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欧州勢にとっては苦い五輪となりました。フィギュアスケート4種目でメダルはわずか3つ。男子シングルスのエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が銀メダル、ペアのアリオナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコーヴィ(ドイツ)とアイスダンスのオクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリン(ロシア)がそれぞれ銅メダル。トリノでは金3・銀1・銅2と欧州健在だったのですが、4年間で「四大陸」勢力に大きく水をあけられてしまいました。特にフィギュアスケート大国ロシアにとっては……、4年後に自国での冬季五輪開催が迫っているロシアにとっては、今回の失敗から早く立ち直らなければなりません。
◆ロシア
エフゲニー・プルシェンコの銀と、オクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリンの銅。ロシア勢(旧ソ連も含む)が冬季五輪で金メダルを獲得できなかったのは、1960年スコーバレー大会以来の大失敗となります。特に男子は5大会連続、ペアは12大会連続で金メダルを取り続けてきた「お家芸」でした。この失敗をロシアはどう受け止めているのでしょうか。プルシェンコの周囲では相変わらず「4回転」に関する審判システムに疑問を投げかける声が渦巻いています。ロシアメディアは「北米有利」の採点を大いに批判していますし、ロシアのファンたちはプルシェンコに独自の金メダルを授与するつもりだそうです。
ただし、真剣にロシアフィギュアスケート界の未来について提言する声も上がってきています。そんな冷静な人々の考えによると、今回の失敗には複数の理由が上げられるとのこと。
理由の筆頭に上げられたのが「世代交代」です。ただし単なる自然な世代交代ではなく、「ソ連世代の終わり」の時代に来ているとのこと。正確にはソ連は1991年に解体しましたから(当時プルシェンコとシャバリン9歳、ドムニナ7歳)、純粋なソ連製選手というのはもはや存在しません。ただし解体後もソ連時代の指導体制がしばらくは続いたようですから、今五輪でメダルを獲得した選手はソ連の名残を引きずった世代であることは間違いなさそうです。また指導体制だけでなく、ソ連時代は(賛否はありますが)国が若手育成に資金を惜しみなく費やし、若い選手はスポンサー探しや遠征費稼ぎに奔走する必要はありませんでした。
ソ連崩壊は「ロシアの至宝」たちの海外流出のスピードも速めました。至宝とはつまり、ロシアが誇る素晴らしきコーチ&コリオグラファー陣……。おかげで日本チームの総監督にタチアナ・タラソワが就任したり、ニコライ・モロゾフが数々の日本選手をトップに押し上げたりできるわけなんですが、ロシアにとっては当然面白い状況ではないはず。その一方で、ロシア人以外の素晴らしいコーチがロシア選手を指導するのも難しいのだそうです。選手の地元ロシアで指導しようと思っても連盟が協力してくれないためにスムーズに物事がはこばず、結局、ロシア選手が外国に行って練習するほうが簡単なんだとか。どうやら連盟には2つの努力――自国コーチをロシアに戻らせる努力、そして他国コーチも柔軟に受け入れる努力――が必要なようですね。
◆フランス
金候補だったブライアン・ジュベールの失敗よりも、論議を呼んでいるのはイザベル・ドロベル&オリヴィエ・シェーンフェルダーが表彰台に上れなかった件。試合直後は「妊娠出産からの復活を果たし五輪で美しいフィナーレ」と取り上げられましたが、時がたつにつれて次々と影の部分が浮かび上がってきています。特に……シェーンフェルダーの悲痛な訴えが聞えてきます。2008年世界選手権で優勝したドロベル&シェーンフェルダー組の2人は、大会後の5月にバンクーバー五輪まで現役続行を決意しました。ところが2008年12月にドロベルが肩を負傷、2009年1月に手術、そして2009年4月に妊娠発表……。私生活では自分も一児の父であるシェーンフェルダーは、全てを受け入れ、待ち続けたのです。金メダルを獲得するために。
試合直後のシェーンフェルダーは「我々はメダルは取れなかったが、それでも賭けには成功した。自分たちが成し遂げてきたことを誇りに思う」と語っていましたが、その後の発言内容は微妙に違います。
「ボクにとっては失敗だった。ボクが挑戦を続けたのは、美しき冒険のためでも、ボクには全く関係のないお話のためでもない。文句を言ったところで、所詮ドロベルがヒロインなんだ。彼女にとっては全てが素晴らしいこと。でも不公平だね。ボクはなんなんだ、ボクは?何者でもないさ」。
パートナーを信じて待ち続けてきたのに、パートナーはそれほど失望した様子もなく、メディアはパートナーばかりを褒め称える。そんな感覚なのでしょうか。ドロベル&シェーンフェルダー組は五輪を最後に競技会からの引退を決めています。今後シェーンフェルダーはコーチ免状を取る予定。また大学でジャーナリズムを専攻しており、ディプロマ取得に向けて勉強を続けていくとのこと。プロスケーターとしてショーにも積極的に参加していくつもりです。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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