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振付師の宮本賢二さん(KENJI)が、日本を代表するトップスケーターを毎月1名、ゲストに迎えてお送りする30分のトーク番組「KENJIの部屋」。今月のゲストは、鈴木明子さんです。
第2回では、皆さんの記憶に新しい、昨年の全日本フィギュアの裏話などを語っていただきました!
2009年全日本フィギュア
――全日本でバンクーバーオリンピックが決まった時、どうだった?
鈴木:あの時は、正直代表選考の中では一番下から追いかけていく立場でした。休んでから復帰して、NHK杯にやっと出られて突っ走っていたので怖いものがなかったし、ショートプログラムはわりとまとめることができました。独特の雰囲気とここで代表が決まるとかかかるものが大きすぎて、もともと全日本選手権は苦手でした。あの時はシーズンの流れでとにかくまっしぐらにやってきて、その結果フリーでつまづいてこけて、そこからはパーフェクトにできたけど、先生たちはこのディダクションのマイナス1点で負けるって思ったみたいなんです。代表になれないんじゃないかって。私、全くそんなこと思わなくて、転んだ時は普段はどうしようって思うんですけど、すごい笑顔で立ち上がっていたんです。
――それ、すごく覚えてる
鈴木:あの会場で笑顔だったの私ぐらいだと思う。良い意味であそこで力がフッと抜けて、テヘッみたいな(笑)。
――それだけのびのび滑ったからこそ、その点数が出たんだろうね
鈴木:最初、力んでたんですよ。ようやく前半が終わった、転ぶ、力み抜ける、こけちゃった、みたいな。その時怖いものがなかったから、もしあそこで不安になっていたら自分でもどうなっていたかわからないと思う。
――あの時は世界選手権も出たことなかったんだよね?
鈴木:出たことないです。初めての大舞台がオリンピックだったっていう。
――決まった時、周りの人が全員号泣してたもん
鈴木:バンクーバーに応援に来てくれてうれしかったです。
――明子ちゃんをみんなで応援しに行ったら、先生がJAPANって描いたマフラーを買ってきてくれたんですよ。それをつけて応援して帰ろうとしたら、どこかのTV局の方に「応援されたんですか?どうでしたか?」って。それで「いやあ、良かったです」って(笑)
鈴木:完全に応援に来た人(笑)。
――ちょっと浮かれちゃった人、みたいな
鈴木:バンクーバーはすごく楽しかった。
――あの場面にいれてものすごくうれしかった。明子ちゃんにいつも言ってるよね、あの場面に一緒にいさせてくれてありがとうって
鈴木:一度として同じことってないじゃないですか、演技とかその瞬間の空気とかも含めて。そういう瞬間を味わえるのって良いですよね。
――では2012年の世界選手権、銅メダルを獲った時はどうでしたか?
鈴木:その前がオリンピックの次のシーズンで、あまりうまくいかなくて、世界選手権も出られなくて悔しかった。続けて3回転・3回転に挑戦しようと決めてやってきた一年で、自分の中でキャリアとしては最高のものだったと思うと同時に、銅メダルは獲れたけどずっとフリーの後半でルッツがパンクしていたんですよ。シーズンで一度も入らなかったんです。でもその悔しさが、もう一年続けようと思ったきっかけでした。実は、あの世界選手権が最後だなと思って行ったんです。
――そうなんだ
鈴木:自分のいつもの練習が終わって明日出発ってなった時に「これで多分選手としての練習は最後だな」って、なんかそう思っちゃったんです。何となく最後だと思って臨んだのがあの世界選手権でした。でも多分フリーの映像を見たら、パンクしたところのあとイラッとした顔をしています(笑)。
――明子ちゃんのイラッとした顔はあんまり見ないよね
鈴木:メダルが決まって、周りの人はおめでとう!ってなってるのにあれが悔しすぎてそれどころじゃなかった。あとになってからメダルが獲れて良かったなって思ったけど、その瞬間は「また跳べなかった」って思って。しかも練習ではできてるんですよ、本番でできない。
――氷の具合もあるし会場の空気もあるし、数ミリ違うだけで変わってしまうものに点数を付けるというのは、すごく厳しい世界だよね
鈴木:したことない失敗が本番で起きるんですよ。このジャンプでこんなこけ方したことない、とか。
――そういうのがあるから、次の試合に対してどう取り組んでいこうかってなるもんね。それだけ考えてやっているんだけど、「あー失敗した」、「ちゃんとジャンプ跳べた」っていう見られ方は嫌だよね
鈴木:私たちはそれのために一生懸命やっているのでね。本当にその一瞬だから、失敗したから練習がどうだったとか、そういう問題ではないと思います。
2013年全日本フィギュア
――28才で全日本初優勝。どうでしたか?
