勝祝賀会はきっと、マドリード郊外南の、本人がかつて練習拠点としていたバルデモロスケートリンクでなごやかに行われるのだろう。

J SPORTS編集部

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