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イタリア・トリノで開催された世界選手権も幕を下ろし、長く厳しかった五輪シーズンが終わりを告げました。高橋大輔選手、そして浅田真央選手が史上初の日本男女金メダルを達成し、日本フィギュアスケートファンにとっては嬉しい大会となりました。このコラムで長らく追いかけてきたヨーロッパフィギュアスケート勢は全部でメダル4つ。……バンクーバー五輪に続き、アジア・北米勢の後ろを追いかける形となってしまいました。
◆ロシアの現状
五輪男子銀のプルシェンコ、アイスダンス銅のドムニナ&シャバリン組が出場を取りやめたため、確かにメダルの期待は元々薄かったのかもしれません。結果的には五輪金メダリストが欠場したペアで、川口悠子&スミルノフ組が昨大会に続く銅メダル獲得。なんとかスケート古豪国の誇りを保ちました。さらに来季2011年の世界選手権の出場枠もペアは3枠をキープしています。
……ただし女子はなんとか2枠をキープしましたが、アイスダンスは3枠→2枠、男子は2枠→1枠と減ってしまいました。男子が1枠というのは、なんとも、緊急事態ではありませんか?競技最終日の土曜日、ISU会長は記者会見でこんな風に述べています。
「4年後のロシア・ソチ五輪に向けて、ロシアは準備に取り掛かっている。ソチは美しい町だし、インフラの設備計画にも問題はないと確信している。ただしインフラの強化だけではダメ。ロシアは自国アスリートの強化も行わなければならない。開催国の選手が活躍することが、五輪成功の絶対的な鍵となる。もちろん、フィギュアスケートに関してもだ」
4年後のソチ五輪で十分な出場枠を手に入れるためには、つまり3年後の世界選までには何とか建て直しを図らなければなりません。早急な強化が必要です。
◆フランスの現状
「ここには『ボクはまだやれるんだ』ということを見せるためにきた。そして来シーズンにつながるステップにするために」
ブライアン・ジュベールが復活の銅メダル。五輪での失敗後、批判に耳をふさぎ、人目を避けて生きてきたそうですが、これでようやく再び顔を高く上げることができることでしょう。また常に4回転談義でフィギュア界をかき回してきた張本人ですが、高橋選手が4回転入りで金メダルを獲得したことで、ジュベール的には満足な様子。
「来シーズンからはもっと4回転を取り入れる選手も増えてくるだろう。とにかく、たとえ4回転を飛ぶ必要がないとか周りが思っても、ボクは入れていく。これがボクのやり方なのさ。ボクはジャンプが好きで、ジャンプを飛ぶためにこの競技をやっているようなものなんだから」
と吹っ切れたような発言も飛び出しました。ちなみに今後も生まれ故郷ポワティエに住み続けるそうですが、練習のために定期的に外国へ行ったり、外国人コーチと提携したりすると断言しています。そして今後最大の目標は2年後に開催されるフランス・ニースでの世界選手権。地元ファンの目の前で、金色のメダルを手に入れようと心に決めているとのこと。もちろん、初めての世界タイトルを獲得した思い出の国、日本開催の2011年世界選手権でも快挙の再現を狙っているに違いありませんよ。
ちなみに、男子は15位アモディオと共に2枠をキープ。常に強豪の一角を占めるアイスダンスも2枠を守りきりました。
◆イタリアの現状
五輪直後の世界選手権ですから、ジュベールのように五輪での失敗からのリハビリ(リベンジではなく)にやってきた選手もいました。カロリーナ・コストナーもその1人。五輪本番ではジャンプでの転倒が相次いで、16位。悔し涙を流しました。
コストナーにとってはバンクーバー五輪の悪夢を拭い去る必要があった上に、地元イタリア開催によるものすごいプレッシャーと戦う必要もありました。地元の新聞は連日コストナーのことしか記事にしないし(日本人優勝の記事など本当に数行のみ)、会場のファンたちはヒステリックにも似た歓声をコストナーに降り注ぐし。しかもリンクは4年前の五輪会場ですから、「単にパラヴェーラのリンクで滑るんだと考えただけでも、脚が震えてしまった」と告白します。
しかしあらゆる重圧をはねのけて、フリーの演技を終えたコストナーは熱い涙を流しました。順位こそ6位に終わり、期待されたメダルには届きませんでしたが……。「今までのキャリアで、これほどまでに観客がスタンディングオベーションをしてくれたときはなかった!」と感激に満たされてシーズンを終えることができました。「残念だけど、採点は常に過去の出来に左右される。つまり今日のような演技を続けていけば、点数もおのずと上がっていくはずよ」。来季への土台もできたと実感しているようです。
それでもイタリアはアイスダンスのファイエラ&スカリ組が銅メダルを獲得し、地元開催の誇りを保ちました。エキシビションではサムエル・コンテスティ、クリスチーニ、ベルトン&オタレック組もリンクに華を添えて、地元ファンの目を楽しませていました。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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