鈴木:人生最大のスランプでした。12月に入ってから体調があまり良くなかったんですけど、ジャンプが跳べなくなってしまって、もう焦りで悪循環。先生も「これはもう怒ってできる問題じゃない」と気付いたらしく、「棄権しろ」って言われたんです。
――あまりにもひどすぎて
鈴木:でもどうにかしたかった。「じゃあ一週間、まだ大丈夫だからやろう。先生のすべてを懸ける」、「でも先生の今まで培ってきたすべてのノウハウをつぎ込んでも一週間でギリギリだ」って言われたんです。「それでもついてこれるか?」って聞かれて最後まで先生についていこうと思って、一週間必死でやり続けてギリギリ間に合ったんです。だから先生はもう奇跡としか思っていないと思います。あの時は優勝しようなんて思っていなくて、とにかく代表に滑り込めれば、オリンピックまでに2ヶ月あるっていうところだったから、まさかショート、フリーでパーフェクトが出せるとは思っていませんでした。
――単純にうれしかった?それよりももっと大きな感情があった?
鈴木:やってきて良かったというのと、本当に最後まで諦めないで良かったなって。棄権しろって言われた一週間前からここまで来れたのは、負けず嫌いな部分と最後の所で踏ん張った根性だと思いました。しかも最後の全日本で13回目だったんですよ。それで初めての優勝で、あんまりチャンピオンというのがなかったので良かったです。もちろん順位だけではないですけど、タイトルが獲れたのは今後に向けても良かったかなと思いました。
今聞きたい質問!
――振付師になりたいって聞いて、どういう振付師になりたいのかな、と
鈴木:いろんな振付師の方にここ4、5年振り付けてもらって、振付師ってスケーターにすごく影響があると思ったんです。自分のスケートに命を吹き込んでもらっていると思います。いろんなアイデアをもらったり、また違った魅力とかを引き出してくれると思う。なので、自分が振付師になった時にスケーターの良いところをいっぱい引き出して何かを感じてもらって、スケートに活きてくるような振付師になりたいな、と。私はそうやって与えてもらっていると思っているので。
――俺も明子ちゃんから学びたいことはこれからもいっぱいあるしね
鈴木:じゃあ「賢二先生にとって“美”とは?」。KENJI先生は普段から、まゆげとかアイメイクとかお洋服のことを言っていますよね。
――例えばスケート靴を履く時に、靴はちゃんと揃えるとか。カバンは荷物だから机の下に置いたり、カバンは閉めておく。電車に乗る時はジャージで乗らずに私服をちゃんと着て、髪の毛を染め忘れて傷んだり色が抜けてしまったりっていうのがない、外に出た時にいつもきちっとしている人が美しいなって思うから、かな。
鈴木:KENJI先生自身がすごくきれいに服とか畳むじゃないですか。
――いつもきちっとしている人はスケートにも出るから。女性には普段から美しくしていてほしいというのがこだわりです
次回予告
鈴木:初めて出た全国大会、緊張しすぎて最初のポーズの足が逆だったんですよ。
――出そうと思っている右足がそこにないからね。そこにあるのは左足だからね
鈴木:で、もうパニック。
◆フィギュアスケーターのオアシス♪ KENJIの部屋【鈴木明子】
» エピソード1の記事はこちら
» エピソード3の記事はこちら
J SPORTS 編集部
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